「たぶんて――そんな、おまえ、いい加減な……! だいたいおれ、おまえに取り憑かれる理由なんかねえだろ!?」
「あたしと最初に目があったから」
「んなテキトーな理由があっかよ!? そんなんで、赤の他人に取り憑かれてたまっか!!」
「て、言われてもさあ――」
 考えてみれば、TVや雑誌の心霊特集とかを見ても、明確な理由があって幽霊に取り憑かれた人の体験談なんて、聞いたことがない。たいがい、たまたま自殺の名所を通りがかってしまったとか、昔、殺人事件のあった場所の近くに家を建ててしまったとか、そんな偶然ばかりだ。
 それに、彼を逃がしてしまったら、この淋しい山中で、次に生きた人間に会えるのはいつになるかわからない。それまでまたあの息苦しさや頭から地面にめり込んでしまいそうな重苦しさにおそわれているなんて、我慢できない。
「あんたも、たまたまあたしのそばに寄ってきちゃったのが運のツキってことで。あきらめなさいよ」
「おまえなあ……」
 男の子は、ひどく情けなさそうな顔をして、未沙を眺めた。
「んないい加減な理由で他人に取り憑いてるより、さっさと成仏とかしろよ。そのほうがいいんじゃねえの?」
「だって、わかんないんだもん。成仏する方法とか」
 なんで自分が幽霊になったのか、その理由さえわからないのだから。
「じゃあさ、もっとおまえのこと良く知ってる人間んとこに行けよ。友達とか、親んとことかさ。そうすりゃ、おまえが幽霊になっちまった理由もわかるんじゃねえのか?」
「友達なんかいない」
 ぶすっと、未沙は答えた。
「家にも絶対、帰らない。親もガッコの友達も、あたしのことなんか考えてるわけない。ちゃんとあたしのことわかってもらえてたら、あたし、自殺なんかしない!」
「自殺?」
 しまった――と、未沙は片手で口元をおさえた。
「おまえ……自殺したのか」
 唇を咬み、未沙はうつむいた。
「なんでそんなこと――」
「あんたには、わからない!」
 未沙は男の子をにらんだ。
 命を粗末にするなとか、死ぬ勇気があればどんな苦難だって乗り越えられたはずだとか、そんなありきたりの説教を口にしたら、即座にこいつから離れよう。そう思う。たとえそのあと、どんなに身体が重く苦しくなったって、未沙の本質を理解してもいないヤツから、口先だけの説教を聞かされることほど腹が立つことはない。
 親とも、それで何度か衝突した。両親は未沙の言うことなんかまるで聞こうともせず、ただ自分たちの考えを押しつけるばかりだった。
 わかってくれなかった。未沙が感じていた、この世界への違和感。自分がここにいる理由がわからない、その不安、孤独。誰もわかってくれなかった。
 ……どうしてあたし、ここにいるの。
 ……なんであたし、生まれてきたの。なんのために生きてるの。
 世界はいつだって汚いものであふれていて、未沙を傷つけることばかりだったのに。
 なんでそんな場所で、がんばり続けなくちゃいけないの。
 やりたいことも、叶えたい夢も、そんなものなにひとつありはしない。そんな自分に、生きている価値なんか本当にあるの?
