「……どんなお願い?」
「笛を吹いて」
 わたくしは、柏木の胸元を指さした。直衣のふところからのぞいている、漆塗りの小さな美しい横笛を。
「え――」
「一曲だけでいい。ほんのちょっとでいいから」
 柏木は少し困ったような顔をしたけれど、やがて微笑し、横笛を唇にあてた。
 そして桜樹の上から聞こえてきた、音曲。
 それはほんのひとくさり、一曲の半分にも満たない長さではあったけれど。
 わたくしには、桜の花びらがそのまま笛の音に変じ、わたくしの頭上に降りそそいでいるように思えた。
 やがて笛の音に乳母が目をさまし、わたくしは部屋の中へ連れ戻された。
 一夜の夢は、それで終わってしまったけれど。
 この桜の貴公子が、藤原大納言――その昔の頭中将、のちの太政大臣――の息子で、世に柏木の名で知られる若者だと、わたくしはあとになって知った。
 柏木がわたくしのことを、実は朱雀帝の内親王だと知ったのは、いつだったのだろう。
 それ以来、乳母の監視は厳しくなり、わたくしはもう二度と夜の庭へ抜け出すことはできなかった。
 柏木に逢えたのも、ほんのわずか。彼の妹である新しい弘徽殿女御の局で、ものものしく几帳などをめぐらせてのこと。もちろん、直接口をきくことなど許されるはずもなかった。
 それでも、几帳の厚い布越しに、わたくしは柏木の視線を感じていた。
 ――そこにいるの?
 無言のうちに、柏木の言葉が伝わってくるような気がした。
 ――だから言っただろう。夜、一人でふらふらしていたら、鬼にさらわれてしまうって。あなたは鬼にさらわれて、そんな几帳の奥に閉じこめられてしまったんだね。
 ――まさか忘れてはいないだろう? 俺のこと。あの夜の笛の音を。
 乳母の言いつけどおり、扇をかざして顔を隠してしまったのは、姫宮としての慎みからではなかった。
 肌に突き刺さるような柏木の視線が恥ずかしくて、几帳越しにでもこの紅潮した頬が彼に見透かされてしまいそうで。
 女房たちのうわさ話に、柏木がまだ独り身でいること、妻を迎えるならぜひ帝の内親王をと望んでいることなどを聞くと、心臓がどくんと大きく高鳴った。
「まあ、柏木さまほどの若君なら、どれほど高望みしても分不相応ということはないでしょうけどねえ。内裏に出仕している若公達
(わかきんだち)の中では、柏木さまに敵(かな)う方はいませんわよ」
「そうねえ。源氏の君のとこの夕霧さまも、悪くはないけれど。どうも真面目すぎて、何でも全部型どおりで、つまらないわ」
「あら、当今
(とうぎん)さまに勝てるお人なんかいないわよ。主上(しゅじょう)が一番お素敵だわ。お名前のとおり、滾々とわき出る澄んだ泉水(いずみ)のような方!」
「んまあ!! 主上を引き合いに出すなんて、畏れ多いわよ、あなた!」
 うたた寝しているふりをしながら、そんなうわさ話に耳を澄ませた。
 彼は、きっとわたくしを待っているのだ。そう思わずにいられなかった。
 そしていつか、わたくしを迎えに来てくれるに違いない。歌物語の男君のように、月あかりのもと、今度は指貫を萩の露に濡らしながら。
 ……そう思い、あの夜の貴公子の姿を脳裏に描くことだけが、御簾や几帳に、何よりも帝の姫宮という身分に、重たく暗く閉じこめられたわたくしの、たったひとつの空想の翼だった。
 けれど、そんな少女じみたあこがれや感傷なんて、現実の権威の前には、何の意味も持たない。
 降嫁の準備は着々と進められ、わたくしはいやというほどそのことを思い知らされた。
 わたくしがどんなにいやがっても、耳を貸してくれる者は誰もいなかった。
 たまに返事が返ってくるかと思えば、
