「な、なんだい、これは!? いったいどうしたんだよ!」
 母親が金切り声をあげる。
 その混乱の中、お七は裏木戸から外へ飛び出した。
 自分でもびっくりするくらい、身体が軽い。素足で地面を蹴るごとに、どこか遠くへ飛んでいってしまいそうだ。
 ――今行くよ、吉さん。
 吉さん、あたしのために命を賭けて、この世の理をみんな乗り越えて、逢いにきてくれたよね。
 だから今度はあたしが行く。あたしが、吉さんを縛り付ける理をみんな壊して、吉さんのところへ行くからね。
「あっ! お七! お待ち、お七!」
 気がついた母親が叫んだ。けれどお七は振り返りもしない。するっと裏木戸をくぐり抜け、庭の外へ飛び出していく。
「お七が逃げる! 誰か、あの娘を捕まえておくれ!」
 だが、その声に従ってお七を追いかけられる者は誰もいなかった。
 手にした振り袖はめらめらと燃え上がり、火の粉をまき散らしている。
 それを、まるで火の翼みたいに高く頭上に広げながら、お七は夜の街へ走りだした。





    四、

 壊してあげる。
 吉さんを苛めて、哀しませて、縛り付けるものみんな。
 あたしが壊してあげるよ。
 燃え上がる振り袖を持って、お七は走った。
 昨夜の雪がまだ溶け残り、道は泥だらけだ。けれど強く乾いた風が吹いている。
 その風に火の粉が乗るように、お七は振り袖を高くかざした。
 お七の顔にも髪にも火の粉が降りかかる。けれどちっとも熱いとは感じない。
 ふと、塀の陰にうずたかく落ち葉やゴミが積んであるのが見えた。おそらく家の中で出たごみを、明日、焼いて始末するつもりなのだろう。
 さすがに持てなくなった振り袖を、お七はそのゴミの山に覆い被せた。
 少しでも早く火が移るよう、着ている着物の袖でばさばさとあおる。
 ――燃えろ。燃えちまえ。
 こんな街なんか、みんな燃えてしまえ。
 この世の理が吉さんを苦しませ、そしてこの街を支えているのなら。
 この街が、吉さんを苦しませる理そのものだ。
 この街が、あたしと吉さんとを引き離す。
 だから、みんな燃えてしまえ。
 あたしと吉さんを引き離すものなんか、みんなみんな、燃えてしまえ。
 そうして、あたしが吉さんを解き放ってあげるよ。あたしたちを縛り付ける、この世のすべての理から。
 そう。吉さんのためだったら、なんだってできる。
 吉さんはすべてを捨てて、命を賭けてあたしに逢いに来てくれた。
 その想いに、あたしはどうやって応えたらいいだろう。あたしだって、このくらいのことをしてみせなくちゃ。
 吉さんのためなら、なにも怖くない。吉さんのためなら、なんにもいらない。なにもかも捨てられる。
 親だって命だって、この世そのものだって。吉さんのためなら、全部なくなったってかまわない。
 それが、あたしの想いの証だよ。
 やがてぼッと音がして、落ち葉の山に火が移った。
 ばちばちと枯れ枝が爆ぜる。
 明るい橙色の火があがった。黒い煙とともに火の粉が噴き上がる。
 それを、お七はさらにあおった。
 ――奇麗な火。まるで吉さんの瞳みたいにきらきらしてる。
 お七は火の色をうっとりと見つめた。
 早く燃えていけ。風に乗って天まで火柱を噴き上げろ。
 この火は、あたしの翼。あたしをどこへでも好きなところへ連れていってくれる。
 燃え上がる火の粉はまるで、暗い夜空を飾る金糸銀糸の縫い取りのようだ。
 二月前、お七を他の多くの町人たちとともに円乗寺へと追い込んだ炎は、怖ろしい赤い野獣のようだったのに。あの時は炎の黄金色などまったく目に入らず、黒焦げになった死体のむごたらしさだけがお七の眼に焼き付いて離れなかった。
