乏しい兵糧の中からやりくりして、精一杯の料理と酒がふるまわれた。
 濁り酒に雑穀の粥、塩引きの魚。干し飯(蒸した米を乾燥させた保存食)ばかりになる籠城の暮らしでは、それでもご馳走だった。獲れたばかりの山鳥も焚き火で炙られる。
 あかあかと篝火が焚かれた前庭で、兵たちは踊り、歌い、勝利の喜びを噛みしめた。
 了海は庭に面した濡れ縁に座り、その様子を黙って眺めていた。
 ふと見ると、焚き火のそばで鶴が、手ぬぐいを振り回して踊っている。
「よくよくめでたく舞ふものは
    巫 小楢葉 車の筒とかや
  八千独楽 蟾舞 手傀儡 
    花の園には蝶、小鳥……」
 男たちは、小袖の裾を跳ね上げて踊る色っぽい仕草に、手を叩いて喜んでいた。
 浮かれ騒ぐ兵たちのそばから、了海は誰にも気づかれないようにそっと離れた。
 建物をつなぐ渡り廊下を抜け、板葺きの平屋の裏へ回り込む。すると、宴の大騒ぎはとたんに遠くなった。
 裏庭には厩が設けられ、昼間、人間とともに大活躍した軍馬たちが、充分に秣
(まぐさ)をあてがわれ、すでにまどろんでいる。
 が、厩の藁葺き屋根はまだ傾いたままだ。修復が間に合わなかったのだ。
 修復を急がせなければ。雨漏りのする厩では、大事な軍馬が病気になってしまう。
 円谷は人間の怪我のほかに牛馬の病の手当てもするが、了海は今ひとつ彼の腕が信頼できない。得体の知れない薬の実験台にされかけたせいだろうか。
 できれば厩も藁葺き屋根ではなく、火に強い板葺きに改築したいところだが、それを実行するには金も人手も足りない。
「曲輪や堀もまだ手つかずのところが多いからな……」
 だが、ぐずぐずしてはいられない。
 間部玄蕃が、このまま引き下がるとは思えない。
 今日、撃破できたのは家臣が率いていた一部隊にすぎず、玄蕃直属である軍勢の主力は、いまだ無傷のまま桑島領内に存在しているのだ。
 だがこの勝利のうわさが広まれば、逃散した農民たちの帰参にもさらにはずみがつくだろう。彼らは即、那原の足軽となるのだ。
「兵が増えるのは良いが、そうなると兵糧がなあ……」
 藤ヶ枝城も此花館も、米倉も塩倉も空っぽに近い。もともと藤ヶ枝城は数百人の兵が立てこもれるだけの規模を誇っているが、今はそれを支える糧食がないのだ。今、城代家老が金策に走り回ってくれているが、それでも見通しは暗い。
 物見櫓もぐらぐらして、見張りに立つだけで命がけだし、馬の数も足りない。充分と言えるのは、漬け物倉にあった隠し井戸を含め、三つの井戸から汲み上げる水だけだ。
 城の外を眺めれば、桑島のみならず、東で国境を接する春川領の領主、鳥飼輝正
(とりがいてるまさ)の動きも気になる。
 了海は重たいため息をついた。
「ああもう……。胃が痛い……」
「まあ、御坊。大丈夫?」
 思わずこぼしたつぶやきに、突然、返事が返ってきた。
「えっ!?」
「宴を中座して、本当に具合が悪いの? 円谷どのを呼びましょうか」
 暗がりから月光のもとに姿をあらわしたのは、由布だった。
「姫御前。どうなさったのですか」
「御坊を探しに来たのよ。だって、ずっと姿が見えなかったんですもの」
 由布はにっこりと笑った。
「お気遣いありがとうございます。けれど、こういう祝いの席には、辛気くさい坊主なんぞいないほうが良いのですよ」
「そんなことないわ。みな、御坊に感謝していてよ。だって御坊の策が見事に的中したんですもの」
 どうやら由布は、了海を宴の主役として連れ戻したいらしい。
 了海はあわてて首を横に振った。どんちゃん騒ぎは苦手だ。
「私は坊主です。飲酒はみ仏の教えに反します」
