「い、いやっ。待って……ねえ、待って、達哉――達哉っ!」
 抗議の言葉は、強引な接吻に飲み込まれて消えた。
 七姉妹学園の制服が鳥の羽根をむしられるように剥ぎ取られ、床に放り出される。淡いブルーのシェルカップブラは鎖骨のすぐ下まで押し上げられ、二つの濃桜色の頂点があらわにされた。
 達哉も、ソファーに横たわるリサに馬乗りになったまま、自分の着ていたセブンスのブレザーとシャツを乱暴に脱ぎ捨てた。引き締まった上半身をさらし、堪えきれなくなったように、リサの上に覆い被さってくる。
 ふたたび激しい、呼吸ごと奪いつくすようなキスが押しつけられる。雪のように真っ白い乳房に硬い指先が食い込む。
「あ、くぅ……っ!」
 思わず苦痛の呻きをあげると、その隙に達哉の熱い舌先がするっとリサの中へすべり込んできた。
 達哉は込み上げる欲望のまま、ふっくらとしてやわらかな唇に、きつく歯をたてた。リサが顔を背けようとするのを無理やり押さえつけ、痛いくらいに吸い上げる。熔ける舌先が絡み合い、互いの口中にくちゅ、ちゅく、と小さな水音が響く。やがて透明な唾液がリサの唇を濡らし、あふれて滴った。
 リサを抱きしめ、押し包む強靱な身体。達哉の身体は、皮膚が触れ合っただけで火傷しそうなくらい、熱い。
 達哉はリサを喰らい尽くそうとするかのように、唇を離そうとしなかった。リサを徹底的にあばき、支配し、奪い尽くす。
「ふ……っ、く、ん……っ。た、達哉ぁ……っ」
 息苦しさに耐えかねて、とうとうリサは達哉の手を払いのけ、顔を背けた。
 乱れる呼吸が熱く、潤んでいる。頬から喉元にかけて、真っ白だった肌がほんのりと酔ったように紅潮しているのが、ひどく扇情的だった。
 濡れて淫らに開いた唇に、達哉はゆっくりと指を這わせた。
「あ……」
 その指に、リサはそっと舌をからめた。
 長く形の良い指、その一本一本に、リサはくちづけた。両手で達哉の手を大切に支え、形をなぞるように舐め上げ、唾液を絡めて濡らしていく。舌で辿るざらりとした感触がひどく生々しく、リサは思わず身震いした。
 爪の形、少し塩辛い皮膚の味、その指先に残る小さな傷のひとつひとつまで、はっきりとこの舌先で味わうことができる。
 この傷痕は、オリジナルの達哉が度重なる闘いの中で負い、それを影
(シャドウ)である赤い眼の達哉が忠実にコピーしただけのものだろうか。それともこの達哉自身が負った傷なのだろうか。
 リサが知る限り、赤い眼の達哉は無用な争いばかり好むところがあった。世界の滅亡も伝説の成就も関係ない、自分はただ、この圧倒的な破壊力を思う存分ふるいたいだけだと、高く哄笑して。
 新仮面党頭領・偽橿原明成の命に従うのも、それが彼自身の望みと合致しているからだけのこと。彼の破壊と殺戮に対する衝動、欲望を止めようとするならば、赤い眼の達哉はたとえ自らを造り出した神にさえも、牙を剥くだろう。
 もっともそれはリサ自身も同じだ。世界の行く末なんてどうでもいい。誰もかれも、みんな死んでしまえばいい。願うのは、ただ一人のひとの存在なのだから。
「達哉……達哉っ!」
 リサは自分から腕を差し伸べ、達哉を精一杯の力で抱きしめた。
 達哉の髪にはわずかに煙草の残り香がある。
 オリジナルの達哉は煙草を吸わない。けれどリサには、この乾いた匂いがどこか懐かしく感じられた。くちづけのたびにかすかな匂いを感じることが、リサにとっては自然に思えるのだ。
 須藤竜也は喫煙の悪癖を持っていたはずだ。そして、赤い眼の達哉も。
 ――これはいったい誰の記憶なのだろう。
「どうでも、いい……」
 リサは小さくつぶやいた。
 もう、何も考えたくない。考えられない。
 ただ、この熱い体温に抱きしめられていたい。
 もう、ここがどこだとか、どうやって神殿まで帰ろうかとか、そんなことはすべてどうでも良くなってしまう。わかるのはただ、達哉の肌の熱さ。触れ合う胸から伝わってくる鼓動、呼吸。激しい欲望。
 こんなにも達哉が自分を欲しがっている。ただそれだけが、今、リサにとってのすべてだった。
「は、あ……っ」
 肌を這う感覚に、声をあげる。
 達哉が濡れた指先でリサの腿を辿り、小さなショーツの中へ無遠慮に差し入れようとしていた。
 ぬめりを帯びた指先は、あえかな肉のあわいにぬるりともぐり込んだ。
「ひぁ――っ!」
 リサの全身が小さく跳ねる。
 達哉の唇が、リサの胸へ落ちた。真っ白いふくらみを、透明な痕を残して舐め上げる。
