駿はすがりつくように依里を抱いた。それはまるで、迷子になった小さな子供がやっと見つけた母親に夢中でしがみついているかのようだった。
「駿……」
 依里は、何も訊ねなかった。
 ただ、なだめるように何度も駿の名前を呼び、まだ湿り気の残る黒髪を指で撫でつける。
 彼の凍えた指先を、自分の身体で温める。
 依里にできるのは、それしかなかった。
 やがて駿が寝入ってしまっても、依里は小さな子供に添い寝するように、彼の頭を胸元に抱きかかえていた。
 依里のシングルベッドで、背の高い駿はひどく窮屈そうだ。二人ぴったりと寄り添っていなければ、ベッドから転げ落ちてしまうだろう。
 けれどその寝顔はどこか幼く、淋しそうだ。
 ――夢の中でも泣いてるの、駿……?
 依里は身動きひとつせず、そっと駿を抱きしめていた。
 駿が目を覚ましたのは明け方四時過ぎだった。夏至直後のこの時期、窓の外はもう明るくなり始めていた。
「ごめん」
 泣き疲れた子供みたいにまぶたをこすりながら、駿は身体を起こした。
「迷惑かけて……ほんと、ごめん」
 ううん、と、依里は首を横に振った。
「なにがあったって、訊かないの?」
「駿くんが話したくなったらで、いいよ」
 シーツの上に膝を抱えて座り、うつむいたまま顔も上げられない駿を、そっと抱き寄せる。
 依里の肩にもたれかかった身体は、背は高いけれど、まだ肩も胸元も肉付きは薄く、うなだれた首筋は細く痛々しい。駿の中にある幼さと不安と孤独とが、そこに全部にじみ出しているようだった。
 いとおしかった。
 彼を、守りたい。たとえば母鳥が自分の翼で雛をかばい、いつくしむみたいに。
 駿が泣きたいだけ泣けるように、ずっと隠していてあげたい。誰の目にも触れさせず、彼の涙が乾くのを待っていてあげたい。
 ……そんなことを思ったのは、生まれて初めてだった。
 ひとりぽっちで苦しみを噛みしめるには、この少年はまだこんなにも脆く、無力だ。ふるえるこの肩に、生きる哀しみは重すぎる。
 そんな者を、どうして一人きりにしておけるだろう。
 あなたになにかしてあげたい。――どんなことでも、してあげる。
 身体の奥底から、不思議な感情が泉のように湧きだしてくる。
 どうして駿にだけ、こんな想いを抱くのだろう。
 いいえ――今まで自分は、誰かになにかをしてあげたいと、心底願ったことがあっただろうか。愛する者に何の見返りも求めず、ただ彼を癒したい、いつくしみたい、どうにかして彼を泣きやませたいと。
 今までの男たちには、そんな想いは必要なかった。彼らが依里に求めたのは、一時だけ日常を忘れるための冒険、その道連れだ。
 彼らが求める冒険は、すでに彼らの中に確固たるイメージとして存在していた。依里はそのイメージに合わせてやっていただけに過ぎない。さながら、文字にならないシナリオを読みとり、そのとおりに演技する女優みたいに。
 いや、依里が彼ら個々のイメージに少々合わなかったとしても、彼らは自分で創造力を働かせ、依里の足りない部分を補い、自分の理想の図式に当てはめていたのだろう。
 依里はなにもしていない。男たちもまた、依里に何の努力も献身も望んではいなかった。彼らはただ、手を伸ばせばすぐ届く場所に若く美しい女が立っていてくれればそれで良かったのだ。
 そして依里も、彼らに一時だけの安らぎ、孤独を忘れて眠るための抱擁と余韻以外のものを、求めたことはなかった。
 それが――自分の恋愛なのだと思っていた。
 けれど、違う。
 今、駿を抱きしめるこの手が離せない。
 こうして抱き合っていたところで、何も得られないのはわかっている。依里は自分の平穏な日常を引き替えにする思いで、駿をこの部屋に迎え入れた。なのに駿の涙は、依里をも不安にさせるばかりだった。
