ふざけて彼をどつくことも、お返しに薫平が未沙を小突くことも、無理なのだ。
 そんなあたりまえのことが、できない。それが無性に淋しかった。
 食事についても、そうだ。毎日、してあたりまえだった日常の習慣が、もう二度とできない。そう思うと、胸の底からじわじわと、熱くて湿っぽいなにかが這いのぼってくる。じわあっと両眼が熱くなり、思わず涙がにじみそうになった。
「どうかしたのか?」
 薫平が未沙の顔をのぞき込んだ。
「ど、どうもしてないよ!」
 未沙はあわてて顔をあげた。うっかり泣きそうになった目元をごまかすように、ぐいっと乱暴にこする。
「なに、おまえ――泣いてたんか?」
「な、泣くわけないじゃん!」
 図星をさされ、未沙はむきになって言い返した。
「なに言ってんの、ばっかじゃねーの!? ンなわけねーじゃん!!」
「だってさ」
 薫平は未沙を見つめて、静かに笑った。
 見ているだけで、あったかく包み込まれるような、優しい笑い方。
 今までこんな笑い方をする人は、逢ったことがなかった。
「おまえ、もしかして、後悔してんじゃねえかと思ってさ」
「え……」
 今のこの状態を、自分の人生を自分で中途半端に終わらせてしまったことを、後悔してはいないのか。
 それは未沙が、怖くてどうしても自分自身に問いかけられずにいた質問だった。
 薫平の表情は変わらなかった。責めるでもなく、急かすでもない。未沙の返事を待ってすらいないのかもしれない。
 両肘を膝の上に載せ、少し前屈みになって未沙を見つめる。ただじっと、未沙のありのままを受け入れるように、静かに微笑んでいる。
 未沙は目を伏せた。
 薫平のまなざしを受け止める自信が、なかった。
「後悔なんか……してないよ」
 その言葉はたぶん、嘘ではない。
 自分にはほかに方法がなかったのだと、今でも思っている。
 家族や友人や、どんなに大勢の人間にかこまれていても、淋しくて、淋しくて。
 誰一人、その淋しさを癒してくれなかった。理解しようとすら、してくれなかった。
「おまえ、そーゆー自分の気持ちとか、ちゃんと誰かに説明したのかよ」
「え――?」
 未沙はぱっと顔をあげた。
 ……今、あたし、なんか言った?
 言っていたのかもしれない。胸の中に湧きあがる思いを、自分でも知らないうちに声に出してしまっていたのかも。昔から自分は、けっこう独り言の多い子だったし。
「だ、誰かにって……言わないよ、誰にも。あたりまえじゃん。言ったって、誰にもわかってもらえないもん。ムダだもん」
 人間なんて、そんなもの。誰も他人のことなんて、本当に理解しようとはしないんだから。
「そっか。おまえ、ちゃんとわかってんじゃん」
 独り言のように、薫平がつぶやいた。
「そんなもんだってちゃんとわかってんのに、まだ腹立つんだ? なんか矛盾してねえ?」
「な……なによ。矛盾って、どういう意味よ!?」
「だっておまえ、人間はみんな他人のことなんか理解できないって、ちゃんとわかってんだろ? 人間なんてそーゆーもんなんだって、自分の口でちゃんと言ってんのに、他人が自分のことわかってくれねえってだだこねんのって、なんかおかしくねえ?」
「なんでそれがおかしいの!? あたしのなにが矛盾してんのよ!」
 薫平がまっすぐに、未沙を見た。
 その眼が、ひどく怖かった。その視線から逃げ出したいと、思った。
「なんでおまえ、そんなに人にわかってもらいたがるんだ。おまえ、誰かに自分のことをずーっと見ててもらわねえと、そんなに不安なのか? 誰も他人のことなんか理解できねえって、自分でちゃんと言ってんのに」
「い、いいかげんなことばっか、言わないでよッ!!」
 未沙はシートから立ち上がり、怒鳴った。
 どうせ自分は幽霊だ、どんなに声を張り上げようと、周囲の人間たちにはまったく聞こえない。
 いや、万が一聞かれてしまっても、かまうものか。
「あ、あんたなんかに、なにがわかんだよッ! あたしがどんなに、どんなに淋しくて、つらくて――!!」
