【お兄ちゃんはスゴイらしい・お試し版】


「ほら、急ぎなさいよ、さつき。自分の荷物は自分で運びなさい」
 引っ越し屋のバイト君達に、あれはそこ、これはこっちなどとてきぱき指示を出しながら、さつきのママはちゃんと娘の様子も横目で観察している。
「はぁい。わかってるって!」
 ダンボール箱を抱えて、さつきは答えた。
 なんたって、念願の自分の部屋だ。高校一年になって、ようやくもらえた自分だけの部屋。片づけを手伝ってもらうつもりなんて、さらさらない。
 今までは母一人娘一人の生活で、病院でヘルパーとして働くママの収入だけでは、1DKの賃貸マンションがやっと。庭付き一戸建てなんて、夢のまた夢だった。
 そんなさつき達に一大転機が訪れたのは、去年の暮れのこと。
「ママね……。プロポーズされちゃった」
 まるでローティーンの女の子みたいに、恥ずかしそうにママが言ったその言葉に、さつきは即座にうなずいた。
「やったぁ! 良かったじゃん、ママ! 相手は吉永のおじさんでしょ!? あの人ならいいよ、あたしも大賛成!」
「あんた、本当にいいの? ママがこの歳になって再婚なんて――」
「ぜーんぜん平気! ママ、今まで女一人で頑張ってきたんだもん。もうちょっと楽して、幸せになったっていいよ」
 お相手の『吉永のおじさん』には、さつきも何度か会ったことがある。ママは、自分がつき合っている男性を娘にもちゃんと紹介してくれたのだ。優しくてちょっと照れ屋で、少し――いや、とっても地味ぃなおじさんだが、ママのことを真剣に愛しているらしい。10年以上前に奥さんを交通事故で亡くしてからずっと男やもめを通してきたのだが、たまたま行った病院で、きりきりしゃんとりりしく働くママに一目惚れをしたそうだ。
 おじさんは、恋しい人に高校一年のでかいコブがついているのも、まったく気にしなかった。
 それもそのはずだ。おじさんにも、それ以上にでかいコブがついていた。
 それからぱたぱたと話がまとまり、さつきは仲村さつきから吉永さつきになった。母娘ふたりきりから、家族もいきなり倍増して、お父さんとお兄さんができることになった。
 そして、駅から少し離れた静かな住宅地で、さつきたちは新しい生活を始めることになった。今までより学校は遠くなってしまったけれど、あこがれの庭付き一戸建てだ。
 『吉永のおじさん』が『お父さん』に昇格するのにも、それほど時間はかからなかった。まだちょっとお互いにぎこちないけれど、少しずつ家族になっていけると思う。
 そして――。
「さつきちゃん。それ、持とうか?」
 さつきが運ぼうとしていたダンボール箱が、ひょいと上へ持ち上げられた。
 箱越しに見上げると、少し陽に焼けてあったかみのある笑顔が、さつきを見下ろしている。
 ビジネスマンらしく、すっきりと切り揃えた髪。きれいに筋肉の形が浮かび上がる強い腕、広い肩。
「これ、二階だろ? ひとりで運ぶのは、女の子じゃちょっと無理だよ」
「あ……、うん」
 吉永 亮(りょう)。身長185p弱(目測)、年令26才。某大手ゼネコン勤務、一級建築士。
 これが、突然ぽっこりできてしまった、さつきの兄だ。
 スーツにネクタイ、ビジネスツールを小脇に抱えてびしっと決めれば、確かにばりばりのエリートサラリーマンだが、こうやってジーパンによれよれのタンクトップでほいほい荷物を運んでいる姿は、引っ越し屋のバイト君となんにも変わらない。おでこにタオルで鉢巻きでもしてたら、もう完璧だ。
 おまけに。
「あ、危ない! 頭!」
 さつきが叫んだ時には、もう遅かった。
 ごちん。いかにも痛そうな音がする。
「あ、あだぁ……。日本の家ってのは、どうしてこう、鴨居が低いんだ――!!」
 それは、鴨居が低いのではなく、亮がでかすぎるのだと思う。
 うるうる涙目になって頭をさすっているところなど、なんだか可愛くて、10才も年上とは思えない。『お兄さん』だなんて、とてもじゃないが呼ぶ気になれないのだ。