「そんなことをおっしゃってはなりません。源氏の君のお耳にでも入ったら、どんな怖ろしいことになるか……!」
 小侍従の言うとおり、源氏の君は、勝者なのだ。
 先々帝の息子、今上帝の後見。准太上天皇
(じゅんだじょうてんのう)。もはやこの国に、源氏の君の思い通りにならないものは、ない。
 その威光の前には、わたくしの意志など存在しないも同然だった。
 如月の末、わたくしはお父さまの閑院から、源氏の君の御殿、六条院へ移された。正式に降嫁となったのだ。
 輿入れの行列は、調度品やわたくしの衣装などを積んだ車がずらりと続き、名だたる貴族たちがみな参列した。さながらそれは、時期はずれの祭の行列のようだった。
 大勢の女君たちが待ち受ける六条院で、わたくしが肩身の狭い思いをすることがないよう、お父さまが精一杯の用意を整えてくださったのだ。
 ようやく桜のつぼみがふくらみ始めた六条院で、源氏の君は作法どおり自分で階まで出迎えに来て、牛車から降りるわたくしを抱き上げた。
 お父さまの閑院などとは比べ物にならないほど豪奢で、広大な六条院。
 邸内は東西南北四つの町に分かれ、それぞれ壮麗な寝殿造りの屋敷が建っている。庭にはいくつもの池や、人造の小川、滝まであり、広すぎて端も見えない。
 わたくしの住まいとなるのは、そのうちもっとも美しく、方角も良いという東南の町、別名「春の御殿」だそうだ。そしてここが、源氏の君のつねの住まいでもある。
 この御殿もまた、母屋に北の対、東の対、西の対、釣殿など、複数の大きな建物が回廊で結ばれた複雑な構成になっている。わたくしの住まいは、この御殿の中心となる寝殿。今まで源氏の君の住まいであったところだ。
 見回すだけでめまいがしそう。
 大内裏にある二〇あまりの役所全部がここへ引っ越してきても、まだ地所があまるのではないかしら?
 本当に、ばかげているくらいの広さだ。
 見とれるというより、その贅沢さになかば呆れてしまったわたくしに、源氏の君は小声で命じた。
「顔を隠しなさい」
「え?」
「人が見る。早く扇をかざしなさい」
 はっと気づけば、渡り廊下や高欄に、わたくしの輿入れに合わせて新規に召し出された女房たちが控えている。牛車の回りには、院から付き従ってきた貴族、役人たち。
 身分の高い女は、つねに慎み深く、めったなことでは他人に顔を見せてはいけないことになっている。わたくしはあわてて、言われたとおりに扇をかざし、面を隠した。
 そして扇の陰から、今度は源氏の君の顔をじっと見つめる。
 ……どこかで見たような気がする。
 こうして間近で顔を見るのは初めてなのに、なぜか、どこかで会ったような気がする。深い湖のような瞳とか、優美にとおった鼻筋とか。
 しばらく彼を見つめ、そしてようやくわたくしは気づいた。
 冷泉の帝に、そっくりなのだ。
 冷泉帝には、後宮で何度かお目通りしたことがある。もちろん、こんなに近くまで寄ったことはないけれど。
 それでも、帝のすずやかな美貌ははっきりと覚えていた。
 そう気づいて、あらためて源氏の君の顔を眺めると、気味が悪いくらい、帝に似ている。
 母が違うとはいえ、兄弟なのだから、当然なのかもしれないけれど。
 でも、同じ異母兄弟であるお父さまとは、源氏の君はあまり似ていない。
「どうかしましたか?」
 不意に、源氏の君がわたくしを見た。
 わたくしはぱっと眼をそらす。
 人の顔をこんなにまじまじと見つめるなんて、行儀が悪いと叱られるかと思った。
 けれど源氏の君は、声には出さず、唇の端だけで小さく、笑った。
「まだ子供だね」
 そしてわたくしを見据えた、眼。
「まあ良い。何事もゆっくりと教えてあげましょう」
 冷たく、何の喜びも映していないその眼。
