「わかるかい、ミサ。今、きみの中に挿入ってるのがどっちなのか、当ててごらん?」
 優しく、どこまでも意地悪く、月が耳元でささやく。
 私の中で激しく脈打ち、律動する熱い欲望。私を押しひろげ、打ちのめし、内側から焼き尽くす。
「えっ……、あ、あ……ライトっ! ライトのが、挿入って、る……っ!」
「外れ。私ですよ」
 ぐいッ!と乱暴に、容赦なく突き上げられて。
「ひああああッ!!」
 三日月みたいに全身をのけ反らせ、私は悲鳴をあげた。
「ほら、よく味わって。私のと、月くんのと、どこがどう違いますか? 教えてください」
「あっ! あ、そ、そん……な、あ……あーっ!」
 答えられるはずもない。
 両脚を大きく広げられ、小さな泉の最奥まで猛々しい欲望でつらぬかれて、私はただ泣きじゃくるしかなかった。
 両腕は背中でひとつに括られ、目隠しまでされて、まるで人形のようにもてあそばれる。
 高く持ち上げられた爪先が、犯される律動に合わせてがくがく揺れている。
 今、自分を抱いているのが誰なのかさえ、わからない。
「も……っ、も、お、だめっ! だめ、い、く……」
 絶頂を告げる寸前、私の中をいっぱいに満たしていた熱が、勢い良く引き抜かれる。
「ひいいっ!」
 そしてまた、つらぬかれる。
「今度は、どちらでしょうか?」
「あっ、あ……り、竜崎さんっ!!」
「つれないな、ミサ。僕だよ。――ほらあっ!」
 うつ伏せにされ、背後からがくがくと激しく突き上げられ、揺さぶられて。
「ミサにとっては、僕も竜崎も同じみたいだな。こうして犯してくれれば、誰だってかまわないんだろう!?」
「ち、ちが……っ! あ、あ――らい、……ライトっ! ライト、あああああッ!!」
「違わないだろう。相手が僕だろうが竜崎だろうが、挿入てもらえれば同じように腰を振って、悦がってイッてみせるんだから」
 月は酷く冷たい声で言った。
 だって、だってわからないんだもの。
 今、私の中にいるのが誰なのか、もうわからない。何度犯されたのか、何度いかされたのか。
 目隠しは外してもらえたけれど、背中で縛られた腕はそのまま。自分の意思とは関係なく、二人に弄ばれる。それがつらくて、哀しくて、とても気持ちよくて。
「少しお仕置きが必要なようですね、ミサさんには」
 ぬるり、と冷たいものが私の上に垂らされた。
「えっ!? な、なにっ!?」
「心配いりません。ただのマッサージオイルですよ」
「マッサージオイル? そんなもの、いつ用意したんだ、竜崎」
「このホテルのアメニティグッズです。バスルームに常備してありますよ。気がつかなかったんですか、月くん」
 濃く甘い芳香を放つオイルが、私の肌を流れ落ちていく。ヒップの丸みから、さらにその奥の隠れた部分へ。
「あっ! あ、いや、ど、どこ触って……」
 私の一番奥まった部分、小さな蕾の中に長い指が差し入れられた。
「ひいッ!」
 今まで味わったこともない違和感に、私は悲鳴をあげた。自分ですらほとんど触れない部分に、ぬるぬるとオイルが塗り込められていく。
「今までここで遊んだことはないんですか? だったら尚更、よーく揉みほぐしてあげないとね」
「いや、いやあ、こんな――やめて、竜崎さんっ!」
 身を捩って逃げようとしても、竜崎さんと、そして月の手に強く抑えつけられて、身動きすらできない。
「本当は専用の潤滑ジェルが一番良いんですが、これでも充分ほぐせますからね」
 ぐちゅぐちゅと淫猥な音を響かせて、竜崎さんの指が私の中にもぐりこむ。
「ひ、い……っ。いやあぁ……」
 いつか私のそこは、彼の指を深々と受け入れていた。
「大丈夫。ミサさんを傷つけたりはしませんよ」
 そして押し当てられた、熱の塊。
 ぎち、ぎち、と私を押しひろげ、入り込んでくる。
「か、は……ッ!」
「息を吐いて。力を抜いて――そう、いい子ですね」
 心臓も止まりそうな衝撃。頭の芯まで真っ赤に焼けた鉄串が突き刺されたみたい。どんなに大きく口を開いても、喉が詰まって息ができない。
「ほら……。もう、根元まで挿入ってしまいましたよ……」
 竜崎さんがゆっくりと動いた。
「くああああぁッ!!」
 高い声がほとばしる。まるで動物の咆吼みたい。こんな声で自分が啼いてるなんて、信じられない。
「いやッ! いや、やああああッ!! だ、だめ、もお――あああーっ!!」
 まるで身体が裏返されるみたいな感覚。内側から私のすべてが引きずり出され、また押し戻される。
 その――快楽。
「こ、こんなの、だめ、だめええッ!」
「なぜ駄目なんですか? ミサさんのここは、こんなに歓んでくれていますよ?」