 でも、だからこそ、駿を離してはいけないと思う。たとえ明日なにを失っても、今は駿を抱きしめていたい。
 ……どうしてこんなに、きみが好きになっちゃったんだろう。
 駿はただ、依里の目の前に現れただけだ。
 何も飾らない、偽らないその目が、依里の真実をあばいた。いや、彼の真っ直ぐな目を鏡にして、依里は自分の本当の姿をあらためて見つめ直したのかもしれない。
 あるがままの駿の前では、依里もただ、あるがままの自分でいるしかなかった。
 だから……だからこんなにも、きみが好きなのかな。
 他の感情が一切入り込む余地もなく。ただ駿への想いだけが、依里の中を満たしていく。
 今は何も訊かない。ただ駿が泣きたいのなら、泣かせてあげる。抱きしめられて眠りたいだけなら、いつまでだって抱いていてあげる。
「もう――明るいね」
 やがて、駿がぽつりとつぶやいた。
 窓の外は、完全に夜が明けている。だが空はどんよりと曇り、さわやかな朝とは言い難い。
 駿は裸のままベッドを降りた。
 脱ぎ散らかした衣服をさぐり、ジーンズのポケットから携帯電話を出す。
 ちらっと見えたメタルシルバーの電話は、着信を知らせる小さなランプが忙しなく点滅していた。マナーモードに設定されているのか、着メロは聞こえなかったが。
 けれど駿は、一旦は電話を開きかけたが、メールの確認もなにもせず、すぐに閉じてしまった。
「……いいの?」
「うん……。誰からだか、わかってっし」
 たぶん、女の子からだろう。依里はそう思った。
 駿の手の中で、携帯電話が鈍い機械音をたて、振動した。またメールが届いたらしい。
 ふつうだったらみんな眠っている時間だ。こんな時間にメールしてくるなんて、それは思わず早起きしてしまったからなどではないはずだ。一晩中眠れなくて、どうしてもメールを書かずにいられなかったのだろう。眠れない理由も、駿だったに違いない。
 そしておそらく駿がここへ来た理由も、その少女が関係しているに違いない。
 どんな少女だろう。つい、考えてしまう。きれいな子だろうか、駿より年下だろうか。どんなふうに笑い、どんなふうに駿に甘えるのだろう。
 そして駿も、その少女と一緒にいる時はきっと、依里といる時とはまったく違う表情を見せるのだろうか。少なくとも彼女と一緒にいる時は、依里とともに過ごす時間のように周囲の目を気にしてこそこそ隠れるようなことなど、せずにすんでいるのだろう。
 胸の中に、ひどく苦い思いが溜まっていく。
 依里はうんざりしてひとつため息をつき、寝乱れた髪をかきあげた。
 自分は今、名前も知らない、顔も見たことがない少女に、嫉妬している。
 ――いやだ、みっともない。
 今まで付き合ってきた男たちはみな、結婚していた。駿の父だって、よき家庭人だ。中には妻があり、依里とも交際し、さらに別の女性とも関係を持っていた男までいる。
 けれどそんな妻たちに、依里は嫉妬を感じたことは一度もなかった。依里と一緒にいるあいだは、男は依里だけを見つめ、依里のことだけを考えていてくれる。それだけで満足できたのだ。
 なのに駿に対してだけは、自分の想いが上手くコントロールできない。
 本当は、駿にメールしてくる少女のことを根ほり葉ほり問いただしてやりたい。けれどそんなことをしたら、駿の傷をさらに惨く広げてしまうだろう。
 いいや、そんなのは恰好つけた言い訳だ。本当はただ、醜い嫉妬を剥き出しにして、駿に幻滅されたくないだけなのだ。
 ――ほんとにみっともないな、私。駿に嫌われたくなくて、こんなに必死になってる。まるで中学生のがきみたい……。
「もう少し寝てたほうがいいよ」
 窓の外をぼんやり眺めていた駿を、ベッドへ招く。
