ACT1 いかなくちゃ



 未沙
(みさ)はだまって、自分のまわりにいる人々をながめていた。
 ここまで車を運転してきたおじさんは、自分の書いた手紙を何度も何度も、ぶつぶつ小さな声で読み返している。
 ロングヘアの女の人は、魂の抜けたような顔で遠くを見たまま、身じろぎひとつしない。まるでこわれたマネキン人形みたいだ。
 そのそばで、湿っぽい地面にじかに座り込んで、手が届くところの枯れ草を片っぱしからむしり散らしているのは、未沙と同じくらいの女の子。昨夜の自己紹介でも、女子高生だと言っていた。
 もう一人は、若い男の子。といっても、未沙よりは年上だ。大学生くらいだろうか、少し線が細くて、けっこうハンサムだけど、なんだかちょっとオタクっぽい。
 南関東の山裾をめぐる、ハイウェイライン。紅葉で有名な本線から脇道にそれ、さらに林の中へ深く入り込む。バブルのころに造成された別荘用の分譲地の入り口に、未沙たちは立っていた。
 三月なかばとはいえ、山の空気はしんと冷えきっていて、あたりはなんの音もしない。足元はうす茶色の枯れ草におおわれて、緑はどこにも見えなかった。
「ここまで来れば、邪魔は入らないよ。前に、山菜採りに来たことがあったんだ」
 車を運転し、未沙たちをここまで連れてきたおじさんは、そう言った。
「今日、明日と天気が悪いみたいだし、山菜にもまだ早いから、そうそう人は来ないよ」
「よかった……。私、二回も邪魔されてるから……。今度こそ、失敗したくないの」
 OL風の女の人はかすかにほほえんで、うなずいた。
 おじさんがワンボックスカーから七輪を出し、練炭を入れて火を熾し始める。
 風をさえぎる役割も兼ねて、みんなはおじさんの回りに立ち並び、その不慣れな手元を見守った。
 やがて黒い練炭の表面が赤く光り、それがだんだんと白い灰のように変わっていく。練炭が高熱を発し始めた証拠だ。
 ……もうすぐ。
 ……もうすぐ、みんな終わりになる。
 ……この身体を捨てて、消えて、なくなれるんだ。いつか見た、あの夢みたいに。すうっと溶けて消えて、空気みたいに、軽々とどこかに流れていけるはず。この世界じゃない、もっときれいで優しい、どこかに。
 うれしいはずなのに、未沙の口元はこわばったままだった。
 この光景は、ずっと前から夢想していた。その空想の中では、未沙はいつもしあわせそうに微笑んでいた。
 ……しあわせな気持ちになれると、思っていたのに。
 この瞬間が、今まで生きてきた十六年間の中で、もっとも輝いて、もっとも幸福な一瞬になると、思っていたのに。
 今、胸の中はひどく空っぽだった。
 ……こんなに、はりきっておしゃれまでしてきたのに。
 お気に入りのミニスカにブーツ。ウエストまでのショート丈のパーカーは、衿にフェイクファーがついている。念入りにセットして、ふわっと自然なウェーブを持たせたセミロングの髪は、長時間のドライブでちょっと乱れてしまったけれど。
 だって最期の瞬間は、いちばんきれいでかわいい自分でいたいから。
 身元がすぐにわかるようなものは、なにも持ってこなかった。
 家から出かける時も、家族が疑うようなそぶりは微塵も見せなかった。いつもどおり、ちょっと友達と遊びにでかけるようなふりをして。その態度は、我ながら完璧だったと思う。
 今までにも、週末に友達と遊びにでかけて、そのまま友達の家に泊まってしまったことは何度かあった。これで今夜未沙が自宅へ戻らず、連絡がとれなくても、両親はまたよそに泊まったのだと思うだけだろう。
 もともと未沙の両親は、未沙にあまり関心があるとは思えない。
 ……娘がなにを考えているかも、まるで理解しようとしない、無責任な親なんだから。