 人間を見る眼ではない。
 その時、わたくしは悟った。
 この男にとって、わたくしは妻ではない。
 互いに話をし、対等に向き合う「人」ですらない。
 単なる「もの」なのだ。
 お父さまから源氏の君へ差し出された、貢ぎ物。
 柏木や蛍兵部卿宮や、他の男との結婚に、源氏の君が反対したのも当たり前だ。
 自分への貢ぎ物をみすみす他の男にくれてやる馬鹿はいない。
 かつて源氏の君を迫害した弘徽殿母后と右大臣一派。お父さまはその旗印だった。
 一旦は彼らに敗北した源氏の君だが、やがて廟堂に返り咲き、それとともに右大臣一派はこの国の表舞台から一掃されてしまった。
 どうしてそんなに大きく政局が動いたのか、詳しい事情はわたくしは知らない。
 廟堂を支配していた右大臣が突然の病であっけなくこの世を去り、同時期に弘徽殿母后も病に伏した。それらの不幸も、自分の眼疾も、すべて桐壺更衣、そして亡き桐壺帝の怨霊のせいだと怯えていたお父さまは、祖父と母の支えをなくして、ほとんど闘わずして帝位を投げ出してしまったらしい。
 たとえ退位しても、お父さまに闘う気概があれば、源氏の君と同じことだってできたのだ。
 すなわち、太上天皇、上皇として、東宮の後押しをし、今上の冷泉帝に圧力をかけて早々の退位をうながすこと。
 そして譲位となれば、ふたたびお父さまの権勢だって盛り返す。なんといっても、今の東宮はお父さまのたった一人の息子、わたくしの異母兄なのだから。
 実家の影響力が弱まれば、今は兄宮の寵愛を独り占めにしている明石女御だって、後宮での立場はもろくなる。
 そこにすかざす係累の娘を押し込もうとする臣下は多いだろう。かつて廟堂を思うままに牛耳っていた藤原一門は、この皇統源氏の繁栄を面白く思っているはずがない。
 その中でもっとも有益な者と手を組めば、この事態を巻き返すことだって、けして無理な話ではない。
 なのにお父さまは、完全に白旗を掲げてしまった。仏門に入り、もはや政争の世界から完全に縁を切ることを宣言してしまった。
 勝敗はもう、ゆるがない。
 そして今、敗者となったお父さまは、降伏の証を要求されたのだ。退位、出家だけではまだ足りずに。
 それがわたくし、内親王の、六条院への降嫁。
 おそらく源氏の君は、息子の夕霧中納言がわたくしとの結婚を望んでいたら、反対はしなかっただろう。
 けれど夕霧はそれをことわった。
 それでやむなく、お父さまが差し出した貢ぎ物を自分で受け取ったのだ。
「軽いね。まるでかすみを抱えているようだ」
 源氏の君の腕に抱えられて、わたくしはまるで荷物のように西の対へ運び込まれた。
 わたくしは敗者から勝者へ引き渡された物品にすぎず、そしてこの男が自らの意のままにわたくしを抱くのも、当然のことだった。
「紅梅の匂ですか。良くお似合いだ」」
 青緑の単衣に薄紅から濃き紅までの五つ衣
(いつつぎぬ)を重ねた裳唐衣(もからぎぬ)は、この日のために新しくあつらえたもの。女の衣装の中でももっとも格の高い正装だ。
 けれど、源氏の君は小さく笑った。
「朧月夜尚侍あたりのお見立てかな。しかし、少し仰々しいようだ。これでは、まるで衣に埋もれているようではないか。あなたの手がどこにあるかもわからない」
 帳を降ろし、閉ざされた御帳台の中で、源氏の君は無造作にわたくしの手をつかみ、袖から手を差し入れてきた。
 まるで人形遊びのように、わたくしの衣を剥いでいく。
 そしてそれは、あっけないほど簡単に済んでしまった。
 わたくしが育った後宮は、閉ざされた性の花園だ。
 帝の寵愛を乞う女御、更衣たちは言うに及ばず、それに仕える女房たちのもとへも、夜ごとに公達たちが忍んでくる。