 竜崎さんは勢いをつけ、私の身体を抱き起こした。
「いやあぁーッ!!」
 ぐじゅっ、と淫らな音がする。塗り込められたオイルが泡立ち、竜崎さんに犯されている部分からまるで愛液みたいにしたたり落ちた。
 こんなの、いや。こんな異様な形で犯されてるところを、月に見られるなんて。
「ま、前っ! 前に挿れて、お願い――!!」
「ああ。ちゃんと前にも挿れてあげるよ」
「え……」
 月が私の秘花に触れた。犯されてもいないのに、熱い蜜をしたたらせてる花びらに。
 そこに、月の欲望が押し当てられる。
「ち、ちょっと待って、月――そ、そんな、無理っ! だめ、二人いっぺんなんて――!!」
 けれど、月は私の言うことなんか何一つ聞いてくれない。
 熱く猛るものが、無慈悲に突き立てられる。
「ひああぁッ!!」
 その瞬間、目の前が真っ白になった。
 すさまじい絶頂感が、全身を駆け抜ける。
 身体の中が、二人の欲望で埋め尽くされる。一縷の隙間もなく、支配される。私の意思なんて、もうどこにもない。あるのはただ、快楽に溺れた身体。二人の欲望に奉仕するだけの、快楽のかたまり。
 じゃらっ、じゃらんっ、と月と竜崎さんとをつなぐ鎖が、やかましく鳴る。
 私は自分から腰を浮かせ、揺らし、二人の律動を受け入れた。
「いやああぁっ! こすれるっ! こすれる、おっきぃのが――ああ、なかでぶつかるううっ!」
 二人の欲望が、私の中で擦れ合う。薄い粘膜を挟んでぶつかり合うたびに、私の中に火花が散る。爪先にまでびりびり電流が走り、全身が痙攣した。
「う――くッ! し、締まる……っ!」
「こちらも、凄いですよ。月くんのを挿れられたとたん、ぎゅっと締まって……! ほら、もうつらくはないでしょう、ミサさん。きみのここは、嬉しそうに私のものにまとわりついて、離してくれませんよ!」
「ち、違、あ……ああ、もう――だめ、だめえええっ!」
 稲妻みたいなエクスタシーが何度も何度も突き抜けていく。
 こんなの、初めて。
 月が下になった。私を腰の上に乗せ、さらにその上から竜崎さんが覆いかぶさる。
 姿勢が安定したことで、二人の動きがより激しく、容赦ないものになる。
「だ、だめええっ! こわれる、こわれちゃうううっ! ミサのそこ、こわれちゃうよおおっ!」
 どんなに泣いても喚いても、月も竜崎さんも、まったく聞いてくれない。それどころか、私の悲鳴が彼らの残酷な仕打ちに拍車をかける。
「どっちが悦い? ねえミサ、教えてくれよ。僕のと、竜崎のと、どっちが気持ちいいんだい?」
「そっ……そ、そんな――っ!」
「わかるだろ、ほら! こうして二人一緒にくわえ込んでるんだから!」
「あッ、あ――ひああああッ!!」
 さらに惨く、奥深くまで二人の欲望がねじ込まれ、引き抜かれ、また根元まで突き入れられる。そのたびに私の全身ががくがくと大きく跳ね上がった。
「いくんですか、ミサさん。また?」
「いっ……い、あ――悦いぃっ! いいの、お、おねがいっ! いかせて、いかせてええっ!」
「本当に可愛いですね、ミサさんは。いいですよ、好きなだけいかせてあげます。ほら、ほら!」
 激しい律動に突き上げられる浮遊感と、奈落に突き落とされる衝撃とが、交互に襲ってくる。その間隙がどんどん狭まってくる。
 もう、自分の手足がどうなっているかも、自分がなにを泣き叫んでいるかもわからない。
「あー……っ! ああっ、もお、だめ――死んじゃうっ! ミサ、死んじゃううっ……」
 悲鳴すらかすれていく。
 裂ける。そこ、裂けちゃう。私の身体、こわれちゃう。
「ああ、ミサ、ミサ――!」
 月が激しく私を突き上げる。
 その欲望がひときわ大きく膨れあがり、そして爆発する。
「くううう――ッ!」
 月の絶頂に誘発されたように、竜崎さんもぶるっと大きく身体をふるわせた。
 二人の白濁する欲望が私の中にぶちまけられる。
「あッ! あ、いや、熱い、あつ、あ――ああああーッ!!」
 焼き尽くされる。何もかも。
 焼けて、燃え落ちて、何もかもどろどろに溶けてなくなっていく。
 二人の激しい欲望に突き上げられて、私はとうとう失神した。





 どのくらい意識を失っていたんだろう。
 ようやく正気を取り戻した時、私は月の腕に抱かれてベッドに横たわっていた。
 月は眠ってる。その腕はシーツの上に投げ出され、そこにつながれた手錠の鎖はバスルームのほうへ伸びていた。
 かすかに水音が聞こえ、そして止まる。
「おや、もう目が醒めたんですか」
 わしゃわしゃとタオルで髪を拭きながら、竜崎さんがバスルームを出てきた。いつもどおり、よれよれのトレーナーに黒い綿パン。
