「吉さんは奇麗」
 夢を見るように、お七はつぶやいた。
 吉三郎の目元、刃物で削いだようなほほ、尖ったあごを、指先ですうっと撫でる。
「奇麗なもんか」
 その指を、吉三郎は自分の前から乱暴に押しのけた。
「見ろよ、このつら。まのびしちまって、もう前髪も振り袖も可笑しくって似合いやしねえ」
「そんなことないよ。良く似合う」
 お七は両手で吉三郎のほほを包み、くいっと自分のほうへ向かせた。
 お七のうるんだ瞳が、正面から吉三郎の両眼を覗き込む。
「吉さんは奇麗。この世でいっとう奇麗だよ」
 吉三郎は答えなかった。
 お七、と名前を呼んでやりたい。けれど声がみんな喉の奥で絡まって、一言も出てこない。
 ただみっともなく、唇がふるえるばかりだった。
 冷たい一月の風が、がたがたと障子を揺する。真夜中、吹きさらしの渡り廊下を抜けてきたお七の手は、氷のように冷たい。
 だがその手が、逆に燃えるようだと吉三郎は感じた。
 いや。熱いのは、自分のほうだ。
 お七が触れてくれた皮膚が、まるで今にも火を噴きそうだ。
 ほほを包む手に、自分の左手を重ねる。凍った指をそのままぎゅっと握り締める。
 もう、その手が離せない。
「痛いよ、吉さん。そんなに強く握っちゃ……」
 お七がくすくす笑って、身をよじった。吉三郎の膝元から逃げようとする素振りを見せる。
 その躰を、吉三郎は両腕に抱きしめた。
「もっと、痛いことしていいか?」
 思わず問うた声は、かすれ、上擦って、まるで自分のものとも思われなかった。
「吉さん」
 吉三郎の胸から逃げようと可愛らしくもがいていたお七が、ぴたりと暴れるのをやめた。そのままじっと、吉三郎の顔を見上げる。
 その眼が、まるで小動物のようだと、吉三郎は思った。
 生まれたての犬の仔とか猫の仔とか、まだこの世の理
(ことわり)も生きるつらさ狂おしさも、何にもしらない真っ白なたましい。
 ――だめだ、と、頭のどこかで声がする。
 これに手を触れちゃいけないんだ。
 けれど。
「いいよ」
 島田髷も初々しく、花かんざしを飾った小さな頭が、こくんと揺れた。
「いいよ、吉さんなら、なにしても」
「お七」
 やわらかな唇が吉三郎のほほに押し当てられた。目元、鼻すじ、あご、唇。まるで母親の肌に触れたがる赤ん坊みたいに、お七は繰り返し吉三郎に接吻した。
 怺えきれず、吉三郎はお七を抱きしめた。
 強く、ただ強く。お七が苦しがってもがくのにもかまわずに。
 それ以外のことは、何もできなかった。
「吉さん。吉さん」
 うわごとのように、お七がつぶやく。
「いいよ、吉さん。吉さんのしたいこと、みんな、していいよ」
 ようやく吉三郎の腕がゆるむと、お七はため息のように細く長い息をつく。そして吉三郎の乱れる前髪、鬢
(びん)からほつれた黒髪を、指先でそうっとなでつけた。
「つらいんだね、吉さん。ここにこうして生きてるの、そんなにつらいんだね」
「お七」
 吉三郎は顔をあげた。
「そんなにつらくて仕方ないなら、ねえ吉さん。大丈夫だよ。あたしが一緒に死んであげる」
「――お七!」
 言葉につまって息を呑み、吉三郎はただお七を見つめた。どんな顔をすれば良いのかすら、わからない。
 その目の前で、お七は幸福そうに笑った。
「何があっても、吉さんを独りぼっちになんか、しやしない。あたしが一緒に死んであげるからね」
 お七が笑うと、まるで花が咲くようだと、吉三郎は思った。
 その眼に、不意に熱いものがにじむ。
「お七……お七、お七――!」