 親の無理解。うわべだけの友人関係。うそで塗り固めた自分自身の笑顔、言葉、生活。そんなものに、未沙がどれだけ傷つけられ、追いつめられてきたか。
「わかんねえよ」
 薫平はぽつりと言った。
「おれはおまえじゃねえもん。おまえの気持ちなんか、わかるわけねえだろ」
「だったらなんで――!!」
「じゃあおまえは、おれの気持ちがわかるのか」
「わ……、わ、わかんないよッ!」
 未沙は叫んだ。
 まるで小さい子供がかんしゃくを起こして泣きわめいているみたいな、そんなきんきん響く、耳に痛い声。
 どうしてそんな声になってしまったのか、自分でもわからないけれど。
「わかりたくもないよ、あんたのことなんか!!」
 ――いや、わかっているのかもしれない。本当は。
「あんたなんてどうせ、いつもへらへらして、なんも考えてなくて、そのくせエラそーなことばっか言って……。人に話すことだっていっぱいあるくせに、こんな……やりたいこととか、行きたい場所
(とこ)とか、見たいものとか、いっぱいあるくせに、なんで、なんでわざわざ、あたしのことばっかしゃべろうとすんのよ……!!」
 だんだん、声がかすれてくる。
「そんなヤツのことなんか、あたし……あたし――!」
 ……うらやましかった。
 薫平が、いろんなあこがれや期待を語れる薫平が、うらやましくて、うらやましくて。
 ……だってあたしには、なんにもなかった。
 朝、眼が覚めればいつだって、今日はなにをしたらいいんだろう、明日はなにをして過ごせばいいんだろう、それしか考えられなかった。
 だから、朝が来るのが怖かった。眼が覚めることは、ひどく追いつめられることでしかなかった。
 こんな自分を誰がいったい理解してくれるだろう。こんな空っぽで、自分のことすら満足に語れない未沙を。
 ……わかってたんだよ、ずっと。
 誰もあたしをわかってくれない、その理由
(わけ)
 だってあたし、なんにもないもん。まるで空っぽの冷蔵庫みたい。
 その空っぽの空間を見つめて、なにか魅力を見つけてね、なんて望んでみたって、そんなのは無理に決まっている。
 唯那とのメールのやりとりがあんなに楽しくて、夢中になれた理由も、同じ。
 だって唯那のメールには、いつも未沙がいちばん聞きたかった言葉が並んでいたから。大丈夫、梨々ちゃんはかわいいよ。こんなに優しくて、すてきな女の子だよ――。
 自分で自分の魅力がまるで見つけられないから、そうやって誰かに認めてもらって、誉めてもらわなければ、怖くて怖くてどうしようもなかった。
 たとえそれが、キーボードの上だけで作られたうそっぱちであっても。未沙は本当だと信じていた。唯那が本当に、自分のことを大切に思ってくれているのだ、と。唯那が書いてくれたその言葉に、必死にすがりついていたのだ。
 唯那の文面にあらわれた「梨々」の姿こそが、本当の自分なのだと懸命に信じようとして。
 そして自分も同じように、唯那が欲しがっている言葉をメールに書き並べてあげた。自分を男だと言い張る唯那のうそも、信じているふりをしてあげた。そうやってお互いの淋しさを、自分で自分が信じられない苦しさを、慰めあっていた。
 わかっていたんだ。
 未沙はよろよろと、シートに腰を下ろした。
 こんな自分を、好きになってくれる人なんか、いるわけない。
 だって、未沙自身ですら、未沙が大嫌いなのに。
 好きになれる理由なんか、ただのひとつだって見つからない。
 立っていることができなかった。
 かかとをシートの端に載せ、体育座りみたいに膝を立てる。その膝に、ぎゅうっとおでこを押しつける。
 押し殺した泣き声が、もれた。
「う、う……うぇ、え……っく、う――うぅ……っ」
 ……キライだもん。あたし、あたしなんか大きらいだもん。
 ……自分を好きでいられないから、こんなにつらくて、淋しいんだもん。
 泣いてもいいよ、と、声が聞こえたような気がした。
 薫平がそう言ってくれたような気が、した。
 ……いいの? ほんとにいいの、薫平?