「あー! もう、そんなに笑うことないだろう!」
「だってさ、亮が悪いんじゃん! あたし、ちゃんと言ってやったのに、まともに頭ぶつけてさ!」
 素っ気なくてとっつきにくいより、こっちの方がずっといい。
「ほら、あんた達! 何のんびりしてるの。早くしないと、日が暮れちゃうわよ!」
                   ☆
「へーえ。再婚かあ。さつきのお母さん、やるじゃん」
「さつき、反対しなかったの?」
 ホームルームでクラス担任からさつきの事情について説明があると、クラスメイトの女の子達は一斉に騒ぎ、ホームルームが終わるや否や、わあっとさつきの回りに集まった。
「うん、別にぃ。最初の結婚でママがすっごく苦労してたの、あたし、知ってるしね。相手がロクでもない男でさー。ま、それがあたしの実の親父なんだけど。もー、あんな男、すっぱり離婚して大正解だったし。ママには、今度こそ幸せになってほしいなって思ってるんだ」
 男の子みたいにさばさばした性格が取り柄のさつきだ。親の再婚なんてプライベートなことに余計なくちばしを突っ込まれても、けろっとして受け答えする。セーラー服姿でも、ベリーショートの髪にスレンダーな肢体は、やっぱり少し男の子みたいな、ジェンダーレスの雰囲気を醸し出していた。
「ふーん。お義兄さん、もう26才なんだあ」
「京極大出て、鷹取建設勤めてるって!? すっごーい! 超エリートじゃーん!!」
「エリートたって……要は土建屋だよ。なんか、ほとんど毎日現場に出てるらしいし、腕とかもドカタ焼けしちゃって、軍手の跡がくっきりだし」
「もう、さつきってば、それがいいんじゃんよー! 身体キタエてまーすみたいなー」
「そうそう! やっぱ男はそうでなくっちゃ! 今時、ほんとのデスクワークの技術屋なんて、なーんかオタクっぽくて」
「そんで、そんなヤツに限って、妙な趣味とか持ってたりすんだよね。ヴァーチャルSEXとか、コスプレとかさー。そーゆープレイばっかしつこくって、いざ始めてみたら5分も保たなかったりしてね」
 クラスメイトの少女達は、露骨な言葉を平気で口にする。さつきの高校はれっきとした共学で、同じクラスにはちゃんと男子生徒もいるのだが、彼女達はそんなことはまるっきり気にしていないようだ。
 もちろん、さつきだってエッチ関係の話は嫌いじゃない。実体験だってなきにしもあらずだし。でもメインテーマが自分や家族のこととなると、さすがにトーンダウンしてしまう。
「ねーねー、お義兄さんって、彼女いるの!? もちろんいるよねえ、そんなエリートなんだもん」
「さあ……。聞いたことないけど。家ん中じゃ、何だかいつもぼーっとしてて、もてそうにも見えないし」
「甘いね、さつき。そういう男に限って、いざとなったらすごいんだってば」
「そーそー! 身体だって鍛えてあるんだし、もー、一晩中でもやりまくりーみたいなー!?」
「やだぁ! そんなの、こっちがこわれちゃうよー!」
「それがいいんじゃーん! 一度でいいからさ、もー死ぬーってくらいやられてみたいよねー! あ、でも回数だけなんてぜってーやだ。テクもあってさ、ちゃんとイカしてくれーみたいな? そーなると、やっぱオトナのオトコじゃん? さつきの義兄さん、ちょっと試してみたいよねー!」
「うん、きっと凄いよーっ!!」
 少女達は一斉にきゃあっと声をあげた。
 ……一体何が凄いんだか。さつきはもう、呆れて言葉も出てこなかった。
 だいたい彼女がいるんなら、再婚した父親にくっついて後妻や連れ子と同居するような真似、しないって。一人暮らししてた方が、デートするにも彼女連れ込むにも、ずっと便利に決まっている。
 きゃあきゃあとはしゃいで笑うクラスメイトたちを横目に、さつきは頬杖をついて、ため息をついた。
                   ☆
 授業が終わり、そそくさと帰宅したさつきを待っていたのは、ダイニングテーブルに置かれた小さなメモだった。