「そうなの? 常光院では、庵主さまもほかの尼さまたちも、時々召し上がってらしたわよ。お祝い事があった時とか、お風邪を召した時とかにも」
「えー、それは……」
 無邪気な質問に、ぽりぽりと頭を掻く。
「庵主さまがたは愚僧よりずっとお年令も上です。あのかたがたは厳しい修行を積まれて、すでに悟りを開かれているのです。少々の飲酒などでその悟りが揺らぐことはございません。ですが愚僧はいまだ修行なかば、わずかな刺激で迷いが生じてしまうのです」
「まあ、そうなの。……大変なのね、お坊さまって」
 苦しい言い訳に、由布は真剣に感心しているようだった。
 そのまま、了海の隣に立ち、明るい月を眺める。
 地上の戦が嘘のような、美しい上弦の月だ。
「でも不思議ね。桑島の兵たちは、どうしてこんな石くれを金の塊だと信じたのかしら」
 城から兵たちが投げていた石を手のひらにのせて眺めながら、由布は独り言のようにつぶやいた。
「昔、茂庭川から砂金が採れたことはご存知ですか? 姫御前」
「ええ。でも、応仁の大乱の頃にはもう採り尽くしてしまったと聞いています。今、茂庭川を浚っても、黄金なんて一粒も見つからないのでしょう?」
「はい。川からは採れません。川の砂金は、どこでもみな採り尽くしてしまったのです。今、金は川から浚うのではありません。山から直接掘り出すのです」
「山? 山の中に、金が埋まっているの?」
「川底の砂金は、もともと山に埋まっていたものが、雨水に溶けて流れ出し、川に溜まったものなのですよ。ですから、昔砂金が採れた川の源流を辿れば、その山にはたいてい黄金の鉱脈が埋まっているのです」
「まあ……」
 由布は砦の背後にある黒い山の影を振り仰いだ。
「では、茂庭川の源流である丹羽山にも、黄金が埋まっているの?」
「それを確かめるには、専門の金山衆に調査をさせなければなりません。ですが、桑島の間部玄蕃は、金鉱脈があると信じているでしょう。だから玄蕃は、丹羽山に入ろうとした民たちを皆殺しにしたのです」
 那原の民を撫斬にせよという命令も、そのためだ。
 金山の存在は、けして他国に知られてはならない。
 戦国後期、甲州武田家の武勇を支えたのは領国内の多くの金山であり、毛利家を支えたのは石見銀山だった。豊臣家の莫大な財産の礎になったのもまた、征服した土地にあった数多くの金鉱だった。
 金の発掘、製錬技術が飛躍的に向上した戦国時代、日本はゴールドラッシュであり、まさに「黄金の国」だったのだ。
 玄蕃は、茂庭川でかつて砂金が採れたことを知っており、今も丹羽山を自由に出入りできた那原の民の口を、完全にふさいでしまうつもりなのだ。他国の大名や武将に、丹羽山の金のことを知られぬように。そうでなければ、支配地域の労働力になる農民たちまでをも撫斬にせよなどと、無慈悲な命令を下すはずがない。
 けれどそのことを、了海は足軽たちに知らせるつもりはなかった。この情報を手に、敵へ――たとえばまだ戦に加わっていない春川などに寝返る連中が出ないともかぎらないからだ。
 この乱世、家臣は裏切るもの、他人はおのれを騙すものと思っていなければ、生き残れない。
「ですが、こんな石くれ、いくら拾い集めたところで、黄金は手に入りませんよ」
 由布の手から小石を取り上げ、了海は少し皮肉めいた笑いを浮かべた。
「金の鉱石は、地表に露出してはおりません。山の奥深くに埋まっているものなのです。井戸よりもずっと深い場所に。そして、そんな地中深くから金の鉱石を掘りだしても、それだけでは金として流通させることはできません。石の中から混じり気のない金だけを取り出すのは、たいへん難しいのです。その技術を持っているのは金山衆