 今夜も、両親はあわてて警察に駆け込むようなことはしないで、一晩くらい様子を見ようとするはずだ。うるさく探されて、邪魔をされる心配はない。
 そうやって、旅立ちの準備は万全に整えているのに。
 ……なんであたし、こんなにしゃっきりしないのかな。
 もう一つ、七輪が用意され、練炭の火が移される。どんどんととのっていく準備の様子を見ても、なんの感慨も湧いてこない。ただ頭の中で、ちっ、ちっ、ち……と、規則正しく時を刻む秒針の音が響いているだけだった。
 手伝おうかな、なんてこともちらっと考えるけれど、身体がまったく動かない。
 いつも感じていた身体の重たさ。胸からおなかにかけて、ずどぉんと重たいなにかが埋め込まれてるみたいで、歩くのも手をあげるのも、ひどくのろのろとしかできない。まるで頭上から見えない手に押さえつけられているようだ。
 この息苦しさもいつものことだが、今日は特にひどいみたいだ。
 こんな身体、あたしの身体じゃない。未沙はいつも、そう思っていた。こんな無様で不格好な身体、絶対あたしの身体じゃない。だってちっとも思い通りに動かない。
 ちっちゃいころは、こんなことなかったのに。身体はバネ仕掛けみたいに、すごく軽かった。好きなだけ走れて、跳べて、思いっきり自由に遊び回れたのに。
 気がついたら、こんな身体になっちゃった。まるでなにかに呪われたみたいに、この重たい、できそこないの身体に閉じこめられちゃったんだ、あたし。
 その思いをほんの少し口にすると、母親はまるで、自分の娘がいきなり化け物になってしまったかのような目で、未沙を見た。未沙の思いが、まったく理解できなかったのだ。
 そして言ったのはたった一言。
「そんなばかなこと考えてるヒマがあったら、もっとちゃんと勉強しなさい」
 母親のその言葉を聞いて、ますます未沙の心と身体は重たくなった。
 無神経な言葉に傷つけられた、とかっていうのとは、ちょっと違う。母のその返事は、なかば予想していたものだった。
 ……ほらね。誰もあたしのこと、わかってくれないの。
 やっぱりここは、自分の居場所じゃない。この身体は、ほんとのあたしじゃない。そう思えてしかたがなかった。
 そう思うわりには、未沙はメイク道具はけして手放さず、鏡を見るのも大好きだ。つねに「いちばんかわいいあたし」を研究しているのだが。
「梨々
(りり)ちゃん……だっけ」
 ぼそっと、若い男の子が声をかけてきた。
 梨々、というのは、未沙がインターネット上で使っていたハンドルネーム、架空の名前だ。
 梨々は、未沙とは似て非なる女の子。未沙よりもちょっとスタイルが良くて、未沙よりもちょっとかわいい。話すときは未沙より少し舌ったらずになる。好きな色は暖色系のパステルカラーで、趣味は読書とネット。これは現実の未沙と同じだ。
 そして未沙との最大の違いは、家族やクラスメイトや、そういううるさい係累が一切いないこと。
 天涯孤独、過去も未来もわからない謎の少女。それが、未沙の描く理想の自分だった。
「え……と、ショーンさん――」
 ショーン、というのも、もちろんハンドル。ゲームのキャラクターからとったらしい。彼の本名は知らない。
 本名どころか、ここにいっしょにいる人たちのことを、未沙はなにひとつ知らない。
 昨夜、初めて会ったばかりなのだ。
「いいとこだよね、ここ。緑が多くてさ。こんなふうに木に囲まれてると、ぼく、なんかホッとするんだ。梨々ちゃんも、そういうの、ない?」
「え、ええ、まあ……」
 ――ヘンな人。
 昨夜会った時から、彼だけが妙に口数が多かった。
 これから死のうというのに、なんだかハイというか、どこか浮かれているような雰囲気すらある。
 ショーンは缶コーヒーといっしょに、白い錠剤を未沙に差し出した。
「え、これ――」
「睡眠導入剤
(ミンザイ)。服(の)んどくとラクだって。アユさんが用意しといてくれたんだ」