 振り袖の襟元に手をかけて、力いっぱい衿を引き抜く。桜色の長襦袢をかき分けると、喉から胸元にかけて、雪みたいに真っ白な肌があらわになった。
 いい匂いがする。甘い、あたたかい、お七の匂い。
 その匂いを、吉三郎は貪るように胸一杯に吸い込む。
 そのまま二人は、もつれるように夜具の上へ倒れ込んだ。





         一

 本堂大広間には、火事場特有のいぶ臭いにおいが満ちていた。
 そこには昨夜の火事で着の身着のまま焼け出された人々が、大勢逃げ込んできていた。
 怪我人のうめき声、無事を確かめ合う親類縁者たち、親を亡くしたのか泣きわめく赤ん坊。さしもの広い本堂も、ほとんど座る場所もないありさまだ。
 白山の円乗寺に、炎に追われた人々が逃げ込んできたのは、天和二年(西暦1682年)、師走も押し詰まった二十八日のことだった。
 その日の正午頃、本郷森川の大円寺より出火した火は翌日未明まで燃え続け、神田、日本橋から本所深川までをも焼き尽くした。消失家屋五万二千余、焼死者二千五百余人といわれる大火となった。
 火元の風上に位置し、さいわい焼け残った円乗寺は、次々に焼け出された人々が押し寄せ、臨時の避難所となった。
 避難民が寝起きする本堂だけでなく、僧侶達が日常生活を送る別棟、吉三郎のいるこの三畳間にまで、火事場の臭いは流れ込んできていた。
 ――この臭いは嫌いだ。吐き気がする。
 柱にもたれ、片膝をたてて座り、吉三郎は指の爪を噛んだ。
 この臭いを嗅ぐと、どうしても考えてしまう。自分がこの寺に拾われたのも、こんな火事の後だったのだろうか、と。
 本尊を祀り、聖なる祈りの場である本堂に対し、今、吉三郎がいるのは「庫裏
(くり)」と呼ばれる、僧侶たちの日常生活の場だ。本来は寺の台所を指す言葉であったが、いつの間にか僧侶たちの生活や修行の場全体を示すようになっている。
 吉三郎は庫裏の片隅に三畳ほどの小さな部屋を与えられていた。畳はなく、板間である。畳はまだ高級品で、武士階級や位の高い僧侶、一部の富裕な町民など、限られた層の者しか、日常的に畳敷きの部屋で生活することはできなかった。
 やがて、廊下の向こうから吉三郎の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「吉三郎、吉三郎」
 男にしてはやけに甲高い声とともに、がらっと部屋の襖が開いた。
「吉三郎。聞こえているなら返事くらいしないか」
 見慣れた納所坊主(なっしょぼうず:寺の庶務や会計を司る僧侶)の顔に、吉三郎は仕方なく居住まいだけを正し、膝を揃えて座った。
 その様子に、納所坊主はどこか蔑むような眼で吉三郎を見下ろした。事実、蔑んでいるのだろう。
 ずっと、こんな眼に見くだされてきた。
 吉三郎が円乗寺へ来たのは、数えで六つになるかならぬかの年令
(とし)。やはり火事で両親を亡くしてのことだった。
 この寺に来る以前のことを、吉三郎はほとんど思い出すことができない。自分の中にあるもっとも古い記憶は、夜空を真っ赤に灼き焦がす炎の渦だ。
 焼けただれた人間の死体、死体、死体。真っ黒に焦げて、男も女もわからない。けれど、まるで空を引っ掻くように曲がった手指だけが、はっきりと五本の指の形を保ち、かつてそれがたしかに人間であったという証明を見せているかのようだった。それ思い出すたびに、今にも記憶の中から飛び出して現実のものとなり、吉三郎の首にがっきとしがみついて絞め殺しそうに思えた。
 鼻腔にこびりついて離れない、火事場の臭い。ほかにはなにも思い出せない。
 親の顔も、名前もわからない。