 寝殿造りの建物の一つ一つの棟は、言ってみれば主人の部屋を長大な廊下で囲んであるようなもの。自分の局が持てない下級女房たちは、主人の部屋に付属する廊下のような廂
(ひさし)の間を、几帳と呼ばれる衝立や、屏風や、唐櫃(からびつ)という収納家具で仕切って、使う。
 夜の秘め事だって、ほとんど筒抜けになってしまう。それはもう、お互い様としか言いようがない。
 男たちも、それを知っていて、堂々と忍んでくる。
 有力な女御に仕える女房を自分の恋人にすることは、男にとってきわめて大きな出世の糸口になるからだ。
 高貴な女御や更衣の耳に貴公子たちの評判を吹き込むのは、おそば仕えの女房たちしかいない。そうやって、まず帝の妻妾に自分を売り込んでもらい、今度はそこからその女御の後見をする有力者や、あるいは帝その人へ、自分の噂を流してもらう。
 そのために、彼らはせっせと女房たちを口説き落とし、その寝間へ通うのだ。
 小侍従のところへだって、彼女がまだ一人前の女房になる前の女童のころから、色っぽい恋歌や付け文などがたくさん届いていた。
 それも、内親王の乳母子という小侍従の立場を利用したいという、男たちの欲得ずく。もちろん彼らは、はしっこくて生き生きした、水面に跳ねる鮎みたいな小侍従に、魅力を感じてもいるのだろうけど。
 そして小侍従もまた、いっぱしの女房みたいに、その恋文や言い寄る男たちを上手にあしらい、気に入った者はちゃんと自分の恋人にしてしまっていた。
 もちろんわたくしは、そういったことは可能な限り眼に触れないよう、育てられてきた。けれど後宮に満ちる淫靡な空気を、完全に遮断するのは無理なこと。
 寝間の中で何が行われるのか、男と女が睦み合うというのはどういうことなのか、わたくしは誰に聞かされるともなく、薄々理解していた。
 もちろん降嫁の前には、乳母がもったいぶって、
「男君がなにをなさっても、驚いたり声をあげたりしてはなりません。ただじっと、男君のなすがままになっておられれば良いのです。そうすれば、あとは男君がすべてよろしいようにしてくださいます」
 なんて、回りくどくて、てんで的はずれの解説もしたけれど。わたくしはあまりにもばかばかしくて、笑う気にもなれなかった。
 そして、源氏の君のしたことも、わたくしが想像していた手順を裏切るようなものではなかった。
 きっとこんな感じ、と、おぼろげながら想像していたとおりに物事はすすみ、淡々と終わった。
 痛みがある、とは聞かされていたし、実際、覚悟していたとおりの苦痛を感じた。
 身体の芯をさらに奥へ、奥へと無理に引っ張られるような痛み。引きつれるようなその苦痛は、今まで体験したこともないひどく異質なものだった。
 初めて男の眼に裸体をさらす羞恥、あられもない姿勢をとらされる屈辱を、感じないわけではなかったけれど。けれどそれらもあっという間に終わってしまい、ふと気づけば、え、こんなものなの……? と、なかば茫然と御帳台の天井を見上げているわたくしがいた。
 くちづけさえ、何の印象も残らなかった。
 源氏の君も、わたくしがその行為に戸惑いや恐怖を覚えるひまがないように、手早くことを済ませてしまおうと思ったのかもしれない。慣れない相手をなだめすかし、ごまかし、あるいは力ずくで従わせながら抱くのは、面倒だったのだろう。
 もちろん、我が身で体験してみて初めて知り、驚いたこともあったけれど。
 たとえば、初めて触れた男の肌の、思いがけない熱さ、硬さ。
 わたくしよりずっと年上の源氏の君の肌は、少しざらりとして、乾いている。けれどその奥にはひどく硬い、はりつめたものがある。