 ……だってこうして泣いてたって、なんの解決にもならないよ。
 ……みんな言うじゃん。もっとしっかりしろって。泣いてたってどうしようもない、甘えてるんじゃないって。泣いてるひまがあったら、もっと社会の役に立つことをしろって。
 ……でも。
 薫平はなにも言わなかった。
 ただ、未沙のそばにいてくれた。 隣に座る薫平から、そっと優しい体温がつたわってくる。
 声がしなくても、顔をあげてその姿を見なくても、薫平がそこにいると、わかる。
 ……どうしてあたしを許してくれるの。薫平はどうして、あたしを責めないの。
 こんなことぐらいで泣いてるなんて、なんて情けないやつだ。甘ったれるな、世の中には、もっとつらい苦しい思いをしている人が大勢いるのに。まわりの人はみんな、そういう眼をして未沙を睨む。責める。未沙を許してくれない。――未沙自身でさえ、こんな弱虫の自分を許せずにいるのに。
 薫平はただじっと、泣いている未沙のそばにいてくれる。
 あいかわらず、薫平がなにを考えているかなんて、未沙にはわからない。
 それでも。
 ……おねがい、薫平。そこにいてよ。あたしのそばにいてよ。
 涙にかき消されて言葉にならない未沙の想いに、薫平は黙って答えてくれた。
 ……だけど。
 薫平にさわれない。
 薫平の手は、未沙の身体を突き抜けてしまう。その体温を、肌の感触を、未沙は感じとることができない。
 そのことが、初めて哀しく思えた。
 ……さわりたい。薫平の手にさわりたい。
 そうすれば、ふたりでいることの意味もより深くなるような気がした。
 ひとりで泣かずにすんだこと、ふたりでいることの、意味。薫平の体温が、それを教えてくれるような気がした。
 どうしてそんなことを思うのか、わからないけれど。
 人間って、そんなものかもしれない。
 ただ泣いて泣いて、ほかにどうしようもない時は、わけもなく誰かの肌に触れたいと思うのかもしれない。言葉より、視覚より、もっと原始的で身体中で感じ取れるなにかが欲しくて。
 もしかしたら薫平も、同じようなことを考えているだろうか。
 未沙を泣きやませるために、頭を撫でてやりたい。肩に手を置いて、そばにいるよと伝えてやりたい、と。
 けれどやはり、薫平がなにを考えているのかは、未沙にはわからなかった。
 薫平はただじっと、未沙のそばにいてくれるだけだった。
 この世界に、今、たったふたりだけのような気がした。
 そうやって、どのくらい泣いていただろう。
 やがて車内放送が、かろやかな電子のメロディとともに、まもなく越後湯沢に到着することを告げた。
「……すん――」
 未沙は泣きはらした顔を、もそっとあげた。
 はなをすすって、汚れたほほを手でこする。
 いつの間にか、涙は止まっていた。
 人間は、そう何時間もぶっ続けに泣き続ける、ということはできないらしい。
「顔、洗ってくる」
 未沙は立ち上がった。
 さっきより少しだけ、身体が軽くなったような気がした。
 こんなに手放しで泣いたのは、本当にひさしぶりだ。涙といっしょに、身体の奥底にわだかまっていたいろんなものが、けっこういっぱい流れ出してしまったみたいだ。
 問題がなにか解決したわけじゃない。でも、背中のあたりがふんわり、らくになっている。
 今はそれだけで充分だと、思えた。
「トイレ、あっち」
 薫平はぶっきらぼうに、前方のドアを指さした。
 未沙の顔を見ようとはしない。でも、それが未沙にとってはありがたかった。
「急げよ。もうすぐ、乗り換えだから」