 ……アユさんて、誰だっけ。
 ちょっと考え込んでようやく、それがあのロングヘアの女性が名乗ったハンドルネームだったことを思い出す。
 昨夜、新宿にある二十四時間営業のサ店で、初めて顔を合わせた時に、ちゃんと聞いていたはずなのだが。
 ……ま、しょうがないか。べつに興味ないし。
 なかば投げやりにそう思い、未沙は錠剤とコーヒーを受け取った。
 お礼のつもりで、アユに向かって小さく頭を下げたけど、アユはそれに気づいた様子もなかった。
 きっと彼女のほうだって、未沙の「梨々」というハンドルなんか、覚えてもいないにちがいない。
 未沙はアユと、ウェブ上で話し合ったことも、メールをやりとりしたこともない。本当に、昨夜が初対面だったのだ。
 ねずみ色の背広を着て、まだ七輪の上にかがみこんでいるおじさんとも、同じ。ここに来た動機をのぞけば、共通点なんてまったくない。
 共通の動機。
 ――ここで、死ぬこと。
 集団自殺。
 生きていくことに耐えられなくて、でもひとりきりで死ぬのも、怖くて。
 だから、同じような仲間と寄り添って、死のハードルを越えるその一瞬の、後押しをしてもらう。
 そのために未沙たちは、インターネットを通じて仲間をつのり――未沙には、川の流れにゴミが押し流され、一ヶ所に集まってくるように、ごく自然にみんなが寄り集まってきたように思えたのだが――、ここへやって来たのだ。
 静かな場所を知っていると、レンタカーを借りてここへみんなを案内したのは、おじさん。七輪と練炭を用意したのはショーン。苦しむ前に眠れるようにと、薬を持ってきたアユ。そして、未沙と唯那
(ゆいな)
 この中で、未沙が最初に知り合ったのは、自称女子高生の唯那だ。もっとも、それもネットの掲示板を通じてのやりとりだったが。
 前からちょっとだけ興味があった、自殺をテーマに話し合う掲示板。
 そこに不特定多数の人間たちが書き残した無数のメッセージを見て、未沙は、思わずほっとした。
 生きる理由が見つからない。
 なぜ自分はここにいるのか。誰にも認められず、誰からも必要とされていないこの命に、なんの価値があるのか。
 まわりの人間との会話は、ただ言語をつなぎ合わせただけの、まったく意味のないモノ。笑顔はただぎくしゃくと顔面の筋肉をうごかしているだけ。表面だけをとりつくろう関係は、神経をぼろぼろにすり減らすばかりだった。
 誰も自分に安らぎをくれない。
 たったひとりで悩み、苦しむことに、もう疲れはててしまった。
 らくになりたい。
 そこに並ぶ言葉は、みんな未沙がいつも胸に抱いていた思いと同じだった。
 この世界がいやでたまらず、自分一人だけが世界からぽっかり浮き上がっているような、そんなやりきれない孤独感に苛まれている。そう思って苦しんでいるのは、未沙だけではなかったのだ。
 ……そうだよね。こんな世界、好きだって言う人のほうが、絶対うそつきだよね。
 よかった。あたしだけじゃなかったんだ。
 その安心感に、未沙はのめり込んだ。
 ここに、自分と同じ人たちがいる。
 自分たちの心は、ひとつだ。
 この言葉を通して、自分たちはつながっている。
 そう、信じた。
 この架空のコミュニティで、死はとても美しいあこがれだった。死は終わりではなく、輝く再生への第一歩だったのだ。
 最初は眺めているだけだった掲示板に、思いきってメッセージを書き込んだのは、三ヶ月ほど前。
 その時に、前から夢想していた架空の自分の姿、その名前を、ハンドルネームとして使用した。
 その掲示板にアクセスしている時は、未沙は未沙ではなかった。
 梨々という、未沙よりももっと繊細でもっと純粋な、もっと可憐な可哀想な女の子だった。
 そして、同じ悩みを持つ者として、未沙の書き込みに唯那がメッセージを返してくれたのだ。
