劉鳳が手を伸ばしても、カズマは床に横たわったまま、身動き一つしなかった。どこか焦点の合わない眼をして、劉鳳を見ようともしない。まるでそうやって壊れた人形のようにじっとしていれば、この惨い行為もすぐに自分の上を通り過ぎていくだろう、目の前の男も消えてなくなるだろうというように。諦めであり、無抵抗という名の抵抗でもある。
 どうしたらこの瞳を、もう一度自分のほうへ向かせることができるだろう。あの、金色に燃えるような眼を。
 劉鳳はさっと周囲を見回した。破れたカズマの衣服、自分が脱ぎ捨ててくしゃくしゃになった『HOLY』の隊服。その下に、小さなビニール製のパッケージのようなものが見えた。
 つまみ上げると、それは避妊用のスキンだった。おそらく、先ほどのHOLD隊員たちが持ち込んだものだろう。避妊のためというより、性病の感染を恐れて。
 劉鳳は左手の中に、くしゃっとそれを握り込んだ。
 カズマの脚を広げさせ、欲望の残滓に濡れた秘花を開かせる。それは劉鳳自身が残したものだ。けれど劉鳳がもう一度そこに手を触れても、カズマは何の反応も示さなかった。
 きっとカズマは、何度も同じ経験をさせられてきたのだろう。そしてそのたびに、こうして心を閉ざし、何も見えないふり、感じないふりをして、せめても自分の心だけは守り抜いてきたのだ。
 ――だが。劉鳳はぎり、と音をたて、自分の唇を噛みしめる。そんな真似は、俺の前では許さない。俺を見ないふり、俺のこの手を感じないふりなど、絶対にさせない。はっきりとその眼で見て、そして生涯忘れるな。自分を抱いた男がいったい誰であるのか。
 劉鳳はさらに指を奥へと滑らせた。指先にまとわりついたぬめりが、その動きをスムーズにする。濡れた花の陰、ほとんど誰も手を触れたことのないだろう、小さなつぼみを探り当てる。
「……っ!?」
 ようやく、カズマの身体がびくっと反応を返した。
 劉鳳は手早くスキンの用意をする。
「ん、んぅ――うううーっ!!」
 劉鳳が今度はどこを陵辱しようとしているのかに気づき、カズマは必死であばれ始めた。背中で縛られた腕をほどこうとあがき、わずかに自由になる脚で劉鳳を蹴りあげようとする。
 だがそんな抵抗は、劉鳳にとってなにほどのものでもない。容易くカズマをうつぶせにし、下肢を大きく開かせる。
 秘花に残るぬめりを指先ですくい、狭い谷間の奥に塗りつける。硬いつぼみの中に、一本、指先をもぐり込ませた。
「ぐ、うぅ……っ!!」
 カズマの身体がこわばる。表情が苦痛に歪む。
「なんだ。こっちは初めてか」
 劉鳳はうそぶいた。
「なら、力を抜け。逆らっても、お前がつらいだけだぞ」
「うううっ! うーっ!! んううーっ!!」
 カズマは戒められた不自由な身体で精一杯あばれ、抵抗する。口の中に押し込まれた布を噛み、野生の獣のように唸る。
 怒りと恐怖の入り交じった眼が、火を噴くように劉鳳をにらむ。だがその眼が、劉鳳をさらに煽った。その瞳を見返すだけで、今まで味わったこともない戦慄と興奮が、背筋をぞくぞくと走り抜けていく。
 きゅっと締まった足首をつかみ、両脚を大きく開かせる。恐怖にすくむカズマの身体を押し開き、劉鳳は自分の欲望を突き立てた。本来、そういった機能を持たない場所を無理やりにこじ開け、猛々しいものを力ずくで呑み込ませる。
 小さなつぼみが引き裂かれていく。
「――――――――ッ!!」
 激痛の悲鳴は、口中に押し込まれた布地に吸い込まれて、消えた。
 カズマは全身をのけ反らせ、がくがくと激しく痙攣させた。大きな瞳が見開かれ、生理的な涙があふれ出す。声をあげられないのが、苦しさによけい拍車をかけているのかもしれない。
 のたうつ細い身体を抱きしめ、劉鳳はさらに身体を進めた。
 先ほどとは比べものにならないほどきつい収縮と、熱さ。熔けるような肉の感覚。
「く、う……っ」
 劉鳳は熱い吐息をついた。
 己れを根元まで完全に収めてしまっても、カズマのつぼみはそれを拒もうとしていた。自分に突き立てられた異物を押し出そうと収縮し、ぎりぎりと劉鳳を締め上げる。だがそれも、劉鳳にとってはたまらない快楽だった。
「さすがに、きついな……。食い千切られそうだ――!」
 少しずつ動き出す。ゆっくりと、カズマをこの行為になじませるように。閉じようとする小さな入り口を押し広げ、さらに奥まで弛ませようとするように、劉鳳はじり、じり、と自分の欲望をスライドさせた。
「う、うぅ……ぐぅ――っ! くう……っ!」
 布きれの奥から、細く悲鳴があがる。
 劉鳳の動きが次第に大きく、激しくなってくる。それに合わせ、カズマの身体が力無く揺さぶられた。床に押しつけられた肩にも、大きく開かされた脚にも、もうまったく力が入っていない。
 劉鳳はちらりと目線をあげ、カズマの表情を盗むように見た。