「うん。行ってくる」
 誰かにいじめられたわけでもなく、ほとんどまともな理由もないのに、ただ子供みたいにキレて泣いてしまったのは、やっぱりちょっと恥ずかしい。照れ隠しに、未沙はがっつんがっつんブーツのかかとを鳴らして、歩き出した。
 こんな時はつくづく、幽霊で良かったと思う。真っ赤に泣きはらしたみっともない顔を、誰にも見られずにすむ。
 ……でも、なんかちょっと、気持ちいいかも。
 手放しで自分の感情を爆発させて、泣きたいだけ、泣く。そういうのって、やっぱり気持ちいい。
 今までだって、一人で悔し泣きしたことは何度もあった。誰にもわかってもらえない、回りの人間もこの世界も、みんな大っキライ、と。誰にも見つからないよう、自分の部屋にこもって。でも、そんなふうに泣くと、いつだって最後はひどく頭痛がしてきた。
 一人で泣くんじゃないから、誰かにそばにいてもらえたから。
 だからだろうか。妙にすっきりした気分になれたのは。
 ゆうべも、そうだった。誰にでもできる簡単なことを、自分はずうっと忘れていたような気がする。
 感情のままに泣くことも、一人じゃ淋しいから誰かと一緒に眠ることも。カッコ悪いけど、でもとても簡単なこと。
 薫平はいつも、なにも言わなかった。黙ってそのカッコ悪さを許してくれた。
 ……ありがとって、言うべきかな。
 そう思うけれど、まだ、どんな顔をしてそれを言えばいいのか、わからない。
 ……まず、顔洗ってきてから、考えようっと。
 たまたまデッキ部分へ出ようとした乗客のうしろにくっついて、未沙は開いた自動ドアを通り抜けた。
 そのまま洗面所に入ろうとして、ふと思い出す。
「あ……、そっか。あたし、鏡に映んないんだっけ」
 鏡が使えないのでは、髪も化粧も直せない。
 でも、雑誌やテレビの怪談モノじゃ、「鏡に映った幽霊」というのはわりにポピュラーなネタだ。鏡に映る不気味な姿にあわててふりかえると、そこには誰もいなかった、というパターンだ。
「よし!」
 未沙はひとつ大きく息を吸い込み、自分に言い聞かせた。
「あたしの姿は、鏡に映る。たとえ幽霊でも、ちゃんと鏡に映る――」
 眼を閉じたまま洗面所に入り、また一呼吸。
 そして思いきって、眼を開く。
 ぴかぴかに磨かれた大きな鏡に、未沙の姿が映っていた。
 やはり半透明だ。身体の向こうに、車内の様子が透けて見える。
 それでも、泣いて崩れまくりのメイクも、ぼさぼさになってしまった髪も、はっきりと見てとれる。これならメイク直しもできそうだ。
「あ。でも、メイク道具はどうすりゃいいんだろ?」
 バッグに入れて、いつも持ち歩いていたはずの化粧ポーチは――。
「そっか。あのワゴン車に置いてきちゃったんだ」
 みんなで練炭自殺した、あの車の中に。
 あの山麓からは、バイクと新幹線での移動距離を考えると、そうとう遠ざかってしまっている。
 距離だけではなく、時間的にもかなりへだたりを感じる。あのレンタカーに座っていたのが、もうずっと昔のことのようだ。考えれば、まだたった一日しか経っていなのに。
「ま、いっか」
 細かいことはあとで考えることにして、まずは冷たい水で顔を洗おう。
 蛇口にもさわれる、この手で水もくめる。幽霊と水音ってのは、昔から切っても切れないワンセットみたいに言われてるし。
 そう、自分に強く言い聞かせると、そのとおり蛇口をひねることができた。勢い良く流れ出す水道水は、ちょっと消毒くさいにおいがするけれど、冷たくて気持ちがいい。