 掲示板やメールの文面で、唯那は「ぼく」という一人称を使い、男のふりをしていた。
 昨夜、初めて現実に顔を合わせた時、
「うそついててごめんね。でも、気持ちはほんと、男だから」
 と、どこかうれしそうにみなに謝っていた。
 そう言うわりには、唯那の黒一色のファッションは、パンツもタンクトップも身体にぴったり貼り付くラインで、大きくあいた胸元にはきらきら光るビーズアクセサリーを飾っている。重たげに見えるくらいの漆黒の髪を古風なショートボブに切り揃え、真っ白な肌と黒目がちの眼を目立たせるよう、濃いめのアイメイクもほどこしていた。
 本当のことを言えば、未沙は、最初に唯那の書き込みを見た時から、唯那が女、それも自分と同じくらいの女子中学生か高校生であることに気づいていた。だいたい、いくら架空のハンドルネームだからといって、「唯那」なんて名乗る男はふつう、いない。
 きっとショーンやアユもわかっていただろう。おじさんだけが、かなりびっくりした顔をしていたが。
 まあ、本人が言葉の上だけでも男のふり――あるいは理想の自分のふりをしたいというなら、あえてそこにツッコんで、よけいなトラブルを起こす必要もない。適当にあいづちをうってやればいいや、と思っていたのだ。未沙自身、梨々という架空の名前で理想の自分を演じていたのだし。
 唯那だけではない。この場にいる人たち全員のことなんて、未沙はあまり考えたくないし、深く知りたいとも思わない。
 ネット上の文字だけを見ていた時は、そんなことは思わなかった。互いにやりとりするメールを眺めているだけで、充分理解し合えていると、感じていた。
 ……死にたい、っていうんじゃない。ただ、消えてなくなりたい。
 すうっと、空気に溶けるみたいに、無に還りたい。
 そんな、言葉にしがたい未沙の気持ちに、唯那は強く共感してくれていた。
 同じ感覚を持つ人が、ほかにもいる。そう思った時の安堵感は、今でも忘れない。あの時の気持ちだけに支えられて、未沙はここまで来てしまったのかもしれない。
 ……いなくなっちゃいたいね。この世界から。
 ……夜になって、光とか音とかが消えるみたいに、自分たちもいつの間にかいなくなっちゃうの。何の痕跡も残さずに。そうなれたら、すてきだよね。
 互いの言葉が、深く美しく胸に響く。響きあう。未沙はそう思っていた。
 ……同じだよ。同じこと、思ってた。ずっと、ずっと。
 なんて幸せなことだろう。この息苦しい世界で、ほんとうに分かり合える人とめぐりあえたなんて。
 この共感を、ほかの誰も理解できない。自分たちだけに許された特別な感覚。そんな他愛ない夢想に、未沙は完全に酔っぱらっていた。
 誰だって、ティーンエイジャーのころにはそんな夢想にひたることがある。自分だけが、この苦しみ哀しみに襲われているんだ、と。
 もちろんそれは、本人にとっては真剣な悩みだ。自分の人生が絶望に閉ざされているように、本気で感じている。
 いつか大人になって振り返れば、きっと笑い話になってしまう程度の、ささやかな夢物語。
 掲示板の書き込みを真似して、リストカットも試してみた。自分の身体を傷つけると、その痛みが、自分が生きていること、自分が確かにこの世界に存在していることをを実感させてくれるはずだ、と。
 たしかに、カッターでつけた傷はものすごく痛くて、これ以上はないくらい、未沙の存在を確信させるものだった。けれどあまりにも痛くて、もう二度とやりたくないと思った。自分の身体に傷痕が残るのも、あんまりいい気分じゃなかった。
 唯那はそのことにも、共感してくれた。
 ……自分の身体に傷をつけたくないって気持ちは、よくわかるよ。だって梨々はとてもかわいいんだもの。きれいなものやかわいいものをわざと傷つけたり壊したりするのは、良くないことだよね。