 冷たい汗と涙がほほを濡らし、乱れ髪を肌に貼りつかせている。大きな瞳には先ほどまでの敵意もない。小さな子供。苛められ、暴力を振るわれて、自分の身を守ることも出来ずに泣いている、か弱い少女。ただ、この無体な暴力に涙をあふれさせている。
 これが本当のカズマの表情なのかもしれない。ちらりと、劉鳳はそう思った。無法の荒野で生き抜くために、誰彼かまわず噛みつき、爪をたててきたカズマ。弱さを隠すためには、他者から傷つけられないためには、先に相手を手酷く傷つけるしかない。そうしなければきっと生きてこられなかった。けれどその鋭い牙の奥には、本当の、生まれたままのカズマがいる。それを、今、自分はようやく見つけたのだ。おそらく他の誰も見たことのない、カズマを。
 声が聞きたい、と思った。悲鳴と、自分に許しを請う声が。服従の言葉を繰り返し、彼自身の慈悲を求めるカズマの声が聞きたかった。
 劉鳳は手をのばし、カズマの唇を封じていた戒めをほどいた。
「あ……は、あぁ……っ」
 粗悪な布地にこすられて、唇の紅さがさらに増している。閉じることが出来なかったせいであふれ出した唾液が、その端からこぼれ、つうっと床にしたたり落ちた。
 がくん、と一つ大きく突き上げてやる。その途端、悲鳴があがった。
「あああ……っ! い、痛い――いたいぃ……っ!」
 劉鳳はカズマの細いウエストを両手で掴み、乱暴に揺さぶる。突き上げる。もっと深く、もっと奥へ、自分を呑み込ませるために。
「あっ、や、やめて……っ! も、もぉ……いやああ……っ」
 カズマは泣きじゃくった。まるで幼い子供のように。
「い、痛い、いたいぃ……っ。――抜いてっ! も、もう、抜いて、お願い……っ!!」
 けれど劉鳳の受ける抵抗は少しずつ弱くなってきている。カズマの心が諦めると同時に、身体もこの無体な行為を受け入れようとし始めていた。
「あ、は……やあぁ……っ。い、いや、あ、痛い……いた、あ……っ。ひあああ――っ!」
「痛いだけじゃないだろう。そら――ここも、もうこんなに濡れてるぞ」
 劉鳳は右手を伸ばした。カズマの腰の下へもぐり込ませ、ふるえる秘花へとすべらせる。
 長く強い指先が、花びらの中へ入り込んだ。濡れたやわらかな肉をかき分け、その奥に隠れている小さな真珠を探り当てる。
「あ、ああっ! ひうぅっ!!」
 カズマの身体がびくんっと大きく跳ね、のけ反った。
 劉鳳は指先で確かめたカズマの快楽の中心を、転がし、押しつぶし、もてあそぶ。乱暴なくらいにそれを刺激し、無慈悲に爪をたてる。
 劉鳳の指がわずかに動くたびに、短く高い悲鳴があがった。
「あっ! や、あ、そこ――ああっ! いや、ああ、あーっ!」
「なにが嫌だ。はっきり言ってみろ!」
「ああっ! だ、だめ、あっ! そんな、も、もう、そこ……あ、あんんっ――! あああっ、だ、だめええっ!!」
 カズマの官能が急速に高まっていく。秘花をなぶる劉鳳の手に、甘い蜜がとろりとしたたり落ちる。のけ反る白い背中に透明な汗の粒が浮き、細かくふるえている。
 劉鳳は大きくカズマを突き上げた。同時に、右手の指を二本揃え、カズマの花の中へ突き立てる。
「あっ、き、きゃうう――っ!!」
 高い悲鳴があがった。
 反り返る顎。桃色に染まった耳元に、劉鳳はぎりぎりと歯をたてた。
 指をさらに奥へ突き入れる。まるで自身の昂ぶりで犯す時のように、小さな泉を惨くかき回す。
 秘花とつぼみを同時に責められ、カズマは無理やり絶頂へと追い上げられた。
「いや、あ……ああっ! あっ、んぁ……やあああぁ――ッ!!」
 うす紅色に染まった身体が大きくわななく。劉鳳を受け入れた部分が、花も、後ろの小さなつぼみも、激しく痙攣するように収縮する。
「く、うぅ……っ!」
 劉鳳はぎりっと奥歯を噛みしめた。だが、抵抗できない。まるで劉鳳の欲望をすべて飲み込み、自分の中へ取り込んでしまいそうなほど激しいカズマの締め付けに、劉鳳もまたあっという間に熱い奔流をほとばしらせた。
 それでもまだ強く劉鳳を絞り上げようとするカズマの中から、劉鳳は自分を引き抜いた。汚れたスキンをむしり取り、床に投げ捨てる。
「くふうぅっ……」
 支えを無くしたカズマの身体が、ぐったりと床の上に投げ出される。
 うつぶせに倒れ込んだまま、力無くすすり泣くカズマを、劉鳳は抱き上げた。その両腕を戒めているジャケットをむしり取るように脱がせる。細い身体に残るのは、破かれたタンクトップの切れ端だけになった。
 両腕が解放されても、今のカズマにはもうなにもできない。腕に抱いた身体は、驚くほど軽い。
 涙に汚れた小さな顔に手を添え、劉鳳はゆっくりと唇を重ねた。





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