 小野川吉三郎という名前や、某州浪人の子という生まれは、首から提げていた守り袋に入っていた書き付けから、判明した。
 だが本音を言えば、その名や身の上が本当に自分のものなのか、吉三郎には信じ切ることができなかった。もしかしたら、火事場の混乱で、他人の守り袋が間違って自分の手元に残ってしまっただけかもしれないのだ。
 その時に着ていた着物は、誰かが本堂で着替えさせてくれたものらしく、丈がひどく長かった。おそらく火傷の手当てか何かのために、一度丸裸にされたのだろう。その時にあるいは、吉三郎の行く末を思いやった誰かが、すでに死んだ子の守り袋をこっそり掛けかえてくれたのかもしれない。
 それは、この寺の者みなが思っていることだろう。ただ、小姓として寺に置くからには、やはりもともと侍の出身ということにしておいたほうが、都合がいい。だから誰もが、あえて同じ疑問に目をつぶっているのだ。
 円乗寺に逃げてきた理由も、わからない。おそらく風上へ向かう人の波に押され、巻き込まれてのことだろう。この寺に特にゆかりがあったとは思えない。
 焼け落ちた街の復興が始まっても、吉三郎を迎えに来てくれる親類縁者などは、一人もいなかった。
 親がはぐれた我が子の名前や年格好を紙にしたため、手がかりを求めて張り出す迷子石にも、吉三郎に相当する情報は張り出されず、結局、吉三郎はそのまま寺小姓として円乗寺で暮らすことになった。
 本当なら、身よりのない子供はみな、町奉行所が管理する「捨て子溜まり」に送られるはずだった。だが、幼いながらも吉三郎の際だった美貌に、円乗寺の住職が目を留めたのだ。
 寺小姓は、普段は寺で学問を修めるかたわら、住職など高僧の身の回りの世話をする。時には女犯を禁じられた僧侶の男色の相手をする。
 住職に拾われた吉三郎を、周囲の人間達はみな、幸運だったと口を揃えて言った。
 たしかに、火事の混乱で親にはぐれた子供が、たった一人で生きていけるわけがない。寺を追い出されたら、そこらの道端で野垂れ死にしてしまうのが関の山だろう。
 円乗寺は、寺の内外から「長老様」と呼ばれて敬意を払われている住職を筆頭に、数人の僧侶と小坊主、年老いた寺男、あとは裏の長屋から飯炊き婆さんが通ってくるきりの、どちらかと言えば小規模の寺だ。
 が、檀家には裕福な商家も多く、内情はかなり豊かだった。寺が所有する屋作などもある。だからこそ、火災などの時にはいち早く避難所に変わり、焼け出された人々に当面の炊き出しなどを配ることもできるのだ。
 だがこの寺に居ることは、吉三郎にとっては地獄も同然だった。
 寺小姓になると決まったその夜から、吉三郎は坊主どもの寝床に引きずり込まれ、玩具にされてきた。
 ――文句を言うな。お前はこのために飼われているんだ。
 吉三郎をもてあそぶ男たちは、みなそう言った。
 その時、吉三郎は男ではなかった。人間ですらなく、ただ男の欲望処理にのみ用立てられる、意思のない道具にすぎなかった。連中の薄汚いものを突っ込まれ、精を吐き捨てられるだけのごみ溜めなのだ。
 嫌とは言えなかった。言えば、寺を追い出される。そうなれば、待っているのは野垂れ死にだけだ。
 幼い頃はただ彼らの行為が苦痛で、怖ろしかった。何をされているのかもよく分かっていなかった。
 成長し、次第にその行為の意味を理解するようになると、今度は男どもの玩具にされる自分自身が情けなくておぞましくて、我慢できなくなった。伽が終わった途端、便所に駆け込み嘔吐することもたびたびあった。
 それでも表面上は、美しい寺小姓の顔をしていなければならない。