 その答をくれる人は誰もいなかったのだ。
 親はいつだって表面的なことしか、未沙に言わなかった。勉強しろ、親に迷惑をかけるな、近所の目を考えろ――。未沙が聞きたいのは、そんな意味のない記号みたいな言葉じゃなかったのに。両親にはそれすらわからなかったのだ。
 友達にだって、なにも期待できなかった。未沙が抱いていた孤独感、あのひとりぼっちのひりひりするような苦しさを訴えてみたところで、きっと彼女たちにはなんのことかさっぱり理解できなかっただろう。それどころか、「ヘンなことばっか考えてる、アブナイヤツ」と、未沙を排斥したに違いない。
 ……なぜなら、きっと未沙もそうしただろうから。
 自分たちに理解できない人間は排斥する。自分のまわりから徹底的に排除する。そしてその決定にさからう者もまた、共同体のルールを破る人間として、集団から追い出す。仲間とは認めない。そうやって、同じ言葉、同じ動き、同じ考えをする者だけを、仲間として受け入れる。その仲間を裏切らないよう、つねにお互いの監視をおこたらない。――学校で未沙が学んだのは、そういう生き方だった。
 誰にも、なにも言えない。生きていることそれ自体が、怖くてしかたがない。
 どんどん自分が壊れていく気がした。
 学年がひとつあがるたび、身体が少し成長するたびに、この身に見えないなにかがずるずるまとわりついて、本当の未沙を覆い隠してしまう。だから、こんなにも身体が重たくて。そしていつのまにか、その汚いずるずるしたわけのわからないものが、未沙の本質になってしまうような気がしていた。
 毎日が不安で、哀しくて切なくて、やり切れなかった。声をあげて泣きたかったけれど、涙すら干上がって出てこないくらいに。
 こんなことばかり思いつめる自分は、きっと頭がどっかいかれてるんだろう。そうまで思った。
 そして見つけた、たったひとつの救い。それが、あの掲示板。
 そこには、未沙と同じ苦しみを持つ人たちが集まっていた。
 彼らは言っていた。自分たちはこの世界に適応できないのだと。
 だから、もっとらくに、自分らしくいられる場所を、探しに行かなければならないのだ、と。
 その言葉が、未沙にひとつの明確な方向を提示してくれた。
 そう……誰もあたしをわかってくれなかったから。
 誰もあたしを受け入れてくれなかったから。
 生きる理由を、誰もあたしにくれなかったから。
 理由もなしに、生きていけるわけがない。
 だからあたしは、死ぬしかなかったんだ。
「ったく――」
 未沙ににらまれて、うんざりしたように男の子は片手で顔を覆った。
 やがてあきらめたように、大きくひとつため息をつく。
「ま、しょうがねえか」
 ぼりぼりと頭を掻いて、
「しばらくだったら、取り憑いててもいいよ」
「マ、マジ!?」
 男の子は小さくうなずく。
 未沙が自殺したことについて、彼はなにも言わなかった。
 よけいなことは、なにも訊かずにいてくれた。
「ありがと! ほんと、助かった!!」
「そのかわり、ちゃんと自分で成仏すること考えろよ。このままでいたって、きっといいことねえんだからよ」
「うんうん!!」
 未沙は子犬みたいにうなずいた。
「あと、おれン家着いても、あんまヘンな真似とかすんなよ」
「ヘンな真似って?」
「よくあんじゃん。いきなり空中でヘンな音鳴らしたり、家具とかモノとかガタガタ揺すったり。あと、金縛りも禁止な。夜はぐっすり眠らせてくれ」
「うん、わかった」
 未沙は素直にうなずいた。
 本音を言えば、金縛りもポルターガイストも、いったいどうやればいいのか、さっぱりわからない。やりたくたって、きっとできない。