 先端を噛まれて、リサは声をあげた。
「あっ、あ……、や、痛い……っ」
 敏感な突起に歯を立てられ、鋭く熱い痛みが駆け抜ける。けれどそれはすぐに、じんじんと疼くような快感に変わった。
 達哉はリサの乳房に痕が残るほど強く歯をたて、滅茶苦茶に吸い上げた。まだ硬く、青白いほどの乳房に、無惨な傷痕が幾つも幾つも印される。けれど紅い印が増えるたびに、リサの身体は悦びにふるえた。
 惨い扱いをされればされるほど、悦びが増していく。甘い疼きが全身を支配し、思考も理性もどろどろに溶けていく。
「なんだよ、お前、痛いのが悦いんだろ。こっちももう、ぐちょぐちょじゃんか」
「やぁ……っ! ち、違う、そんなこと、言っちゃ、やぁ……っ」
 リサはすすり泣き、強く達哉の背にすがりついた。
「お願い……っ。お願い、達哉……も、もう少し、優しくして……っ」
 苦痛を訴えるはずのささやきは、さらに惨い扱いをねだっているようにしか聞こえなかった。
 くちゅり、と小さな音をたて、リサの秘密を探っていた指がさらに奥深くもぐり込む。
「くぅ、ん……っ」
 リサは背を弓なりにのけ反らせた。
 達哉の指が残酷にリサをかき回す。熱い蜜が指先に絡みつき、猫が水を舐めるような、小さな粘ついた水音が響いた。
「んっ、んぁ、あ……っ」
 達哉の指先がうごめくたびに、華奢な身体がぴくんとふるえ、鮎のように跳ねる。
 長い指が一本、そしてもう一本と、リサの奥深くへ差し入れられる。
 同時に、親指がその上に隠れた小さな真珠を探り当てた。
「あ、ふうぅっ!!」
 がくんっ! と、リサの身体が大きくのけぞった。
 達哉は硬い指先に力を込め、リサのもっとも過敏な肉を残酷に押し潰し、ぐりぐりと捏ねあげた。
 充血してルビー色に染まった快楽の芯と、身体の内側のデリケートな襞とを、同時に責められる。
 身体の芯から突き抜ける鮮烈な快感に、リサはたまらず身を捩った。
「ああっ! あ、や――だめ、そこ……っ。あ、あ……た、達哉あっ!!」
「なにが駄目なんだ。じゃあ、こうして欲しいのか」
 達哉は左手でリサの膝をつかみ、乱暴に開かせた。すんなりした白い脚に、限界近くまで大きな角度を持たせる。
 濃い薔薇色に染まった花びら、それをふちどる金色の淡い陰り、濡れそぼる秘密がすべて、達哉の視線の前にさらされた。
「い、いや、達哉――達哉ぁっ!」
 そしてそこに、火のようなキスが押し当てられた。
 濡れた花びらの上を、熔けるような舌先が這い回る。達哉の触れるところが、火傷しそうなくらい、熱い。
「あっ! あ、あ……あーっ!! いや、あ、た……たつ、……ああんんっ!!」
 身体中に、真っ白な火花が飛び散る。
 呼吸も停まりそうな快感に、リサは思わず逃げようと身を捩った。けれど達哉は広い肩でリサを押さえつけ、それを許さない。
 達哉は、リサのもっとも過敏な真珠を舌先で探り当てた。転がし、吸いあげ、押し潰す。容赦なく歯をたてる。
「いやああっ! あ、だめ、だめ、そこ……ッ、か、咬んじゃいやああっ!!」
 泣きじゃくり、甲高い悲鳴をあげて、リサは最初の絶頂に駈けのぼった。
 薄紅色に染まった身体が、三日月のように反り返り、硬直する。
 全身を突き抜けていった残酷なエクスタシー、その余韻も消えないうちに、達哉の手が乱暴にリサの身体をうつぶせにした。
「や……っ。い、いや、達哉……まって……」
 かすれ、呂律の回らぬ声で、リサは懸命に訴えた。達哉の腕に抗おうとしても、身体にまったく力が入らない。
「待って、達哉。あ、あたし、イッたばっかで、まだ……!」
 力ない言葉は、簡単に無視された。
 後ろから脚を大きく開かされ、肩をソファーのクッションに強く押しつけられる。狭いソファーの上でバランスを崩し、リサの片手がクッションから落ちた。
 落ちた手を床につき、もう一方の手でクッションにしがみついて、リサはかろうじて身体全部が転げ落ちるのをこらえた。けれど腰だけを達哉のほうへ突き出す、淫らな姿勢になってしまった。まるで発情した雌猫のようだ。
「あっ、あ、いや、こんな――達哉、待って……あっ! あ、いぁあああッ!!」
 高い悲鳴が響いた。
 灼熱の高まりが、リサを貫いた。
「ひ、いっ……いやああぁ……っ!」
 濡れた花びらがこじ開けられ、小さな泉に滾りたつ欲望がねじ込まれる。猛々しいまでに張りつめた達哉の脈動が、リサの泉を限界まで押し広げ、ぎちぎちに嵌り込む。