「中途半端に目が覚めちゃった時って、頭が全然働かないのよね。そんな時はなに考えたって、無駄。ろくな考え浮かばないわよ。それよりはもう一回ちゃんと眠って、頭の中すっきりさせたほうがいいって」
「うん……」
 言われるままに、駿はもう一度ベッドに横になった。
 けれど、やはり寝付けないらしい。寝返りをうって、依里に背を向ける。
 そして、ぼそぼそと駿は言った。
「依里さん……もう、わかってんだよね。さっきからずっと俺の携帯にメールしてたヤツ……、女でさ」
 依里は黙って、駿の背中の横に座った。駿の髪をそっと撫で、続きを無言でうながす。
 正直な気持ちを言えば、駿の口から他の女の話など、内容がどうであれ、聞きたくなかった。
 けれど駿が話したいと思っているのなら、聞いてあげるしかない。
 罪の意識をずっと胸の中に抱え込んでいるのは、とてもつらい。誰かに全部打ち明けてしまいたくもなるだろう。話したところで、解決につながるわけではない。それでも黙っていられないのだ。
「俺……そいつに、すげーひどいこと……言っちゃったんだ」
 駿は起きあがり、膝を抱えて座った。依里はその肩にそっと寄り添った。
「ねえ依里さん。……俺とエッチしてて、気持ちいい?」
「えっ!?」
 いきなりの不躾な質問に、依里は一瞬、まともな言葉も出せなかった。
「なっ、な、なによ、いきなり……」
「嘘、言わないで。本当のこと教えて。俺とセックスしてて、依里さんはちゃんと気持ちよくなれてる?」
 問いかける駿の顔は、ひどく真剣だった。ゆうべ駅で見た、あのすがりつくような目をして、依里を見つめている。
「気持ちいいっていうか……、楽しいよ」
 依里も、正直に自分の気持ちを答えた。
 駿が何を考えてこんなことを言い出したのか、よくわからない。けれどごまかしたり、照れて嘘をついたりしたら、きっと駿をさらに酷く傷つけてしまうだろう。
「ほんとに? 無理してない? 痛いの我慢してるとか――」
「そんなことしてないよ。そんな無理するくらいなら、もう二度ときみとセックスしたいなんて思わない」
 依里は、安心させるように駿へほほえみかけた。彼の髪をそっと手で梳き、おでことおでこをこつんと寄せる。
「駿くんとキスしたり、セックスするのは、楽しいわ。それだけじゃない。こうして駿くんと一緒にいるのが、とても楽しいの」
 間近で駿の黒い瞳を覗き込む。
「駿くんに逢いたいって思うのは、セックスだけが目的じゃないわ。もちろん、そういうことも恋愛の大きなファクターだけど、でもそれだけがすべてってわけじゃない。ほかのこと――おしゃべりしたり、手をつないだり、そういうことがとても楽しいから、キスもセックスも楽しくて、すごく幸せだって感じられるんだと思う」
「うん……」
 駿は曖昧な返事をするだけだ。依里の言葉は、どこまで彼に届いているのだろう。
「幸せ……か」
 ぽつりと、独り言みたいに駿はつぶやいた。
「あいつ――ほんとは俺とセックスすんの、すげえ嫌がってんだよ。嫌がるって言うか……怖がってんだ。いつも……何回やっても。身体とかガチガチで、真っ青な顔して――。だから俺、つい言っちまったんだ。俺とやんのが嫌なら、はっきり言えって。……感じてもいねえのに、イッたふりなんかすんなって……」
 その言葉は、無関係の依里の胸をも惨く抉るようだった。
 駿はがくりとうなだれ、自分の膝に額をおしあてる。それきり顔をあげることもできないようだった。
「駿くん――」
 依里はそっと駿の肩を抱き寄せた。
「あんまり自分ばっかり責めること、ないよ」
 傷ついたのは、その少女だけではない。
 彼女の嘘がどれほど駿を傷つけていたか、少女は気がついているだろうか。