 男の子は、ついて来いと未沙を手招きした。
「あ、そうだ。おまえ、名前なんてぇの?」
「名前?」
「だっておれら、これからしばらくいっしょにいるわけだろ? いつまでになるか、わかんねえけどさ。お互い名前も知らねえままじゃ、不便じゃん」
 彼はひとなつっこく、笑った。まるで小さな男の子みたいな、無邪気であったかい、どこかなつかしいような笑顔だった。
「おれ、薫平。森島薫平
(もりしまくんぺい)
「未沙」
 答えてしまってから、一瞬、ハンドルネームの「梨々」を名乗れば良かったかな、と思う。
 ――でも、やっぱり。ほんとのあたしは、「未沙」だから。
 薫平には、いちばんカッコ悪い、ほんとの未沙をもう見られてるから。
 「梨々」は、ネットの中にしかいない、架空の存在。たとえそれが未沙が想像していた理想の自分だとしても、ネットの中で「梨々」として過ごした時間よりもずっと長く、「未沙」と付き合ってきたわけだし。
「向野未沙
(こうのみさ)
「みさ」
 薫平は、確かめるように未沙の名前を繰り返した。
「よろしくな」
 握手しようと手を差し出し、すぐに、互いの手にさわれないのだということを思い出したようだ。
 にかっと笑い、薫平は親指を立ててみせた。
 未沙もうなずく。そして同じように、右手の親指をたてて、ちょっとポーズを決めてみせる。
「よろしく!」





 薫平は少し離れた道端に、400ccのバイクを停めていた。早春のハイウェイをツーリングとしゃれていたらしい。
「どう? すげーだろ。かっけーだろ!? 買ったばっかなんだ。二年もバイトして、金貯めてさ!」
 飾り気のない黒の単車が、薫平はかなり自慢のようだった。子供みたいにはしゃいで、排気がどうの足回りがどうのとしゃべり続ける。
 が、未沙はこういうメカものにはまったく興味がない。薫平があれこれうんちくタレようとも、全部右の耳から左の耳だ。
「予備のメットがねえけど……ま、いっか。おまえ、幽霊だもんな」
「うん。もし事故っても、道路に頭ぶっつけて死んじゃうのは、薫平だけだよ。あたし、これ以上死ねないもん」
「ヤなこと言うなよ!」
 薫平にさわれないのだから、彼が運転するバイクにもどうやって乗ればいいか、未沙はとまどった。
 実際、最初は手を置いても突き抜けてしまった。
 が、それも何度か試してみるうちに、なんとかなった。
 コツは「自分は今、バイクのタンデムシートに乗っている」という意識を明確に持つこと。
 現在の未沙の姿は、すべて精神のありようが外見に反映されたものらしい。要は、未沙自身が「これがあたし、これがあたしの今の状態」と確信している姿、そのままということだ。
 だから衣服は死んだ時のまま、一番のお気に入りだし、気になっていた襟元の汚れは、ふだんはそんな染みつきの服なんて絶対着てない、と思うだけで、きれいに消えた。
 もしかして顔は――と思って、バイクのミラーを覗き込んだら、残念なことに映っていなかった。
 生前の自分より、ちょっと可愛くなってるんじゃないかと、期待していたのだが。
「幽霊って、鏡に映らないのかな?」
「さー……」
 当然、薫平も首をかしげるしかなかった。
 運良くほかの幽霊に会えた時にでも、訊いてみるしかなさそうだ。
 ともあれ、未沙は公園のベンチにでも座るみたいに、薫平の単車のタンデムシートにちょこんと腰をおろした。
「しっかりつかまってろ……て、わけにもいかねえのか。ま、とにかく落ちんなよ」
 フルフェイスのメットをかぶり、くぐもった声で薫平が言う。
「うん」
 そして黒のカワサキゼファー400Xは、早春の山麓を離れた。