「あ、あ……あぅ……」
 嗄れた、まるで殺される小動物のような声が、リサの唇からこぼれた。
 熱い。達哉の欲望に、身体の内側から焼かれていく。それが、びく、びく、と不規則に脈動するだけで、頭の芯まで鋭敏な感覚が走り抜ける。
 達哉が、動いた。
「ああっ、あ、あぅんんっ! ――ひゃあんっ!!」
 目の前が真っ赤に染まり、息も停まりそうな衝撃がリサの全身を突き抜けた。
 リサを貫く欲望が、一旦ぎりぎりまで引き抜かれ、そしてまた一気に根元までねじ込まれる。張りつめた欲望の先端がリサの最奥に突き当たり、そのたびにそこから頭のてっぺんまで沸騰するような快感が走り抜けた。
 達哉はリサのウエストを両手で掴み、身体ごと叩きつけるようにリサを突き上げた。
「いっ、いや、だめ、そんな……っ! ああ、強いっ――だめ、つ、つよすぎるよぉっ!」
 リサは泣きじゃくった。
 激しい律動に合わせ、リサの身体ががくがくと跳ね、淫らに踊る。犯される小さな泉から、まるで達哉の質量に押し出されるように、熱く蕩ける蜜があふれ、したたった。リサの脚を濡らし、達哉の肌を汚し、ソファーのクッションにまで点々と染みをつける。
「あ、あ……い、いっぱい――。いっぱいだよぉ……っ。リサの中、た、達哉で……いっぱい――っ!!」
 達哉が動くたびに、津波のように快楽が押し寄せてくる。小さな絶頂が立て続けに全身を駆け抜け、そのたびに全身がびくびくと痙攣する。そしてさらに激しいエクスタシーへとリサをさらっていこうとする。
「い――いっちゃう……っ。いっちゃう、また……リサ、また……っ! あっ、あ――くる、きちゃう、いっちゃううぅッ!!」
 達哉の動きに逆らえない。自分の意志ではもう指一本動かすこともできない。ただ達哉の望むままに、その欲望に踏みにじられる。
 けれどそれこそが、リサの歓びだった。
「いいぜ、リサ! すげえ、締まるっ!!」
 さらに動きを強めながら、達哉がうわごとのように口走った。
「いけよ、リサ! もっとだろ! 見せてやりたいぜ、あいつに――お前がこうして、イキまくってるとこをよ!」
 あいつ――達哉。もう一人の、オリジナルの周防達哉。
「い、いやっ! いや、言わないでッ!!」
 リサは叫んだ。
 力の入らない身体を懸命に捩り、達哉の肌に触れようと手を伸ばす。
「言わないで、お願い――!!」
 不自由な姿勢で、自分から達哉の唇を求める。
「こ、こっち……。こっちが、いいの。お願い、達哉のほう、向かせて……」
「リサ」
「達哉の顔が見えないの、嫌なの……!」
「――リサ」
 達哉は、リサを強く抱きしめた。
 一旦身体を離し、腕の中でリサの向きを変えさせる。互いにいだき合うかたちで、達哉はもう一度リサを抱いた。
「あ、あああ……っ」
 リサの嬌声が切なく掠れる。
「達哉、達哉――たっちゃん……っ!!」
 リサは懸命に達哉にすがりついた。自分から達哉の背を抱き、逞しい腰に脚を絡める。達哉の刻むリズムに合わせ、腰を淫らに揺らめかす。彼をより深く迎え入れようと。
 身体の外も内も、すべてが達哉に埋め尽くされ、覆い尽くされていく。
 その悦びに、リサは溺れた。
「好き……大好き、達哉……っ! たっちゃん――!!」
「リサ――!」
 唇が重なる。リサは夢中で達哉の唇を貪った。
 ほかに、何もいらない。ただこのひとだけがいれば、いい。
 ここにいるのは、達哉。私の達哉。
 他に周防達哉は存在しない。
 そしてリサ・シルバーマンも。
 今だけは、自分達が本物の周防達哉と、リサ・シルバーマンだった。
「たっちゃん、好き、大好き……っ! あ、あ……たつや、あ……あーっ!!」
「リサ、リサ……リサ――ッ!!」
 真っ白い快楽がスパークし、神経を焼き尽くす。身体中の細胞がすべて、悦びの炎を噴き上げる。
 もう、声も出ない。最後の意識も熔けて消えていく。
 そしてリサは、死にたいくらいのエクスタシーに昇りつめた。
 










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【AMAZING GRACE・4】
 一年間の間を置いて、ようやくの続編追加です。お待たせしてしまって、本当に申しわけありませんでした。
 よっしゃあ、あと一息ぃっ!
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