 駿は駿なりに精一杯、彼女を慈しんでいたはずだ。だがその思いやりは彼女にはまったく届いておらず、それどころか彼女は嘘をついてそれを隠していたわけだ。まるで駿の無力を哀れむみたいに。そんなむごい嘘に、駿が気づかないはずは、そして傷つかないはずはない。
 けれど駿は、うつむいたまま小さく首を横に振った。
「だって俺……わかってんだ。なんであいつがそんなんなのか――。なのに……! 俺、サイテーだ……!!」
「駿くん……」
 依里は、うなだれた駿の髪に、そっと自分のほほをおしあてた。
「そっか。だからきみ、私に会おうとしたんだね」
 顔をあげようとしない駿が、ぴくっと肩をふるわせた。依里の言葉に思い当たることがあったのだろう。
「その彼女と、ここんとこしばらく上手くいってなかったのかな。だから、なんか変わったことしてみたくて、お父さんの携帯盗み見して、私と――お父さんの愛人と対決なんかしてみようって、思いついたんじゃない? そういうの、TVドラマみたいでおもしろそうだもんね」
「ど……どうしてわかるの、依里さん……」
 ようやく駿が顔をあげた。小さい子供みたいに目を丸くして、依里を見つめる。
「だって、みんなそうだもん」
 依里はなだめるような笑顔で言った。
「誰だってそうよ。どうしても上手くいかないことがあったら、みんなすぐ逃げちゃうの。全然関係ないことやり始めて、一時だけでも悩みの種を忘れようとするのよ。私だってそう。新しい恋がしたいなって思う時は、たいがい仕事のストレスが溜まってるか、家族とケンカした時よ」
「でも……! でも、だって俺――」
 駿はまだ納得できないのか、ぐしゃっと髪をかきむしり、苦しそうに眉を寄せる。
「俺……依里さんにもひでえことしてる。あいつだけじゃなく、依里さんにまで――」
「駿くん」
 駿の言葉を、依里は強引にさえぎった。またうつむいてしまいそうになるほほに両手を添えて、くいっと上向かせる。
「きみ、自分を最低だって言ったよね。じゃあ、もっと最低なこと教えてあげる」
「え……?」
「私ね、嬉しいのよ。駿くんがこうして傷ついて、泣いて、私のところへ逃げてきてくれたこと、すごく嬉しいって思ってる。だってそんなことでもなければ、私、駿くんとは逢えなかったんだもの。駿くんが彼女とケンカして、泣いてるのが、私は嬉しいのよ」
「依里さん……」
「ね。私って、最低でしょ」
 互いの息が触れあうほど近くに顔を寄せて、依里は微笑んだ。
「もしもきみが幸せで元気いっぱいだったら、私のところへなんか来てくれないよね。彼女と毎日楽しく過ごしてるはずだよね。駿くんがぼろぼろに傷ついてるから、私はきみをこうして慰めて、抱いていられるの。そのことを嬉しいって思う気持ち、――自分でも止められないの」
 漆黒の瞳をすぐそばで、真っ直ぐに見つめる。
 駿ももう目を背けなかった。
「ひどい女でしょ。でも、これが本当の私の気持ち。きみがこんなに傷ついて、苦しんでるのに、私はきみが私のところへ逃げ込んできてくれたことだけを、喜んでるのよ」
 ううん、と、駿はかすかに首を横に振った。
「依里さんは、優しいよ」
「ずるいだけかもよ。きみを騙してるだけかもしれない」
「そんでも……いいんだ」
 駿がこつんと額をもたせかけてくる。その重みを、依里は全身で心地よく受け止めた。
 駿の呼吸が落ち着いている。こわばっていた全身から力が抜け、少しずつ依里によりかかってくる。
 ――そうよ、甘えていいんだよ。
 胸の奥で、依里はそっとつぶやく。
 駿は真っ直ぐすぎる。人を好きになることにも、傷つくことにも。
 そんなに張りつめてばかりいたら、生きることにすぐ疲れ果ててしまうだろう。もっと他人に甘えて、要領よく、時には問題を一時棚上げして逃げることだって、覚えてもかまわないと思う。