『ママは今夜、仕事で少し遅くなります。帰りにお父さんと待ち合わせて、一緒に食事してきます。新婚さんがデートしてくるんだから、あんた達は邪魔しないで、おとなしくお留守番してること』
「あのねえ……」
 さつきのママは、さつきを一人前扱いして、大事なことは全部相談してくれて、ちゃんと意見も聞いてくれる。そのかわりこういうところは実に素っ気なく、甘くない。
「ま、いいけどね。確かにママ達、新婚なんだから」
 冷蔵庫の中には、夕食の材料が一通り揃っている。ママが再婚する前から、夕食の準備はほとんどさつきが引き受けてきたのだし、何も困ることはない。
 制服を着替えて、キッチンに立っていると、やがて玄関の方でドアの開く音がした。
「ただいま――と、あれ? 親父達は?」
 のれんをかきわけて、亮がキッチンに顔を出した。
 藍色のスーツにネクタイ、細い銀縁の眼鏡。亮のこういう姿を見ると、クラスメイト達のエリートの何のという言葉にもうなずける。
「うん。今日はふたりでデートしてくるって。ご飯も外で食べてくるみたい」
「へえ。じゃあ、今日の晩飯はさつきちゃんが作ってくれるのか。大丈夫かなあ」
「あ、しっつれいな! ママとふたりの時は、ほとんどあたしがご飯作ってたんだよ!」
 言ったとおり、ふたり分の夕食はけっこう簡単に出来上がってしまう。
 さつきと亮は向かい合ってテーブルについた。
「前言撤回。さつきちゃん、料理上手だね」
「どうだ、見たか!」
「俺も少しくらい、料理の練習しとくんだった。そういうのは俺、まったくダメだからなー。大学ん時は4年間ずっと部の寮にいたし」
「あ……。もしかして亮、一人暮らししないのって、そのせい?」
「ああ。しないっつーより、できない、だな。今の状態で一人暮らし始めたら、絶対3食外食になる。今んとこ運動量も減ってるし、そんなんじゃメタボ一直線だ」
 そんなたわいない話をしながら、さつきの分の二倍はある食事が、綺麗になくなっていく。はたで見ていて小気味よいくらいだ。
 この亮の食事の量にも最初は驚いた――それでも大学でラグビーをやっていた頃に比べれば、ずいぶん小食になったのだそうだ――が、今では見慣れて、びびることもなくなった。
「二十歳前後の男なんて、みんなこのくらいは食うもんだぜ。ましてスポーツでもやってりゃ、一日5食くらい食うって」
「そ、そうなの……?」
 今まで兄も弟もいなかったさつきには、ちょっと想像のつかない世界だ。
 そんなことを聞くと、つい、クラスメイト達の話を思い出してしまう――鍛えてある男はやっぱ違うよ。ぼーっとしてるように見えて、いざとなったら凄いんだってば――。
「ん? ……あ、あの、何? 何か、俺の顔、へん?」
 思わずじーっと亮を見つめてしまったさつきに、彼は不思議そうな顔をした。
「う、ううん! 何でもない!」
 さつきはあわてて首を振り、ごまかそうとした。
 けれど、否定すればするほど、よけい気になってしまう。
 亮の大きくてゴツくて、そのわりになめらかに動く器用な手。ワイシャツの襟元から覗く首のライン、顎。食べ物を飲み込む時にわずかに動く、喉。そんなものにばかり目がいってしまう。あわてて目を逸らしても、気が付けばまた、さつきは亮の手元をじぃっと見つめてしまっているのだ。
 ――あの手。指先……やっぱり硬いのかな。さわったら、どんなカンジなんだろ。
 こんなこと思うの、ヘンかな。男の人の手が、なんか、なんか……エロいなんて。
「ただ……ちょっとさ」
 そしてさつきは、とうとう、つぶやいてしまった。
「ちょっとって、何だよ?」
「うん……。今日ね、学校でみんなが言ってたんだけど……。やっぱり亮って、凄いのかなって……」
「すごいって、何が?」
「エッチ」
 つるっ。亮の手から湯飲み茶碗が滑った。
「あ、もうやだなー、亮! お茶がこぼれるよー!」
「なっ、な、い、今、何て言った!?」