 いくつもの優美なカーブを描くドライブラインを一気にくだり、新興のベッドタウンと都心とを結ぶ幹線道路へと向かう。
 今朝早く、未沙がおじさんの運転するワンボックスカーで通ってきた道とは、方角は同じだが、別のルートのようだ。
 平日の午後、トラックなどで混み合う道路を、薫平はけっこうスピードを出して走り抜ける。
 横座りになった未沙のスカートが、はたはたと揺れる。手でおさえていないと、腿の上まで見えてしまいそうだ。
 けれど、すれ違う人たちは、誰も驚く様子も見せない。
 ほかの人間は誰も、未沙には気づかないらしい。
 信号待ちで停車しても、隣に並んだ車の運転手は顔色ひとつ変えず、未沙たちのほうを見ようともしない。完全に未沙が見えていないのだ。
 ただ一人、歩道に立って信号待ちをしていた女の人が、ぎょっとした顔を見せた。
 青ざめた表情で大きく目を見開き、未沙たちをじっと見る。が、その視線に気がついた未沙がふりむき、目が合うと、彼女は逃げるようにぱっと顔を伏せた。
 ……あー、あの人、見えちゃう人なんだあ。
 霊感体質とでも言うのだろうか、彼女は幽霊などをしょっちゅう見ているに違いない。そして、今、自分の見たものが、実は他人には見えていないのだと知っているから、大声をあげて騒いだりせず、またうかつに反応して未沙に取り憑かれたりしないようにと、さっと視線をそらしたのだろう。
 ……ああ、やっぱりあたし、幽霊なんだ。
 あらためて未沙は、そう思った。
 さっきの女の人以外にはなんの変化もない、ありふれた街の、ありふれた日常。
 おそらく日本中に、ここと同じような光景が広がっているだろう。
 未沙一人がいようといまいと、その風景にはなんの変化もない。
 未沙が生まれ育った街も、ここと似たり寄ったりの、静かで退屈な住宅街だった。
 そしてその街も、未沙の姿が消えたところで、まったく変化はないに違いない。
 未沙の抜けた穴になんて、誰も気づかない。この世界は、未沙がいようがいまいが、関係ない。
 誰かがそんなことを言っていた。それともあの掲示板に書き込まれていたことだろうか。
 たしかに、そのとおりだった。死んで初めて、その言葉が口先だけのものではなく、本当に自分の存在のむなしさを言い表すものとして、ひしひしと実感される。
 こんなにも自分は意味のない、無力な存在だったと。
 ――なのに、だから死んで良かったと、思えないのはなぜだろう。
 自分一人、生きていようと死んでしまおうと、世界の構成にはなんの影響も与えない。街は相変わらずさわがしくて、人々はみんな自分自身にしか興味がなく、ただ風景の中を行き過ぎるばかりだ。
 誰一人、未沙のことなんか気にもかけていない。
 ……さみしい。
 家族はそろそろ、未沙の帰りが遅すぎると不安を感じ始めているだろうか。
 いや、それも疑問だ。娘が死を覚悟するほど思いつめていることに、まるで気づきもしなかった無責任で鈍感な親なのだから。
 どうせそのうち、小遣いがなくなったら戻ってくるだろう。そうたかをくくっているに決まっている。
 帰ってきた娘にどんな小言を言うのか、それまで未沙には想像がついた。子供のくせにふらふら遊び歩いて、みっともない。近所の人に見られたらどうするんだ。親に養ってもらっているうちは、親の言うことを聞け。好き勝手がしたいなら、自分で働いて金を稼げ――。
 説教までワンパターンで、聞き飽きた。独創性も創造性もありゃしない。
 そんな人たちだから、未沙の気持ちだってこれっぽっちもわかってくれないのだ。
 ……でも。
 未沙はふと気がついた。
 ……あたし、パパやママに、一度でも死にたいなんて、言ったことあったっけ?