「お腹空いたでしょう。ルームサーヴィスでなにか頼みましょうか」
「ん……いい。今は、いらない」
 まだ下半身ががくがくして、まともに力が入らない。食欲なんて、全然ない。
「あ、でも――なにか少し飲みたい、かな。喉、乾いた」
「わかりました」
 竜崎さんはフロントに電話して、私のために軽食と紅茶をオーダーしてくれた。ついでに自分のためのスイーツも。
 それから、まだ眠っている月の脚を蹴飛ばす。
「起きてください、月くん。ヨツバの連中が動き始めました」
「ん……」
 シーツにくるまっていた月が、もぞもぞと身動きした。
 やがて起き上がった月は、まだどこか焦点の合わない目をしてる。ぼさぼさに寝乱れた髪が月らしくなくて、でも何だかちょっと可愛い。
「なんだって、竜崎……?」
「いつまで寝惚けてるんですか。松田さんから連絡がありました。例のヨツバの連中が、集合を始めているようです。詳しい話は、向こうの司令室でしましょう」
「ああ、わかった」
 月の表情が引き締まる。頭の中も瞬時に切り替わったみたい。ベッドから飛び降り、脱ぎ散らかした衣服を拾い集めて身に着ける。
「行っちゃうの、月」
「ああ。ミサはしばらく、こっちの部屋にいてくれ。向こうはばたばたしてるだろうから」
 こんな時、月はいつも私を遠ざけようとする。
 私、月の邪魔なんかしないのに。真剣な月の横顔を見てるのは、好き。月を見つめていられるなら、私、何時間だって黙って、人形みたいにじっと動かずにいられるのに。それすら、月はうるさいと思うのかしら。
「あとでまた、海砂さんにお願いすることが出てくるかもしれません。それまではここでゆっくり休んでいてください」
 一足先に竜崎さんが部屋を出ていこうとした。月もそのあとを追いかける。
「ねえ」
 どちらとも決めずに、私は声をかけた。
 二人が同時に振り返る。
「今度はいつ、デートしてくれるの?」
「ミサ」
「その時は、竜崎さん。もうマッサージオイルは使わないでね。だってあれ、バスルーム以外で使うと匂いがきつすぎるんだもの」
 一瞬、月と竜崎さんは顔を見合わせた。私の言ってることが理解できない、て表情で。
 でもすぐに、二人揃ってにやっと笑う。
「わかりました。今度は、ちゃんと専用の潤滑ジェルを用意しておきましょう」
「じゃあ僕は、可愛いオモチャをプレゼントしてあげるよ。ミサに似合いそうなアクセサリーもね」
「すぐですよ。さっきの情報の裏が取れれば、ええ、今夜にでも」
 ドアを開け、二人が出ていく。私は小さく手を振って、二人を見送った。
 最高級のスイートルームのドアは、音もなく閉まる。
 月と竜崎さんがいなくなると、ベッドルームはとたんに広く感じられるようになった。がらんとして、まるで空っぽのドームのよう。気温まで一、二度下がったみたい。
「ふ……ん、だ」
 ため息みたいにつぶやいて、私はぱふっとベッドに倒れ込んだ。
 まだ頭がくらくらする。惨く責められた下肢はずきずき熱を持って疼くし、関節も痛いし、まるで風邪ひいた時みたい。ルームサーヴィスが届くまで、もうちょっと眠ろう。
 眠っていれば、そのあいだは何も考えずにいられるし。
 そうよ――もう何も考えたくない。
 快楽に溺れていれば、何も考えずにすむ。言葉にできない不安に、囚われずにいられる。
 そうよ。もう、関係ない。月が何を思って私を抱いてるかなんて。
 そんなこと、あの快楽の前には、何の関係もないわ。そうでしょ。
 竜崎さんだって、きっとそう。一時の快楽を分かち合うことで、彼が私や月をより深く理解しようとしているのなら、それでかまわない。月もそう思っているはず。
 だから、考えない。考えちゃいけないの。
 たとえば”LOVE”と”LIKE”の違いとか。たとえば、月が私を抱く理由とか。
 ……考えて、答を見つけたら。
 私、きっと月のそばにいられなくなるから。
 哀しくて、つらくて、心が壊れてしまうから。
 いいの。私は月が好き。月を愛してる。
 だから月の言葉には何でも従う。月の望むことなら、何だって叶えてあげるの。
 それで、充分。
 私はゆっくりと目を閉じる。
 そして夢も見ない眠りに落ちていった。






                                      
H系書くなら、やっぱり一度は3Pでしょ。

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TWO MEN and LITTLE BABY
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