「だからぁ。同じクラスの友達が言うの。亮みたいに肉体労働で身体鍛えてる男は、普段はぼーっとしてても、ベッドん中じゃ全然違って、凄いんだって」
「な――な、な……っ」
 亮は口をぱくぱくさせるだけで、後は言葉にならない。
「ねえ、ほんとにそうなの? もしそうなら、一度試してみたいって、みんなが言ってるんだけど」
「ば、馬鹿なこと言うなッ!!」
 真っ赤になって、亮は怒鳴った。
「試すの何のって、俺はモノかッ!?」
「あ、あたしが言ったんじゃないもん。あたしはただ、みんなが言ってたことを……」
「たとえ自分の意見じゃなくても、言っていい事と悪い事があるだろう! 若い女の子が、男に面と向かって言う言葉か!」
「な……。なんだよ、亮ってば、じじくさい!」
 頭ごなしに叱りつける亮に、さつきもついムッとして、強く反発した。
 それは、こんなことを話題にしてしまったことへの照れ隠しでもあったのだが。
「このくらい、みんな平気で言ってるよ。みんな、自分でやってることだもん。もっとヤバいことだってしてるのに、口先だけいい子ぶったって、しょうがないじゃん!」
「や、やってるって、お前、まさか……!」
「あたしはしてないよ。出会い系もエンコーも。キモいし、初対面の男とエッチする気になんか、なんないもん。でも、クラスにはそういうこと平気でしてる子だっているし、みんなそれが当たり前だって思ってるもん!」
「当たり前なんかじゃない! そんなのが当たり前であってたまるか!! こういうのは、いい加減にしていいことじゃないんだぞ!! もっと大事な――大切にしなきゃいけないことなんだ!」
「なにそれ、意味わかんない! だいたい、なんで亮がそんな怒るの!? 誰にも迷惑かけてないじゃん。ちょっと話のネタふっただけなのに!」
 本当はさつきにだって、わかっている。こんなこと、ティーンの女の子が、同じ女の子の友達と興味本位でおしゃべりするならともかく、年上の男とふたりきりで詳しく話し合って良いような話題じゃない。
 でも、もう止まらない。自分で振った話題を自分でうち消すなんて、いかにもきわどい話についていけなくて逃げたのが見え見えだし、自分の言ったことからも逃げ出すようなだらしないヤツだと、亮に思われたくない。こうなったらもう、最後まで全部言っちゃうしかない。
「大事のなんのって、その考え自体すっげー古い! ありえない! だってあたしの身体だよ、あたしの好きに使って、なんでいけないの!?」
「ば――ッ、馬鹿言えッ!! 何考えてんだ、お前ッ!!」
 亮はばんっ!とテーブルに両手をつき、椅子を蹴倒して立ち上がった。さつきはびくっと全身をふるわせ、思わず飛び上がりそうになってしまった。
 そんなさつきめがけて、頭の真上からでかい声が降ってくる。
「自分を切り売りして、何が楽しい! そんなもん、グラムいくらの挽肉と変わらんだろうが! それでいいのか!? スーパーのブタ肉も同じ扱いされて、はした金もらって、それで満足なのか!? 自分で自分を大切にしなけりゃ、他人だって、誰も大切にしてくれないんだぞ!!」
 さつきは息を呑んだ。亮を見上げたまま、言葉も出てこない。
 それは、さつきが初めて見るような、真剣な亮の表情だった。
「そりゃ俺だって、結婚するまで処女でいろとか、そんな馬鹿なことは言わないが、それにしたって、だ。たとえば本当に好きな男ができた時、そいつに言えるか? あたしは昔、売春してましたって。どんなに隠したって、絶対バレるんだよ、こういうことは。男の方だって、そんな女とまともに付き合えるもんか。どうせ売春してた女なんだから、真面目に男の相手なんかするわけねえ、じゃあこっちも適当に遊んでやるかって思っちまうに決まってるだろう。そうなってから後悔したって遅いんだ! もう少しちゃんと考えてみろ!!」
                   ☆
「なーにぃ、その男。アッタマおっかしーんじゃないのー!?」