 けれど、今は違う。
 だってこの火は、浄めの火だもの。
 あたしや吉さんを追いつめ、苦しめ続けてきた一切のものを焼き尽くしてくれる炎だもの。
 この火が燃え広がれば、あたしも吉さんも自由になれる。あたしたちを縛り付けるものは、なにもなくなる。もう一度ふたりで、何の苦しみも哀しみもないところへ行けるんだ。
 そこであたしは、今度こそ本当に、吉さんの女房にしてもらうんだ。
 だがその時、
「おめえ、そこでなにをしてる!」
 背後から大きな濁声が響いた。
 提灯の明かりがお七に向けられる。
「て、てめえ――火付けかっ!」
 お七の肩を乱暴に掴む、大きな手。乱暴にお七を振り向かせようとする。
「きゃああっ!」
 肩の骨が外れそうな激痛に、お七は思わず細い悲鳴をあげた。
 まるで、今まさに飛び立とうとしていたお七を、武骨な腕が力任せに捕らえてひっつかみ、無理やり地上へ引きずり降ろしてしまったみたいだった。
 お七を捕まえたのは、木戸番小屋の見回りだった。取り押さえた放火犯の顔を覗き込み、うら若い娘だったことにぎょっとする。
 だがうろたえたのも一瞬で、すぐにぴいいッ!と鋭く、呼子笛が吹き鳴らされた。
「火付けだ、火付けだ! みんな起きてくれ、火付けだあーっ!」
 寝静まっていた家々に、次々に灯りがともった。火付けの声に血相を変えた街の人々が飛び出してくる。
 すぐさま消火がはじまった。掘り割りから手桶で水が汲まれ、人の手から手へと受け渡されて、燃えだしたばかりのごみの山にかけられる。飛び散った火の粉は濡らした布団で叩き消す。大人も子どもも、総出で自分たちの街を守ろうとしていた。
「急げ、風が強えぞ! 燃え広がったら手がつけられなくなる!」
「捕まえたぞ! こいつが火をつけたんだ!」
 お七は泥だらけの路面に突き倒された。





 お七の放った火は燃え広がることもなく、わずかに他人の家の板塀を焦がした程度で消し止められた。
 自分の部屋を焼こうとしたことも、使用人たちが懸命に火を消したため、家の外に火が広がることはなかった。
 だが、大火の続く江戸の街において、放火はもっとも重い罪だった。
「八百屋市左ェ門が娘、お七。そのほう、いまだ十五であったな」
 裁きの白州で、お七と対峙した南町奉行甲斐正親は、一語一語を区切るように言った。
 お七は顔を上げた。
 両手は背後で高手小手に縛られて、着ているものは捕まった時と同じ小袖。袖は焼けこげ、いまだに燻くさい臭いが染みついている。
 ほつれた髪が乱れかかる顔はまだあどけなさが残っていた。
「いいえ、十六でございます」
 奉行の顔を真っ直ぐに見上げ、お七は言った。
「お七」
 奉行は鋭く、お七の返事を制した。
「もう一度、よく数えてみよ。――良いか、火付けは大罪。たとえ小火で消し止めても、死罪は免れぬのだぞ」
 江戸において、放火は主人殺しと並ぶもっとも重い罪だった。一人の人間が刃物を振り回しても、殺傷できる人数には限りがある。が、燃えやすい木造建築が密集した江戸の街では、ひとたび大火が起きれば何千何万という人命が一夜で失われてしまうのだ。放火の罰はいかなる事情があろうと死罪、火あぶりと決まっていた。
 ただし、犯行時の年令が十五才に満たない者は、幼いために善悪の判断がつかないとして、死罪は罪一等を減じられ、遠島処分となるという法もあった。奉行はこれを踏まえて、お七の年令を確認しているのだった。
「さあ、もう一度問うぞ。お七、そのほうはこの正月で、幾つになった」
「十六でございます」
 迷うことなく、お七は即答した。
 ――あたしは、十六。