 列車の揺れにも耐えられるよう、しっかり足を踏ん張って、未沙は冷たい水で顔を洗った。
「ぴゃーっ! 冷たーい!」
 泣きはらしてぼうっと熱がjこもっていた目元に、冷水がとても心地よい。
 思いきり水をはねあげて、顔を洗う。
「えっと、タオル、ハンカチ――」
 もちろん、そんなものもない。洗顔のあとに使うローションも、乳液も。
「どうしよう。肌荒れしそう」
 これも意志の力でなんとかなるかな。
 うん、きっと、メイクも「ばっちりメイク決めた自分」を意識すれば、なんとかなるだろう。
 びしょ濡れの犬みたいに、ぶんぶんっと勢い良く首を振って、長い髪についた水滴をはねとばす。
「やだ、きったないことしないでよ」
 いきなり、背後で声がした。
「だらしない。やめてよね! こっちまで水が飛んだじゃない」
 ひどくいらついた、刺々しい声。
 その声に、未沙は聞き覚えがあった。
 顔をあげ、正面の鏡を覗き込む。そこに映った、自分の後ろの光景を。
 真っ黒なショートボブに濃いめのアイメイク。ちょっとあごの尖った小さな白い面差し。黒でまとめたファッションは、ラメやメタルパーツがきらきら光っている。
 そしてその全身は、未沙と同じように半分透けていた。
「ゆ……いな――」
 パールの入ったダークレッドのルージュに彩られた唇を、唯那はゆっくりと開いた。
「こんなとこで、なにしてんの、あんた」





                             ACT 4  海へ

 背中を、氷の塊が一気にすべり落ちた。
「なんであんたが、ここにいるの……」
 茫然と、未沙はつぶやいた。
 死んだ瞬間から今の今まで、唯那の存在なんて全然感じていなかった。ほとんど思い出すことさえなかったのだ。
 未沙を見据える唯那の眼は、黒い不透明なガラス玉みたいだ。なんの感情もないその眼を見たとたん、足の先から冷たく凍えて、かたかたとふるえが停まらなくなる。
 ……な、なんで――?
 未沙は懸命に唇を噛んだ。そうしなければ、がちがちと奥歯が鳴りだしてしまいそうだった。
 怖い。この、身体の芯から凍りそうな寒さは、恐怖だ。不安や淋しさが息苦しさや身体の重さといった身体的な苦痛として感じられたように、恐怖が見も凍る寒さになって、未沙の全身を襲っているのだ。
 怖い――でも、なぜ?
 唯那もあのワゴン車で死んだのだろう。死んで幽霊になったのなら、時間も空間も関係なく、いきなり未沙の後ろに立っていたのだって、納得がいく。未沙自身、なんの前触れもなく薫平の隣にあらわれたりもしたのだし。――しかも、眠ったままで。
 そう。唯那も未沙も、今は同じ幽霊なのに。
 幽霊が幽霊を怖がるなんて。
  唯那が一歩、近づいてきた。列車の揺れなどまるで感じていないかのような、しっかりした足取りだ。
「どこ行くつもりだって、訊いてんの。自分だけ、ちゃっかりこんなんに乗っちゃってさ」
 唯那はじろりと、新幹線の車内を見回した。
「ど、どこへって、あたし、別に――」
「ねえ。狡
(ずる)くない?」
 唯那がさらに一歩、未沙に近づいた。少し身をかがめるようにして、下から斜めに未沙をにらみ据える。やっぱりその眼が、ぞっとするほど怖かった。
「あたしたち、一緒に逝こうって約束したよね? なのに、あんた一人だけ勝手に逃げ出すなんて、ずるくない?」









                               
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