 いつも前髪をふっさりと垂らした若衆髷に結い、水浅黄や紫裾濃などの派手な振り袖で女のように着飾る。住職はこの美貌の小姓が自慢なのだ。
 太平の世に人々が慣れて、数十年。宗教は幕府の政策に取り込まれてその保護下に安穏とし、清新な精神世界への求道を忘れてしまった。美しい寺小姓は、裕福な寺を飾る重要な装飾品だった。
 ひときわ吉三郎の美貌を愛でる住職の意向もあり、この正月で数えで十九になろうとしている吉三郎は、未だに一人前の男として前髪をあげることができなかった。
 いい加減に前髪を落とさせてくれと住職に頼んでみても、
「まだ良い。それがお前には似合おうておる。まだ充分、十六、七で通るわ」
 と、鼻先であしらわれるばかりだった。
 嫌なら出ていけばいい。そう思う。寺を逃げ出し、自分の力で生きていけばいい、と。
 事実、幼い頃には何度も、坊主どもの暴力と陵辱に耐えかねて、寺を逃げ出した。このまま坊主どもの玩具でいるより、飢え死に凍え死にしたほうがまだましだ、と。
 当てもなく飛び出した幼い少年は、すぐに見つかり、寺に連れ戻されてしまった。そして、二度と逃げたりいたしませんと絶叫するまで、容赦なく折檻されたのだ。
 そんな時、いつもは弱者への慈悲を説く住職も、一切見て見ぬふりをした。彼らの言う慈悲とは対等な人間のみに向けられるもので、吉三郎はこの寺では、人ですらなかったからだ。
 成長し、体力も智恵もついた今なら、追っ手に見つからずに逃げ延びることもできるかもしれない。
 けれど繰り返し折檻された恐怖の記憶は、身体の奥底にこびりつき、どうしてもぬぐい去ることができない。
 万が一見つかって、連れ戻された時は、今度こそ坊主どもに責め殺されるかもしれない。そう思うと、かつて折檻された時の激痛が鮮明によみがえり、手足の先からぞうっと凍りつくような恐怖が込み上げてくる。怯える心を、どうしても押さえつけることができないのだ。
 そして自分は、この寺での生活以外、何も知らない。
 一応は侍としての教養も教えられてはいるが、腰に差した大小はただの飾り、抜いたところで魚もろくに切れやしない。
 まして、腕一本で身を立てられた戦国の世は既に遠い昔になってしまっている。どこの大名家でも家来の新規召し抱えなど無いに等しく、長く浪人暮らしをする侍たちの生活は困窮を極めていた。
 この寺で、坊主どもの慰みものになっているのは、我慢できない。
 けれど一人世に出て、泥水をすすって生きる覚悟も持てない。
 吉三郎は、そんな自分が吐き気がするほど嫌だった。
「おい、吉三郎。何をぼうっとしている。ちゃんと数えているのか!」
 納所坊主に怒鳴られて、吉三郎ははっと顔をあげた。
 薄暗い納戸。その中で吉三郎は、長持から何枚もの着物を取り出している納所坊主の手伝いをさせられていた。
「まったくお前という奴は、あれ以外何の役にも立たんのか!」
 納所坊主は、吐き捨てるように言った。
 この男は、吉三郎を相手にしたことはない。その代わり、時々こっそり寺を抜け出し、岡場所などへ女を買いに行っていることを、吉三郎は知っていた。
 女郎買いに出る時は、さすがに僧侶の身分は隠して、同じく剃髪頭の多い医者に化けていくようだ。
 ほかにも、檀家の女房や若後家に片端から手を出して、寺を追い出された坊主もいる。
 吉三郎をなぐさんだことがないせいか、この納所坊主はとりわけ吉三郎をさげすみ、まるで汚物を見るような眼で見くだす。坊主に媚びを売って食いつなぐ淫売、と。
 ――俺が淫売なら、その淫売を、年端もいかねえ子供
