狭い部室の中に、淫らな音が満ちている。
「あっ、あ、は……いやっ。いやぁ、あ――んぁ、あ、あーっ!」
 掠れ、次第に甲高くなる喘ぎ声。意味のない音の羅列。それに覆い被さるように響く、乱れた息づかい。まるで原始のけもののような。
 ぐちゅ、ぢゅぷっ、ぐぷっ、と、リズミカルに続く粘着質の水音。次第に早く、大きくなってくる。
「あっ、あ、あああっ! も、もぉ……そこ、だめっ! やあぁ……!」
「いやらしいんだな、桜乃。今、自分がどんな格好してるか、わかってる!?」
 リョーマ君が冷たく嗤う。
「床に這って、さかりのついたメス猫みたいに、お尻だけ突き出してさ。ほら、凄いよ、桜乃のここ。こんなにぐちゅぐちゅに濡れて、蜜があふれてる。床まで滴ってるよ」
「いっ……いやああ――。いやぁ、言っちゃ、やあぁ……」
「だって本当だろ。俺のこと、根元までくわえ込んで、離してくれないし」
 そう言ってリョーマ君は、さらに深く強く、わたしを突き上げる。
 熱い塊が、私の芯に突き刺さる。身体のもっとも奥深いところから、突き上げられ、ねじ伏せられて、私はエクスタシーに昇りつめた。
「くぅう……んーっ!!」
 目の前に極彩色の火花が散る。全身ががくがく痙攣し、弓なりにのけ反る。
「イッたの? また? またイッちゃったんだ」
 絶頂の形のままに硬直したわたしを、リョーマ君は背中から抱きしめる。そしてさらに容赦なく突き上げ、揺さぶる。
「いっ、いやぁ、いやああぁ……っ! やめ、て、もぉ――もう……だめええ……!」
「そうだよな。後ろから乱暴に突っ込まれるの、桜乃、大好きだったもんな。それともこっち? 縛られて、目隠しされてるのが、そんなに悦いの?」
「ち……ちが……っ! ちが、ぅ、わたし……っ」
「じゃあ、どうされるのが悦いの!? こう? それともここを苛めて欲しい!?」
 灼熱の欲望がわたしの芯を打ちのめす。それは何度も引きずり出され、また押し込まれる。そのたびにわたしの肉は熱い楔にからみつき、引きずられ、巻き上げられる。狭く熱い秘花は無惨なほど押し広げられ、掻き回される。
 強い指が秘密の中へ差し入れられる。ひそやかな花弁の奥に隠れた小さな真珠を探り出し、容赦なく摘み取る。指先で押し潰し、転がし、爪をたてる。
「ひぁっ! あ、い、痛ぁ……っ!」
 けれどわたしの身体は、それを悦んでいる。彼に手荒く扱われ、踏みにじられ、まるで玩具みたいに弄ばれて。そんな惨い扱いをされて、涙を流すほど悦んでいる。
「うそつき。こんなに悦んでるくせに。ほら、腰が動いてる。凄く熱いよ、桜乃のここ。狭くて、俺のに絡みついて……ああ、凄く悦い――!」
 欲望のままに、リョーマ君がわたしの秘密を蹂躙する。
「ああぁっ! ……い……いぃっ! い、ぁ、だ……だめぇっ。 も、……もぉ、わたし、リョーマく……うぅっ!」
 津波のような快感がわたしを襲う。どこか遠い、今まで見たこともないところへ、わたしをさらっていこうとする。
「悦い!? なあ、悦いんだろ!? 桜乃はこうして、酷いことされるのが好きなんだろ!?」
「ちが……っ――あぁ……っ」
「まだうそつくのかよっ! こんなにやらしい身体して、こんなに――こんなに感じてるくせに!!」
 違う。
 あなただから。
 あなたが、わたしを抱いているから。
 強い腕がわたしを抱き起こす。無理やりに顔を上げさせられ、噛みつくようなキスが押しつけられる。わたしの中に入り込む、熱く熔けた舌先。私に絡みつき、吸い上げ、溶かしていく。
「ふ、うぅっ! ん、く、んんう――っ!!」
 胸の二つのふくらみを、強い両手が鷲掴みにする。硬い指先が食い込む。今にも血が噴き出しそうなくらい、強く。強く。
 わたし、あなたを受け入れている。唇も、乳房も、秘花も、二人まじわれるところ、すべてで。
 あなたに求められている。あなたがわたしを必要としている。そう思うだけで、わたしは何度も何度も悦びの頂点に押し上げられる。死にそうなくらいの幸福感とともに。
 リョーマ君はさらに私を責める。壊れそうなくらい激しくわたしを突き上げ、抱きしめる。身体ごと全部、わたしを揺さぶり、押さえつけ、貫く。
 真っ赤に灼けた鉄の槍が、わたしの全身を貫く。リョーマ君を受け入れたそこから、心臓、喉元まで、串刺しにされる。
 熔けていく。なにもかも。思考も感覚もわたしのすべてが失われていく。
 わたしは全身をのけ反らせた。包帯にふさがれたままの眼を、見開く。
 がくがくと全身が痙攣する。
 もう、声も出ない。
「く、う……さ、桜乃ぉっ――!!」
 リョーマ君の熱が、わたしの中で爆発する。真っ白な奔流となって、わたしを一気に押し流す。
 突き上げられる。昇りつめ、叩きつけられ、頂点ではじけ散る。
 そしてわたしは、最後の意識を手放した。