 男の身体がこんなふうに強く、けして撓
(たわ)まないものだと、初めて知った。
 ふくらみかけたばかりの乳房を包む、大きな手のひら。自分でいたずらに触れてみた時とは、まったく違う感触。男とは、こんなふうに指の先まで硬いものかと思った。
 重い肢体が覆い被さってきた時、わたくしは自分の身体があまりにも小さいこと、あまりにも力なく、他者の意のままに簡単に撓められてしまうことを知った。
 たしかにこんなにもわたくし自身が無力であるのなら、抵抗などできるはずもない。なにを考えようとも、みんな無駄だ。男の望むままになるしかない。
 世の女たちはみな、男に抱かれるたびに同じような無力感を覚えるのだろうか。そう思った。
 けれど……ただ、それだけ。
 たとえば人の妻となった感慨、秘密を体験した喜び、そんなものはかけらもなかった。
 源氏の君も、たいした感慨があるわけでもなく、優しげで物静かな表情の奥に、どこか、まるで単純な義務をひとつ果たしたというような、退屈そうな影をひそめていた。
 ……ああ、そうね。
 わたくしはその横顔を見るともなく眺めながら、そう思った。
 この人にとって、これは単なる儀式。お父さまが差し出した降伏文書に、承認の証として自分の名を書き入れる、それくらいのことにすぎないのだ。
 臥所
(ふしど)に身を横たえながら、わたくしは、源氏の君が無言で身を起こし、一つ小さく吐息をつくのを聞いた。
 そして夜もまだ明けないうちに、源氏の君はわたくしの寝所をすべり出て、東の対へと帰っていった。
 女房たちはその態度に、あまりに素っ気ない、愛情が薄いと、こそこそささやき合った。
「だって紗沙さま、新婚の夜ですわよ。朝ぼらけになるまで新妻のそばにいるのが、夫の義務ってもんじゃございませんこと!?」
 小侍従もさっそく文句をつける。
「姫さまは、源氏の君の正妻、北の御方ですわ! 源氏の君は朝までどころか、一日中姫さまとともにお暮らしになるのが当然ですのに!」
 けれどわたくしは、早々とわたくしの部屋を立ち去ってくれた源氏の君がありがたいとさえ思っていた。
 だって、そばにいられたって、お互い、何を話せばいいのかもわからないのだもの。
 貴族社会には、妻と日常生活をともにせず、別居して独自の生活を送る男も少なくない。
 正式に結婚したからといって、夫と妻がともに暮らす義務はないのだ。
 身分の高い男はあちこちに恋人を作り、夜ごとに通う。そして、まだ夜も明けきらぬ早朝、かはたれ時の暗がりにまぎれて、こっそりと帰っていく。
 そんな女との関係の中で、女の親元に交際が認められ、「所顕し」という披露宴を開けば、これが正式な結婚ということになる。
 そうなっても、女は依然として親の家に同居し、夫が通ってくるのを待つ。やがてはその中から夫の家に引き取られ、家政を任せられるようになる者も出る。これが正妻、北の方、ということだ。
 複数の妻、愛人の中で、誰が北の方になるのかということに、決まった法則はない。実家の権勢、愛情の深さ、連れ添った時間の長さなど、いくつもの要因が絡み合って、自然と決まっていくものらしい。そのあたりの機微が、わたくしにはよくわからないのだけれど。
 わたくしと源氏の君のように、本人の意思に関係なく家同士の取り決めで結婚が決まった場合でも、最初は夫が妻のもとへ通う形式をとる。これを三日間繰り返し、その間は、一日中妻のもとに居続けることはできない。
 源氏の君は、同じ春の御殿のうち、東の対に住む紫の上のもとへ帰っていった。






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