(がき)の頃からおもしろがって玩具にしてきた坊主どもや、陰に隠れて女を漁る破戒坊主と、いったいどっちが汚ねえんだ。
 そう、わめき散らしてやりたい。
 だがそんなことをすれば、坊主どもによってたかって血反吐を吐くまで殴られるだけだ。
 一瞬、ぎらりと憎悪を湛えて光った眼は、すぐに力をなくして伏せられてしまった。
「ちゃんと数えてますよ。小袖が五枚に、振り袖に……」
 長持から取り出した黒羽二重の振り袖を、吉三郎はばさりと乱暴に振って広げた。
「これをどうするんですか? 檀家から供養のために寄進されたものでしょう」
「焼け出された人たちに貸し出すんだ。みな、身体一つで逃げてきたからな。あるものはみな役立ててもらえと、長老さまがおっしゃってな」
 納所坊主は着物の特徴をひとつひとつ覚え書き帳に書き付けている。
「だが用心しておけ。どさくさに紛れてくすねようとする奴が、きっと出てくる。寄進される着物は、みな上等のものばかりだからな」
 吉三郎は内心、鼻白んだ。功徳の慈悲のと説教するなら、着物の一枚や二枚けちけちせずに、困っている人々にくれてやったらいいのだ。
「それは?」
 その着物の特徴を言えと、納所坊主が吉三郎の手にした振り袖を筆で指し示した。
「ああ……えー、黒羽二重に紅絹
(もみ)の飾り縫い、紋は……比翼紋です。桐に銀杏の」
 若くして死んだ娘のために、親か誰かが寄進した振り袖なのだろう。
 普通、自分の家紋を一つだけ縫い取りするところに、自分のものと恋しい男のものとを重ねて刺繍する、比翼紋。せめて紋だけでも離れることなく寄り添っていたいという、死んだ娘の切ない恋心の現れだ。
 いったいどんな娘だったのだろう。そして彼女に恋い慕われた男は、どんな男だったのか。
 死んだ娘の魂は、せめてあの世で幸福になれただろうか。
「よし、と……。これで全部だな」
 長持から引っ張り出した着物をひとまとめに抱え、納所坊主は立ち上がった。
「私が運びましょうか」
 吉三郎が言うと、
「いい。お前は本堂に近づけるなと、長老様がおっしゃった」
 納所坊主は、お前は誰彼かまわず色目を使うから、とでも言いたげだった。
 たしかに実際、吉三郎の美貌に目をつけた檀家の若後家などの誘いに乗ったことも、何度かあるのだが。そのくらいの息抜きがなくては、やっていられない。
 それだって自分は、坊主どもより上手く立ち回っていると思う。まだ檀家のほうにも、無論、寺の中の者にも、絶対に知られていないはずだ。ばれたら、相手の女はともかく、自分は無事でいられるはずがない。
 住職が、吉三郎をあまり大勢の人間の前に出したがらないのも、以前
(まえ)からのことだった。美しい小姓が自慢たらたらのくせに、自分より身分の高い者や権力(ちから)のある者が吉三郎に目を留めて、横から奪っていきはしないかと心配なのだ。
 小姓として花の盛りだった十五、六の頃ならともかく、こんな薹
(とう)のたった、女で言うなら吉原にも売れない大年増のような奴を、誰がわざわざさらっていくか、と、吉三郎は内心笑っていたのだが。
 来るなと言われれば、逆に行ってみたくなる。
 腕一杯に着物を抱え、少しよたよたしながら納所坊主が本堂へ向かうのを、吉三郎は黙って見送った。
 それから、足音を忍ばせて本堂へ近づいていく。
 納所坊主は、まだ本堂の中のようだ。どうやら着物を配り終えたあとも、誰かと話し込んでいるようだ。
 吉三郎は開け放しの入り口から本堂の中をそっと窺った。






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