 やがて眼を覚ました時、わたしを縛り付けていたリボンタイも包帯も、すでに外されていた。
 わたしはのろのろと身体を起こした。
「あ……痛ぅ――」
 身体中がオイルの切れた機械みたいにぎしぎしと軋む。手荒く苛まれ、愛された部分は、まだ熱をもって少しひりひりと痛んだ。
「目が覚めた?」
 低い声がした。
 リョーマ君は横たわったわたしのすぐそばに座っていた。まるで小さな子供のように膝を抱えて。
 高い窓から差し込む光は、少しオレンジ色に染まり始めている。校庭からももう体育の授業の声は聞こえない。
「もうすぐ放課後だよ」
「え……」
「大丈夫。今日からテスト前の部活禁止期間だし、ここへは誰も来ないよ」
 リョーマ君の声も少し掠れている。
 わたしは硬い床の上に起きあがった。そしてようやく、自分の下に敷かれていたのが、青とオフホワイトのジャージだったことに気がついた。
 青学テニス部レギュラージャージ。そっと胸元を裏返してみると、「R・Echizen」の刺繍。
「リョーマ君、これ……」
「いいんだ」
 リョーマ君は膝を抱えて座ったまま、身動きもしない。わたしと視線を合わせようとしない。
 わたしはジャージを胸に抱きしめた。少ししわになってしまったけれど、良かった、ほとんど汚れていない。
 汗の残る肌は、暑い午後の空気の中でも少しずつ熱を奪われて冷えていく。わたしは簡単にたたまれてベンチの上に置いてある自分の制服には手を伸ばさず、リョーマ君のジャージを肩に羽織った。
 きれいに洗濯されてはいるけれど、どこか、かすかにリョーマ君の匂い、ぬくもりが残っているような気がする。
 そうしてわたしは、リョーマ君の肩にそっと頬を寄せた。
 リョーマ君は何も言わない。
 黙ったままの彼に、そのままもたれかかる。
 肩に乗せたわたしの手に、リョーマ君は自分の手を重ねた。
 わずかに盗み見るその表情は、無表情を装ってはいるけれど、どこかつらそうだった。身体のどこかに、誰にも癒せない冷たくつらい痛みを抱えている人のように。
 ……こんなことを言ったら、きっとまたあなたは怒るだろうけれど。誰にも見せない部分を、どうしてお前だけがそうやって見ようとするんだ、と。
 越前リョーマ。孤独な天才。誇り高く、けしてその弱さを他人に見せようとはしないけれど。
 でも、わたしは知っている。
 あなたの中に、柔らかく傷つきやすい、孤独な少年がまだ眠っていることを。誰にもその痛みや悲しさを打ち明けることができず、たった独り、涙を堪えていることを。
 ねえ、リョーマ君。
 思ってもいいですか?
 こんなふうに膝を抱えて、すすり泣く声を噛み殺しているその男の子を、抱いてあげられるのは、わたしだけだって。
 わたしは、リョーマ君の手の甲に、そっと口づける。ちゅ、と小さな音をたてて、彼の肌を吸ってみる。少し塩辛くて、まるで涙みたいな味がした。
 そのままわたし達は、二人寄り添い、黙ったまま、いつまでも動かなかった。



                                                    ――Fin――









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 ひとまず終わりました。思ったより時間かかっちゃったなあ。
 こういうセクシャルなお話をこの二人で描くことに、年令の点などで抵抗感をお持ちになる方もいらっしゃるでしょうが、ちょっと待ってください。本文をもう一度良く読んでください。リョーマは確かに「青春学園三年」と記載してありますが、「中等部三年」とも「高等部三年」とも明記してないですよ。その証拠に、高等部にあがってもリョーマの先輩になるであろう手塚や不二、桃城、海堂については言及していますが、原作中で「高校にあがったらテニスを辞める」と言っている河村については、一言もふれていません。ま、屁理屈と言われればそれまでですけど(^^;)
 また、このページの背景画像は「Heaven's Garden」様よりお借りしました。たとえ話のイメージが少々ダークでも、桜乃ちゃんにはやっぱり桜色のお花モティーフってことで。詳しくはLINKページからどうぞ。

Noble Red・3

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