 翌日、学校で亮の言葉をそのままさつきが伝えると――さすがにブタ挽肉と一緒にされたことは黙っていたが――クラスメイトの女の子達はみな、同じように白けた顔をした。
「カレシにバレるわけないじゃんねえ。あたしら、ンなバカじゃねーしぃ」
「何考えてんだって、なーんにも考えてないに決まってんじゃん。なんか考えてたら、ウリなんかしないって。バッカみたい」
 つい昨日、興味があるの試してみたいのと言った同じ口で、今度は冷淡に亮を嘲笑う。
 けれどさつきは、そんな言葉にはけして頷かなかった。
 さつきは、亮をかっこ悪いとは思わない。むしろ、真剣にさつきを叱ってくれた亮を、けっこうかっこいいんじゃないかと思うのだ。
 悪いことは悪いと、ちゃんと叱ってもらえたことが逆にうれしい。心配してもらってるんだ、大事に思われてるんだと、感じることができる。
 亮は、ママ以外に初めてさつきにそのことを伝えてくれた人だ。
 誰かに大切に思われてるなら、自分でも自分自身を大切にしなくちゃと、思えてくる。亮もきっと、それを言いたかったに違いない。
 そう。これはいい加減にしちゃあ、いけないこと。大切に考えなくちゃいけないこと。
 ――真面目で、ちょっと頭カタいけどさ。でもそれもいいんじゃない? 正義の味方みたいでさ。
 もうとっくに亮やさつきに興味をなくしたクラスメイト達が、勝手なことをさえずっているのをぼんやり聞き流しながら、さつきは知らず知らずのうちに小さく微笑んでいた。


(LOVELOVEシーンの出だし)
 会計をすませてコンビニを出ると、亮はひどく荒っぽい運転で車を走らせた。
 車をガレージに入れる時も、どこか車体を擦ったらしく、がりっと嫌な音がした。
 コンビニを出た時よりも、さらに風雨が激しくなっているようだ。
 車から降りる時も、玄関の鍵を開け、中に入る時も、亮はさつきの手を離そうとはしなかった。
 言葉もない。さつきも、声をあげることすらできない。
 そのまま力任せに引きずるようにさつきを連れ、亮は二階へ上がった。
 そしてさつきはまるで荷物のように、亮の部屋のベッドへ放り出された。
「きゃっ!?」
 さつきが身を起こすひまもなく、亮が覆い被さってくる。
 長い四肢がさつきの身体にからみついた。肩を押さえつけられ、両膝のあいだに亮の太腿が割り込む。もう足を閉じることもできない。
 ジーンズのジッパーが引き下ろされ、その中に亮の手が入り込もうとした。
「あ……や、やだっ!」
 さつきはかろうじて動く左手で、亮の手を掴んだ。どうにかして払いのけようと、必死で手首に爪をたてる。
 亮が小さく舌打ちをした。
「うるさい手だ」
 しゅっと、衣擦れの音がした。亮の右手がようやくジーンズから離れたと思ったのも束の間、その手は器用に自分のネクタイを外し、さつきの手首に巻き付けた。
「やだ、嫌だっ! ばかあっ!!」
 暴れようとしても、無駄だった。さつきの両手は簡単に括り上げられてしまう。
 亮は左腕だけでさつきの両手を軽々と押さえつけ、ジーンズを剥ぎ取りにかかる。
 ヒップラインを申しわけ程度に覆っていただけのカットオフパンツが引きずり下ろされ、小さなランジェリーに強引な指がかかった。
 亮の指が侵入してくる。
「あ、あ――やだっ! いやあっ!!」
 どんなにもがいても、亮の腕は外れない。
「本当に嫌なのか? もう濡れ始めてるぞ」
 意地の悪い声で、亮がささやいた。
「う、嘘! そんなことないもんっ!」
「嘘じゃないさ。ほら……」
 コットンのショーツが腿のあたりまで引き下ろされた。長い指が花びらの奥に滑り込み、ゆっくりと動いた。指先で撫で上げる肌は、少しずつぬめりを帯び始めている。
 亮は、それまでの荒っぽさとはうってかわって、さつきの秘密を丹念に丹念に指先で愛していった。やがてとろりとこぼれ出した蜜をすくい取り、花園全体に塗り広げるように、優しげにうごめく。


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