 生きる意味がわからない、このままじゃ不安だと、そんなことをちょっとだけ口にしたおぼえがある。その時の言葉は、自分の中にあるこのいらいらした、どす黒い気持ちを、百分の一も言い表してはいないと、感じたけれど。
 それでも、未沙にしてみれば精一杯、自分の想いを表現してみたのだ。
 けれど両親はまともに取り合ってくれなかった。
 ――言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい。
 両親はいつだって、未沙にそう言った。
 ――あなたの言うことをちゃんと聞いてあげてるでしょう。私たちは理解がある親なんだから。
 そのくせ、未沙の返事を待ってくれなかった。
 未沙の中にある、このもやもやした思い。うまく言葉にできない、重く、苦しいもの。なにかに全部ぶつけたい、身体の中から内臓ごと全部引っ掻きだしてしまいたい、そう思うくらいのどす黒い、なにか。
 たしかにそれは、未沙の「言いたいこと」だった。でも、それを表現できる言葉がない。
 なにか言おうとして、でも未沙にできることは、ひくひくとほんの少し唇を動かすことだけ。わずかな声さえ、身体の中から出てこなかった。
 そんな未沙を見て、パパもママも、「ほらやっぱり」という顔をした。
 そして、あとは滔々と自分たちの意見を未沙に聞かせるばかりだった。目立つことばかり考えるんじゃない、人並みでいるのが一番幸せなんだ。社会で生きていくのはそんな甘いものじゃない、自分の欠点から眼を逸らすな、親に迷惑をかけるな――未沙の言葉になど、まるで耳を貸そうとしなかった。
 ……待ってよ。もう少し、待って。
 あと少し時間をくれたら、この思いをなんとか表現できるかもしれない。未沙を内側からどろどろと澱
(よど)ませる、この苦い、汚いものを、全部吐き出してしまえるかもしれないのに。
 けれど両親は、その猶予を、未沙にくれなかった。未沙は、二人の説教をさえぎることもできなかった。
 ……なんだ。やっぱりそうじゃない。
 うつむき、唇を咬みしめて、未沙は思った。
 ……あんたたち、結局あたしの言うことを聞くつもりなんか、全然ないんじゃない。
 口先だけじゃん。みんな――!!
 だから未沙も、うわべだけで親に答えるようになった。
 親への落胆、彼らに理解してもらえない淋しさを、全部胸の奥底に押し込めて。
 ……だって、悪いのはママたちのほうだよ? なのになんであたしが傷ついて、泣いてなきゃいけないの? 苦しむのは、ママたちのほうじゃないの!?
 あたしは悪くない。あたしのせいじゃない!!
 ネットに向かって、親への不満や憎悪をぶちまける。それが自分の本当の想いだと、自分自身にすら、嘘をついて。あんな人たち大嫌いとパソコンのキーボードから打ち込み続けてきた。
 唯那は、そんな未沙――梨々の書き込みやメールに、深く共感してくれた。
 ……ひどいね。でもうちの両親だって、似たようなものだよ。
 ……しかたないんだ。どうせあんな人たちに、ぼくたちの気持ちがわかるわけないよ。親なんてみんな、子供は自分の人形くらいにしか思ってないんだから。
 唯那がくれたそのメールに、未沙はパソコンのこちら側で何度も何度もうなずいた。これこそ、自分の聞きたかった答なのだと思った。
 でもその奥で、……本当は哀しいと思っていた。
 自分でもその想いを認めることができなかったけれど。
 わかっていた。キーボードで書きつづる言葉は、嘘ではないけれど、けして自分の気持ちのすべてでもない、と。
 唯那や掲示板に集まる仲間たちに向かって、どれほど親の悪口をぶちまけようとも、未沙の奥底にわだかまる冷たい、重苦しいなにかは、けして減ることも軽くなることもなかったから。
 本当はママに、どうしてもわかってもらいたかった。今の未沙の気持ちを。ママだけには、わかっていて欲しかった。そしていつか、わかってくれる時が来るんじゃないかと、願い続けていたかったのだ。
 ……だって昔は、ママが大好きだった。ちいさいころは、ママは未沙のこと、なんだってわかってくれたんだもの。
 ……どうして今は、だめなの? いつからママは、未沙のこと、ちっともわかってくれなくなっちゃったの?
 そのことが、淋しくて、哀しくて。
 でもそんな自分の感情を認めてしまったら、そのまま親の無神経を黙認し、ひいては自分自身も彼らの無神経に同調してしまうような気がして、そして掲示板の仲間たちに向かって嘘をついてしまったことになるような気がして、どうしてもできなかったのだ。
 ずきん、と、指先から頭のてっぺんまで、鋭く冷たい痛みが走り抜けた。
「あ……痛うっ!」
 未沙は両手をきゅっと胸元にかかえ込んだ。









                                  
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