 だって、十六でなけりゃ、吉さんの女房になれないもの。
 まっすぐに奉行を見上げるお七の顔は、とても晴れやかだった。
 あたしは吉さんのところへ行くために、ふたりでずっと一緒にいるために、この街を、人の世の理を全部壊そうと思った。それを悔いたりはしていない。
 吉さんだって、きっとあたしの想いをわかってくれる。ありがとう、お七、良くやってくれたと言ってくれるはず。
 だから、あたしは十六。吉さんの女房。
 お七の口元に、幸福そうな微笑が浮かんだ。
 その笑みを消すことは誰にもできなかった。
「お七」
 奉行は唇を噛み、重苦しいため息を押し殺した。
 もはやこの娘には何を言っても届かない。
 お七の黒い潤んだような瞳は、揺らぎもせずにまっすぐ奉行へ向けられている。だがその瞳はすでに、この世の事柄はなにひとつ映してはいないのだ。
 己の罪をつぐなうために死の覚悟を決めた、すずやかな悟りの境地なのか。それとも、現実に背を向けて幻想の中に自我を埋没させてしまった愚かさゆえなのか。
 奉行はもう、その瞳を見つめていることができなかった。
 誰にでも、こんな時はあったのかもしれない。ただ一点のことを思いつめ、激情のままに突っ走る。それはこの閉塞しきった世の中において、とても爽快な生き方に思えるかもしれない。けれどほとんどの者が最後で自分をふりかえり、親兄弟や友人、あるいはこれからの未来を思いやり、破滅へ落ちる一歩を踏みとどまる。
 だがこの娘はその賢さを持たなかった。思い込みだけでここまでの愚行に突っ走った娘を、叱る言葉はもう誰にもなかった。
 ただ、若さゆえの愚かさが痛ましい。奉行はそう思った。
 お七には定法どおりに江戸市中引き回し、十日間さらされたのち、鈴が森の刑場での火あぶりが言い渡された。
 父親の市左ェ門は闕所の上、江戸追放となった。家族全員が同じ処分となり、母親も二人の兄も同じ罰を受けた。
 追放された者は地方に流れていっても、たいがいはそこで身元を保証する手だても得られず、そのまま無宿人、つまり無戸籍者、この社会には存在しない者になる場合が多かった。しかも、もう二度と江戸の土を踏むことは許されない。もしこの禁を破れば、今度はもっと重い刑罰が科せられる。
 母親は半狂乱になって泣きわめき、やがて疲れ果て一人では歩けない病人のようになって、夫に肩を支えられ、なかば引きずられるようにどこへともなく街を去っていった。家族は誰一人として、お七の処刑を見届ける勇気を持っていなかった。
 火付けの現行犯でお七が捕らえられてから、裁きを経て引き回しの刑が始まるまで、わずか十日ほどという異例の速さだった。
 定法どおりに、神田、浅草橋、日本橋など江戸市中のあちこちでさらしものにされていた間、奉行が察したとおり、お七の眼には何も映っていなかった。
 あれが火付けの罪人だ、しおらしい顔をしてなんて怖ろしい、と、お七を遠巻きに眺める人々はひそひそと、あるいは聞こえよがしにお七を罵った。
 中には見張りについた役人の目を盗み、お七に石を投げる者もいた。
 尖った石くれは、筵に座らされたお七のこめかみあたりにぶつかった。皮膚が裂け、赤い血がしたたる。
 けれどお七は、少しも痛いと思わなかった。
 これくらいのこと、痛いはずがあるものか。吉さんはもっと惨い目に遭わされていても、耐え抜いてきたんだから。
 そしてお七は、ちらほらと早咲きの桜が咲き初める中、鈴ヶ森の刑場へ引き出されていった。
 罪状を記した高札のあとから、馬に乗せられて市中を引き回されるお七は、誰が差し入れたものか、愛らしい水浅黄色の小振り袖を着ていた。黒繻子の掛け衿に帯は麻の葉模様、胸元には死罪になる者がみなそうしてもらうように、粗末ながら白木の数珠が架けられている。