(かなやましゅう)と呼ばれる者たちだけで、彼らのあいだでもその技は秘中の秘です。金山衆を抱えている大名も、彼らの技術がが領国の外へ流出しないよう、厳しく見張っているのです」
「まあ! それでは本当に、戦場で八郎太たちに言わせたことは、まるっきりの嘘なのね?」
「はい、そのとおりです」
 了海は眉ひとつ動かさず、言い切った。
「良いのですか? お坊さまが嘘なんかついて」
「被害を最小限に抑えるためです。み仏も許してくださいます」
 由布はくすくすっと笑った。
「御坊はほんとうに、何でも良く知っているのね。都のお寺では、金の堀り方まで教えてくださるの?」
「あ、いや……。み仏の教えのように、講堂に並んで師より講義を授けていただいたわけではございません。ただ、書物があったのですよ」
「書物?」
 了海はうなずいた。
「京でも鎌倉でも、五山にはあらゆる書物が収められています。学侶はみな、それらを望むままに読むことが許されているのです」
 この時代、大陸から輸入される書籍の大半は、寺の書庫に集められていた。寺には、仏教に関するものだけではなく、医学、化学、地質学、治水技術に建築学、哲学、政治経済にいたるまで、最高水準の知恵と知識が集まっていたのだ。現在の総合大学のような存在だった。戦国の名軍師と呼ばれた人物の中に禅僧が多いのは、このためだ。
「学ぶことしか……、許されておりませんでしたゆえ」
 謀反人の子として寺へ送られ、生涯、その境内から出ることは許されないだろうと思っていた。
 寺の中ですら、一族の血塗られた過去はついて回った。同じ修行僧たちからはこそこそと陰口をささやかれ、後ろ指をさされた。師の見ていないところでは、あからさまに暴力をふるう者もいた。
 主君を討っておのれ自身がその地位につくことは、この戦国乱世では誰もが夢見ることかもしれない。が、それが賞賛されるのは、戦に勝った時だけだ。負けた人間はどれほどののしられても、仕方がない。そしてその非難が、一族でただひとり生き残った了海に集中するのも、当然のことだった。
 さらに、僧侶としての最高位につくには、天皇家や摂関家の血を引いていることが必要だった。謀反人の子などには絶対に許されない。坊主としての立身出世などにはなから興味はなかったが。
 ――いや、興味のあることなんて、なにひとつなかった。
 夢も持てない。自分の能力を活かすことも、自分に何ができるのか確かめることすら許されない。
 なにもかも諦めなければならなかった日々の中で、書物に没頭している時だけは、その虚しさを忘れていられたのだ。
 望んでも得られない未来の代わりに、ただ貪欲に知識を詰め込むことしかできなかった。
 そしてその知識が今、こうして役に立っている。皮肉なものだ。
 仏の慈悲も悟りも、自分には何の役にも立たなかった。いまだに他人を見れば疑うことしか思いが及ばないし、考えを巡らせても、戦の知識、人殺しの知恵しか浮かんでこない。
 これも、謀反人の血ゆえだろうか。
 その時。
 いきなり由布が、了海のほほを両手でびろんとひっぱった。
「な、なにをなはひまふ、ひへほぜ……!?」
「そんな顔をしてはいけません、御坊。笑いなさい」
 由布は、両手でつまんだ了海のほほを無理やり上に持ち上げて、笑いに近い形を作った。
「今宵は戦勝の宴ですよ。みんな、喜んで笑うのです。御坊がそんなふうに眉間に縦じわを寄せていたら、みなはまた不安になります。今日の勝利はしょせんつかの間、まやかしか、明日はもっと苦しくなるのかと思い、喜ぶものも喜べなくなります」
「ひ、ひかし……」
 みなが浮かれ騒ぐ時だからこそ、自分は頭を冷やしていなければならない。了海はそう思っていた。