 依里が今まで付き合ってきた男たちに求めていたのは、まさにそんなものばかりだったから。
 駿だってもう少し狡く生きたって、いいはずだ。そういう狡さを身につけることが、大人になるということかもしれない。
「ね。もう少し寝なさい」
 依里は駿の肩を押し、もう一度横になるようにうながした。
「きみは、ずるい大人にうまーく言いくるめられちゃったのよ。だから今はもう何にも考えないで、眠りなさい」
「なんか俺、ほんとにだまされてるみてえ」
「うん、そうかもね。それでもいいじゃない」
 駿は素直に従った。
 枕に頭を乗せるとすぐに、まぶたがくっつく。ものの三分も経たないうちに、深く規則正しい寝息が聞こえてきた。やはり疲れていたのだろう。
「……さすがに若いっていうのかな」
 いや、もしかしたらここ数日、よく眠れなかったのかもしれない。
 まだどこか哀しそうな影の残る駿の寝顔を見つめながら、依里は思った。
 駿はきっと、恋人の少女を傷つけたことと同時に、自分の過ちから逃げ出したことをも罪悪感として抱えていたに違いない。依里を自分の逃げ場にしたことを。
 依里にとってそれは罪でも何でもない。そのことはもう駿も納得してくれたと思う。
 けれど、駿の後ろにいる少女は、どうだろうか。依里との関係を不純なものと感じ、さらに駿を責めたりはしないだろうか。
 ――もしも、私とこうして逢うことが、いつか駿の負担になってしまうなら。
 たとえば今までずっと付き合ってきた少女との関係が、今、駿の重荷になっているように。
 わかっている。いつまでもこんなことを続けていてはいけない。駿によけいな物思いを与えてしまうくらいなら、少しでも傷が小さいうちに別れを切り出すべきだ。そしてそれは、年長者である依里の役目だろう。
 けれど今はまだ、その時ではないはずだ。そう信じていたい。
 ――だって駿は、ここへ泣きに来たんだもの。駿が私を必要としているかぎり、まだ、さよならを言うべき時ではないはずだ。
 いいや、それも言い訳だ。駿が必要としているからではなく、依里自身が駿を手放したくないだけなのだ。
 ……さ。よ。な。ら。
 その言葉を、声には出さず唇の動きだけでつぶやいてみる。いつか来るその時の、予行演習みたいに。
 自分でやってみたくせに、その行為はひどく胸に突き刺さった。





 正午近くになって、駿はようやく目を覚ました。
「あー……。すっげー腹減った」
「なによ。目覚めて第一声がそれ?」
「だってほんとだもん。それ以外、今はなんも考えらんねえよ」
 くしゃくしゃっと髪をかきあげ、駿は屈託なく笑った。
 ぐっすり眠ったことで、気分もかなり切り替わったようだ。表情が明るい。
 ゆうべ、胸の中にわだかまっていたことを一部だけでも吐き出すことができたせいもあるだろう。
「どっか食べに行きましょう。食材とか、あんまり買い置きしてないの」
「なんだ。依里さん、料理とかしないの?」
「料理くらいするわよ。私一人の分なら、ちゃんと用意してあるの。でも二人分には足りないし」
 それも食べ盛りの男子高校生の胃袋は、依里が手軽に食事を済ませる時のように、シリアルやサンドイッチだけで満たせるものではないだろう。
「どこに行く? なにか食べたいものとか、ある? と言っても、この近所ならせいぜいファミレスくらいしかないけど――」
「んー……。どこっていうより、あそこにしようよ。いつものとこ」
「ああ!」
 二人で待ち合わせをする、あのオープンテラスカフェ。





BACK  CONTENTS  NEXT
【−8−】
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送