 髪は乱れてほどけ落ち、横顔にはやつれた様子が見える。けれどその表情は明るかった。うっとりと夢見るような微笑に、お七を見送る人々は息を呑んだ。
 ――悔いなんて、なんにもない。
 上半身に縄をかけられ、刑場へ向かうために筵を乗せた馬の背に揺られながら、お七は微塵の怖れも感じていなかった。
 こんなにも誰かを好きになれるなんて、自分でも思っていなかった。
 生まれたときからずっと誰かの言いなりになって、ただ流されてきた自分が、最後は自分の意思で、ただ一人のひとを追い求めることができた。
 本当に生きていると、感じることができた。
 だから、悔いはない。
 この恋に自分の命をすべて燃やすことができたから。
 吉さんが、吉さんへの想いだけがあたしの宝物。ほかには何にもいらない。
 いくら奇麗な着物を着てたって、美食の限りを尽くしたって、生きている不安は消えなかった。毎日が怖くて仕方がなかった。自分は何をしたらいいんだろう、何のために生まれてきたんだろう。このままずるずると生き続けていたって、誰があたしを望み、許してくれるんだろう。どんなに考えてもその疑問に答を見出すことができなくて、答を出せない自分が気が狂いそうなくらいもどかしくて情けなくて。だから何ひとつ考えなくてすむように、ただ回りの言うがままになってきた。心のなかに何かがあるから、その何かが内側から心を突き刺して血を流させる。自分の意思なんて、あるだけつらいと思っていた。
 きっと、この街に生きる大半の者が同じことを思って生きている。人と人のあいだに乗り越えられない壁をつくり、生まれた時からその者の一生を定めてしまう理がある、この街だから。いいや、みんな自分の心を見つめずにすむように、自分の外側に高い壁をめぐらしたのではないだろうか。こんなにつらいのも虚しいのも、自分の考えが足りないからじゃない、すべて自分の回りのものがものが、この世の理が悪いのだと言い訳できるように。
 だけど、あたしはその理を乗り越えた。
 人が造り出した、人を縛り付けるすべてを振り切って、あたしと吉さんは出逢った。
 吉さんに抱かれるために、あたしは生まれてきた。
 ただひとつの宝物を、あたしたちは見つけたんだ。
 こんな生き方ができる女は、きっとほかにはいない。
 やがて引き回しの行列は、鈴が森の刑場に到着した。
 お七は荒く削っただけの丸木にくくりつけられ、その足元にうずたかく薪が積み上げられる。
 役人が定法通りにお七の罪状を読み上げ、薪に油がかけられる。その手順を、お七はただぼんやりと他人事のように眺めていた。
 油は、お七の身体にもかけられた。少しでも火の回りが早くなり、苦しむ時間が短くなるようにというせめてもの役人たちの配慮だ。どろどろした油が黄八丈に染みてゆき、気持ちが悪い。
 刑場を囲む竹の柵の向こうは、黒山の人だかりだ。火付けの犯人という極悪人の最期を見届けに、そしてうら若い娘の火あぶりという残酷な見せ物を愉しみに来たのだ。
 そのぎらぎらした無数の視線をも、お七は完全に無視していられた。
 もうなにも怖くない。
 罰せられることも、死ぬことも、なにひとつ怖くない。
 このひとのためにあたしは生きたと、胸を張って言えるから。
 誰に愚かと言われても、どんなに嘲笑されてもいい。
 あたしは今、心の底から信じていられる。あたしが生まれてきたことは、無駄じゃなかった。
 吉さん。あなたのために、あたしは生まれてきたんだよ。