「だって、楽しいことがなかったら、みな、苦しい時に頑張れないでしょう? 今宵この時を精一杯楽しんで過ごすからこそ、また明日からつらい籠城にも耐えられるのです。このつらさを乗り越えて、勝てば、またあの楽しい宴が待っている。みんなで喜び合うことができるって、そう信じているから、闘えるのでしょう?」
「はい――」
「喜ぶ時には、笑いなさい。苦しい顔は、苦しい時にだけするものです」
 ようやく由布の指が離れた。
 力いっぱいつねられ、引っ張られたほほが、少し痛い。
 それでも。
「愚僧も喜んでおります」
 了海は微笑した。
「ほんとう?」
「はい。敵を一兵も城に近寄せず、追い払えたこと。八郎太たちが無事に生きて戻ったこと。心底嬉しいと思っております」
「そう思うなら、ちゃんと顔に出さなくてはだめです。そうでなくても御坊は、言葉つきがきつくて、誤解されやすいのですから」
「もうしわけございません。仏頂面は生まれつきです」
「まあ、お坊さまが仏頂面! おもしろいわ、その駄洒落!」
 由布はけたけたと笑い出した。
 ――なんだか様子が妙だ。
 ふだんの由布姫より、かなり饒舌だ。月明かりのもとで見る顔も、ほんのりと紅い。
「姫御前。ご酒を召されましたか?」
「はい。少しいただきました。だってお祝いですもの」
 そしてまた、けらけらと幸せそうに笑う。
 ……酔っぱらってる。
「こちらでございましたか、姫さま。お探し致しました」
 さわが建物の陰から顔を出した。
 その後ろには、鶴もいる。
「こんなところにいらしては、ご陣代にご迷惑ですよ。もう、お部屋でおやすみになられませ」
 さわは、まだくすくすと笑い続けている由布に手をさしのべ、立ち上がらせた。横から鶴もそれに手を貸した。
「さあさあお姫さま。飲んだくれの男どもはもうほっといて、女は女どうし、先に寝ちまいましょうよ」
「――こら待て」
 了海は低い声で、三人を呼び止めた。
「いや、さわ。そのほうはもう良い。姫御前を寝所へお連れもうせ。だが、おまえは残れ、鶴!」
「あら、なんですよ、ご陣代。あたしになにか用ですか?。これから女どうし、姫さまたちと秋の夜長を楽しく過ごしましょうってのに」
「女どうしだ!? そういう科白を言いたければ、股のあいだにぶら下げてるモノを切り落としてからにしろ!」
「へっ!?」
 鶴は短く、素っ頓狂な声をあげた。
 さわもぎょっとして目を見開き、振り返る。
 だがすぐに、
「なーんだ、ばれてたんですかい」
 妖艶な美貌の鶴の唇から、野太い男の声が出た。
 了海はさわに小さく手を振り、早く行けと合図した。さわに、というより由布に、余計な話を聞かせたくない。
 さわに支えられた由布姫は、もう半分眠ってしまっている。
 さわは小さく頭をさげ、由布を連れてあわてて建物の中へ入っていった。
「いつからご存知だったんですか、ご陣代」
「最初からだ。藪の中から声が聞こえていた又ヱ門とやら。あれはお前だろう」
「ええ、そうですよ」
 鶴は――それとも又ヱ門は――あっけらかんとして言った。
「そのほかにも吾市とか木工作とか侍の新兵衛とか、歩き巫女の恵春尼とか、山ほど名前はありますよ。別に悪いこっちゃないでしょう? 女の姿してたほうが、いろいろと都合がいいもんでね」
「どんな身なりをしていようと、お前の勝手だ。お前が今までどおり、那原のために働いてくれるなら、それでいい」
 鶴は軽く肩をすくめた。
「そりゃね。もらえるものさえもらえりゃあ、ちゃんと仕事はしますよ。おれにとって大事なのは、姫さんの誉め言葉でも自分の見てくれでもねえ。今日と明日、食っていけるだけのおまんまだからさ」