 唯那がくれたメールの文面は、まさに未沙が聞きたいと思っていた言葉そのものだった。
 言葉の上で死に憧れ、そこから先の再生を夢想して。でもそれを現実の痛み、苦しみとして味わう勇気はない。
 だから、いつまでもこうして、パソコンの画面を見つめているばかり。
 それで済んでしまうはずだったのに。
 だが未沙の前には、たわいもないはずの夢想を、確固たる現実にしてしまえる手段が、提供されていたのだ。
 やがて唯那が、本気でいっしょに逝く仲間を捜してる人がいるよと、ショーンを紹介してくれた。――もちろんそれも、ネット上でのことだが。
 唯那は以前から、ショーンともメールなどのやりとりをしていたらしい。未沙が自分と同じ願望を抱いていると確信したから、ショーンを紹介する気になったのだろう。
 本当のことを言えば未沙は、唯那が未沙以外の人間ともメールのやりとりをしていたことに、ちょっとひっかかるものを感じていた。あれほど「あなたのほかにわかりあえる人はいない」と繰り返していたのに、それは嘘だったのだろうか。
 ……でも、いいや。
 未沙はそう思ってしまった。
 ずっと夢見てきたことを現実にできるなら。些細な約束違反には眼をつぶろう。それより今は、この重たく息苦しい身体を捨てて、消えてしまえることのほうが、大切。
 ショーンとの出会いによって、それまではなんの具体性も持たなかった二人の願望が、一気に現実味を帯びてきた。
 実行方法がくわしく説明され、日時が決められた。ほかにも二人の仲間がくわわったことも、ショーンから知らされた。
 時間や金銭が比較的自由になる年長者たちの間で、準備するものの分担も決まった。
 そして未沙のもとに、ショーンから集合の場所と日時を知らせるメールが届いた。
 未沙はなんの疑いもなく、そのメールの指示に従った。
 ……死にたい、というのとは、ちょっと違う。
 ほんとうは、そう思っていた。
 ただ、消えたいだけ。この世界から、まるで水が蒸発するように、なんの痕跡も残さずに消えてなくなりたいだけ。
 だから、いじめとか借金とかの理由で自殺する人たちと、いっしょにしないで。あんなふうになにかから逃げるために、死ぬわけじゃない。
 ただ、いなくなりたいだけだから。なにかに負けたり、逃げたりするわけじゃないから。
 それを、誤解してほしくないけど。
 ――誰にいいわけするわけでもなく、自分自身に向かって、未沙は胸の中でつぶやき続ける。
 あの掲示板で知り合った仲間たちだったら、この気持ちを充分わかってくれるだろう。たとえお互い、言葉にすることはなくても。
 だって自分たちは、つながっているのだから。
 みんな、わかっている。これは、死ではない。旅立ちだ。この世界と完全に縁を切り、あらたな世界へ旅立つこと。それが自分たちのたった一つの願い。
 そしてその願いを叶えるには、これ以外に方法がない。
 おじさんの運転するワンボックスカーに乗り、新宿を離れたのが、夜明け間近のころ。
 昼近くになってようやく、この南関東の山麓に着いた。途中、高速道路ではショーンが運転を代わることもあった。
 東京より南とはいえ、標高の高い山中はまだ春が遠い。暖房の効いた車から降りると、空気が肌を刺すように冷たく感じられた。
 そのほかにはふしぎと、空腹ものどの乾きも感じなかった。
 そういうあたりまえの感覚も、麻痺しているのかもしれない。
 ……もう、半分くらい死んじゃってるのかも、あたし。
 未沙はぼんやり思った。










                                 
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