 そう言って胸を張って死んでいけるほど一人の男を恋することができる女が、この世にいったい何人いるだろう。
 みんな願っているはずだ。人の世の理なんて全部踏みつけにして、たった一人の男のために心も体も、命までも捧げたいと。そこまで強く激しい恋情を抱いて死ねたなら、女としてこれ以上の幸せはない。
 あたしは、この街に生きるすべての女の憧れを抱いて、死んでいく。
 足元の薪に火がつけられた。
 見物人たちの中から、ひいっと押し殺した悲鳴があがる。
 炎は一気に燃え上がり、お七を飲み込んでいく。
 ――ただ最後に、もう一度吉さんに逢いたかった。
 吉さんの姿を、見たかった。
 そう思い、お七はゆっくりと目を閉じた。瞼を閉じた暗闇の中には、いつでも吉三郎がいるから。
 その口元に、かすかな微笑みが浮かんだ。
 だがその時。
「お七いいッ!」
 絶叫が響いた。
 見物人を押しのけるようにして、一人の若者が竹の柵に取りすがっていた。
「お七、お七、お七いいッ!!」
 燃えていくお七の耳に、その声ははっきりと届いた。
 吉さん。
 吉三郎は薄っぺらな夜着一枚だけの姿だった。円乗寺からずっと裸足で走ってきたのか、足は血まみれで、膝も手も擦り傷だらけだ。
 頬はげっそりとこけ、顔の半分にはいまだに青黒い痣になっている。あばらが浮くほど痩せてしまった身体にはあちこちにさらしが巻かれ、どす黒く変色した血の痕がついていた。
 幽鬼のような凄惨な姿に、見物人たちも思わず息をのみ、吉三郎の行く手から次々に身を引いた。吉三郎の前に小さな道ができる。
 そこを、よろよろと吉三郎が歩いた。竹の柵の一番そばまで進み出て、そこからお七へ手を伸ばす。
 ――吉さん。来てくれたんだ。あたしに逢いに来てくれたんだ。
 傷だらけになり、生爪も剥がれかけた手を、吉三郎は懸命に差し伸べた。竹の柵に身体を押しつけ、一寸でも、紙一枚の厚みほどの距離でも、お七のそばへ近づこうと。
 柵に押しつけられた頬が切れ、血がにじむ。割れた爪からも血が噴き出している。それでも吉三郎は懸命に右手を伸ばした。
「お七、逝くな、俺を置いて逝くな、お七いッ!」
 血を吐くような声だった。
 泥と血で汚れた頬を、涙が流れ落ちていく。
 刑場に突き入れられた手がもがき、むなしく空を掴む。
 吉三郎の手は、燃えていくお七に届かない。
 水浅黄の小振り袖が、麻の葉模様の帯が燃えていく。お七の白い肌が火に包まれる。
「俺も逝く、お前と一緒に、俺も――俺も……っ!」
 吉三郎が泣き叫ぶ。
 お七の眼が、吉三郎の姿を捕らえた。
 吉さん。
 ごめんね、吉さん。
 もう二度と、あなたを一人にしないと約束したのに。一緒に死んであげるって、約束したのに。
 泣いてるの? あたしのために泣いてくれるの、吉さん。
 ずっと逆だと思ってた。あたしが吉さんのためにいっぱい泣いて、そして少しでも吉さんの傷を癒してあげられたらいいって、そう思っていた。あたしが吉さんの代わりに泣いてあげたら、きっと吉さんの哀しみ苦しみも減るだろうって、そう思っていたのに。
 なのに吉さん、まだ泣いているんだね。
 そんなに苦しそうに声をあげて、傷だらけになって、今も涙が止まらないんだね。
 ごめんね、ごめんね、吉さん。本当はあたし、あなたのために何にもしてあげられなかったの?
 なんでもできると思ってた。吉さんのためなら、どんなことでもできる。してあげるって。あたしにできる精一杯のことをしたって、思ってたのに。
 でもあたしは、やっぱり吉さんを救えなかったんだ。





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