 ――むしろ、そう割り切っている人間のほうが信頼できる。彼の求めているものをこちらが提供し続けるかぎり、きっちりと仕事をこなしてくれるからだ。
 忠義だの名誉だの、目に見えない曖昧なものを要求する人間のほうが、対処に困る。
「明日にでも、桑島領へ行ってくれ。玄蕃の動きを見張れ。軍勢が動き出したら、すぐに知らせるんだ」
 鶴はふん、と軽く鼻を鳴らした。
「報酬は銅銭
(ぜに)で支払う。桑島の出陣の日を探り出したら一貫文。詳しい陣容を報告してくれたら、上乗せする。無事に戦に勝てたら、もう一貫文だ」
「もうちっと色をつけてもらいたいがね。こんな貧乏砦じゃしょうがねえか。だけど、びた銭は困りますよ。大陸から来たばっかりの、まっさらな明銭
(みんせん)で願いたいね」
「努力する」
 その言葉に、やれやれというように鶴は肩をすくめて見せた。
「それじゃあこっちも、せいぜい頑張ってみますがね。連絡がつくまで、命は大事にしておくんなさいよ、ご陣代。あんたに死なれちゃ、おれも銭をもらいっぱぐれる。戦にゃ勝ったが味方に寝首を掻かれたなんてことになったら、笑い話にもなりゃしませんぜ」
 そして鶴は、ぱッと中空へ飛び上がった。
 くるっと空中で一回転し、たん!と軽い音をさせて平屋の板葺き屋根に乗る。
「準備は万端、怠りなきように。ここに来る途中、焼き討ちされて全滅した集落を見ましたよ。子どもは串刺し、女は磔、男は火あぶり吊し首……。馬や牛まで殺されて、ひでえ有り様だった。やつらは本気で那原を撫斬にするつもりらしい」
 次の瞬間、鶴の姿はもうどこにもなかった。
「……さすがだな」
 鶴の消えた虚空を、了海はいつまでも眺めていた。



 翌日。
 由布は戦用の砦である藤ヶ枝城から、いったん居住空間である此花館へ移った。
 此花館をあずかる城代家老が、さっそく挨拶をと申し出たが、
「なんと、姫御前はご気分がすぐれぬとな!? いったいどうなされたのじゃ!?」
「ご心配はいりません。今は侍女が付き添って、寝所でお休みいただいております。お目通りは明日以降になさったほうがよろしいでしょう」
 了海はやんわりと城代家老を追い払おうとした。
「だ、だ、大丈夫なのか!? 医者は何と申しておる、円谷は! いや、あやつではだめじゃ。あやつは、戦場での斬った貼ったが専門のガサツな金瘡医じゃ。繊細な姫君のお脈を取るには、やはり都から名医を呼び寄せねば――」
 初孫の赤ん坊を心配する祖父さんみたいにおろおろする城代に、了海は小さくため息をついた。
「ご心配なく。少々お疲れのご様子でしたので、大事をとってお休みいただいているだけです」
「お疲れ……。そりゃ、そうじゃの。城に移られたばかりで、いきなりあのような戦を経験されたのじゃ。年若い姫君には、さぞおっかなく、おつらかったであろうなあ……」
 城代はぐしゅぐしゅとすすり泣きを始めた。
 ――これでは、姫は実は二日酔いです、などとはとても言えない。
「ともかく、玄蕃の第一陣は退けました。玄蕃がふたたび陣容を整え、我が領内に攻め入ってくるまでには、数日の猶予がありましょう。このあいだに、我らもできる限りの戦支度をせねばなりません」
「お、おう。そうじゃ。今度は間違いなく、総力戦になろうからの。こちらも死にものぐるいで立ち向かわねばな」
 此花館の修復も終わっていないし、兵糧も足りない。武者も足軽も軍馬も足りない。
 ほかにも、桑島勢の進撃する道沿いにいる領民たちは、みな藤ヶ枝城へ避難させる必要がある。





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